移植後、判定前に月経が。ホルモン補充が足りていないのでは?
移植後、黄体補充をしたのにもかかわらず、妊娠判定前に生理がきてしまったのは、補充するやり方やお薬の量が足りなかったからなのでしょうか。次回からはどうしたらいいのか、松本レディースリプロダクションオフィスの松本玲央奈先生に詳しいお話を伺いました。
ドクターアドバイス
●ホルモン補充に決まりはない。
●エストロゲンは補充しない施設も。
●納得がいかないなら次は補充を。
移植後、子宮内膜を整えるために黄体補充を行います
──胚移植後にホルモン補充をするのはなぜですか。
松本先生●通常はプロゲステロン(黄体ホルモン)とエストロゲン(卵胞ホルモン)の補充を行う施設が多いと思いますが、これらのホルモンには子宮内膜の状態を整えて着床の準備をする効果があるといわれています。
自然周期で排卵した時と比べ、卵巣刺激で採卵した場合は黄体機能が低下するので、より妊娠しやすい環境にするためにホルモンを補充していくのですね。当院でも、自然周期移植ではなく、新鮮胚移植の場合はエストロゲンとプロゲステロン、2つのホルモン剤を少しずつ投与しています。
──プロゲステロンを筋肉注射で50mg投与していたそうですが、この量は適切だったのでしょうか。
松本先生●補充するホルモンの量については、どの程度がいいのか医学的にまだはっきりわかっていない部分があります。50mgはおそらく平均的な量と思われ、特に少ないとは思いませんね。
──細やかにホルモン値を計測して、投与する量を増減することはできないと言われたそうですが。
松本先生●先生がおっしゃっていることは間違いではないと思います。ホルモンというのは定常的に同じ量で分泌されているわけではなく、日々アップダウンがあります。ですから、毎日、もしくは数時間おきに測っても意味がありません。この時点では細かくみることがあまり重要ではないということでは? 医学的にそれほどデメリットはないと思います。補充すると決めたらする。そのようなシンプルな形で問題はないでしょう。
──プロゲステロンに加え、エストロゲンは補充しなくてもいいのでしょうか。
松本先生●以前通院されていた病院では、プロゲステロン腟剤800mgに加え、エストロゲンテープ1枚も隔日で使い、補充している間に月経がくることはなかったということですね。当院でも両方投与していますが、必ずそうしなければいけないという決まりはなく、今通われている病院のようにプロゲステロンのみ補充という施設もあるかと思います。
卵巣がちゃんと働いていて排卵し、黄体機能が整っているようであれば自前のホルモンが分泌しているので、少し補充するだけでいいという考え方もあります。その少しがなくてもいいのか。プロゲステロンは補充したほうがいいという説はありますが、エストロゲンは必ずしも補充することはないと考えられているようですね。
想定外のリセットに納得しなかったら次はエストロゲンの補充も
──ご本人は納得がいかないようですが、次回はエストロゲンも補充してもらったほうがいいと思いますか。
松本先生●通常はエストロゲンとプロゲステロンをずっと補充していれば生理はしばらくきません。ただ、この方の場合は妊娠判定の前にきてしまった。それは受け入れがたいということだと思います。
ご希望のようにエストロゲンとプロゲステロンを補充してホルモンがある程度安定すれば、妊娠判定まで生理がこないことは十分見込めるでしょう。ただし、「生理がこない=妊娠している」ということではありません。
医学的に正しいかどうかということではなく、ご本人が納得するかどうかという問題だと思いますね。想定していないところでリセットされてしまったので、その結果を消化しきれていないという感があります。補充することでデメリットはありませんから、もし気になっているようでしたら、次はエストロゲンの補充も先生に提案されてみてはどうでしょうか。
47歳というご年齢なら1回1回が大事。治療も最終地点にきていますから、後悔の残らない納得できる形で進めていただきたいと思います。