抗酸化成分PQQでサポート

より良い卵子を育むために…

ミトコンドリアの活性化や細胞の老化に対する効果が期待されるピロロキノリンキノン。不妊治療ではどのように取り入れるといいのでしょうか。

広島HARTクリニックの向田哲規先生に伺いました。

向田哲 先生 高知医科大学卒業。同大学婦人科医局に入り、不妊治療・体外受精を専門 にするため、1988年アメリカ・マイアミ大学生殖医療体外受精プログラムに在 籍。1990年から5年間NY・NJ州のダイヤモンド不妊センター在籍後、1995年 広島HARTクリニックに勤務し、現在院長として臨床に従事。

PQQ(ピロロキノリンキノン)はビタミンと似たような働きのある物質で、ヒト体内においてもエネルギーを作り出す細胞内の器官などに存在し、複数の活性酸素を抑制する効果が確認されている抗酸化成分です。食品では、ココアパウダーや納豆、豆腐、緑茶、ピーマンなどさまざまなものに含まれています。ただ含有量は少なく、通常の食事量では必要な量を賄うことができません。

卵子の質が落ちる理由の一つが活性酸素の増加です。卵胞は、細胞内のミトコンドリアの働きでエネルギーを産生し、そのエネルギーを活用して成長します。しかしその過程で、活性酸素も同時に発生します。若い方ならご自身の細胞の中で活性酸素を減らす抗酸化物質を作れますが、代謝異常の方や年齢が高い方などは抗酸化因子を十分に作ることができません。抗酸化力が衰えると、この活性酸素により卵胞が成熟できず閉鎖してしまう原因になります。PQQは、高い抗酸化力によって、酸化ストレスから卵胞を守り、エネルギーを作り続けるようにして卵胞の成熟をうながし、排卵を助ける効果があると言われています。

 

エビデンスに基づいたPQQの作用・効果

 

抗酸化成分として、よく知られたものにポリフェノールがあります。しかし、ポリフェノールは分子量がとても大きく、腸管などから吸収されますが、作用は限定的です。健康をサポートするという面では良いかもしれませんが、卵巣内の卵胞の中の細胞まで届くには分子量が小さくなければなりません。

広島大学の島田昌之先生によると、マウスを用いた研究において、抗酸化サプリPQQを投与するタイミングをFSH製剤よりも早めることで、PQQの摂取の効果が認められたというエビデンスがあります。研究によるとPQQは胃酸に負けず、血流で体内を巡って卵巣に届き、卵胞の中の細胞のミトコンドリアに届き、エネルギー産生を助けます。ポリフェノールなどに比べ、体内に吸収されやすく、卵巣の細胞によりダイレクトに作用することが実証されています。

不妊治療においては、排卵誘発を行い、より多くの質の高い卵子を得て、着床に至る受精卵に達することを期待します。しかし、卵巣内の代謝や血流が悪ければ、卵胞発育が遅れ、無排卵や卵子の質が低下する可能性があります。良い成熟卵を作るためには、卵子と卵巣内細胞がお互いに良い状態であることが大事なポイントとなります。

サプリで補いながら、効率よく治療を進めよう

 

「サプリって本当に効くの?」と疑問をもつ方もいらっしゃいます。効果があったという方やまったくなかったという方もいてさまざまです。P Q Q においては、不妊治療におけるエビデンスが待たれるのですが、マウスを用いた研究では卵巣内の細胞への作用が認められています。そのような科学的なエビデンスがあることは、医師としてもPQQを治療のサポートをするサプリとしておすすめしやすい点です。

すべての方がサプリの活用で卵巣の中の細胞の状態が改善するとは言えませんが、「採卵の数が増えた」、「以前より良い質の卵子が採れた」といったケースが当クリニックに難治性のため来られている患者さんに少なからず見られます。

また、PQQサプリをおすすめする理由として価格面があります。いくら効果が期待されても、あまりに高価なものだと患者さんにおすすめしづらいです。しかし  QQサプリは、わりとお求めやすい価格ということも重要なポイントだと思います。即効性がないと考えがちなサプリですが、P Q Q においては短期間の摂取で効果が得られた方もいらっしゃいます。ビタミンなども食事で十分摂れていれば必要ないですが、欠乏ぎみの方にはフィットして効果を感じやすいですね。PQQは加齢やストレスなどにより抗酸化力が衰えている場合は、より効果が得られるのではないでしょうか。

ですので、私はPQQを質の良い卵子が採れない、受精卵が胚盤胞にならないといった方におすすめしています。排卵誘発剤などの薬剤を用いただけでは、このようになかなか良い結果が得られない場合に、それぞれの周期に合わせてサポートすることが P Q Q の役割だと考えています。

最後に妊活中の方にアドバイスするならば、栄養をしっかりと体内の細胞に届けるために、血流を上げることを心がけてほしいと思います。だからといって毎日ジムに通って運動するのは難しいので、手軽に血流を上げる方法として早歩きがおすすめです。一日一回、体調に合わせて続けてみるといいでしょう。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

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