PCOS治療をサポートする” グリスリン″を検証

セントマザー産婦人科医院の 最新データを公開! PCOS治療をサポートする ” グリスリン″を検証

PCOSや排卵障害の改善、体重管理にも役立つという マイタケ由来のサプリメント〝グリスリン″。

本誌では前回、 セントマザー産婦人科医院の院長・田中先生に 〝グリスリン″の臨床データについてお聞きしましたが、 今回は、さらなる検証結果を、同院の伊熊先生とともに 11月の日本生殖医学会で報告されたということで、 その注目の内容を、詳しくお聞きしました。

明確なPCOSの方に 排卵を促す効果を確認

今回は、セントマザー産婦人科医院での“グリスリン”の最新のデータを、伊熊先生に詳しくお聞きします。

伊藤先生「若い女性の排卵障害のなかで最も多い疾患であるPCOSの患者さんに、“グリスリン”が有効であるかを検証するため、当院では2011年9月から使用しています。

使用する患者さんの条件は、日本産科婦人科学会が示すPCOSの3つの基準にすべて当てはまる方で、なおかつクロミフェン抵抗性である患者さんだけに絞りました。

まずはクロミフェン抵抗性であるかを確認するため、月経5日目からクロミフェン100㎎を5日間投与し、月経 14 日目あたりで卵胞の発育をエコーで確認します。

発育が認められれば、クロミフェンの反応ありと考えますが、無反応の場合は二段投与という形でさらに5日間、それでも反応がなければピルで一旦リセットをかけます。

このように、クロミフェンに無反応な患者さんをクロミフェン抵抗性のPCOS と判断します。

ちなみに海外の文献では、PCOSの患者さん全体の2~3割がクロミフェン抵抗性のPCOSであるというデータが示されています。

クロミフェン抵抗性のPCOSの患者さんに内容をご説明して、“グリスリン”を試していただいた方は、2011年9月~2013年6月までに 34 名(うち2人は途中で中断)、平均年齢は 30 歳です。

“グリスリン”を3カ月間連続投与し た結果、周期別排卵率は 31 ・8%、患者さんごとの排卵率は 17 症例で 53 ・1%、妊娠率は9症例で全体の 28 ・1%という結果になりました。

妊娠率9症例の内訳は、“グリスリン”投与期間中の妊娠が3例。

投与終了後に2例はクロミフェンを服用し、残り4例はクロミフェンとHMGまたはFSHによる排卵誘発を行い、タイミング法を行いました。

クロミフェンでも“グリスリン”でも反応しない人は効果が望めませんが、“グリスリン”で一定の効果があった方を再度クロミフェン周期に戻した場合、OHSSにならずに排卵したことを確認しました」

より自然に近い排卵で OHSSのリスクもなし!

このデータを見て、伊熊先生は“グリスリン”に排卵改善効果や持続効果があると思われますか?

伊藤先生「これまでの検証結果から、“グリスリン”には排卵改善や持続の効果が望めると考えてもよいと思います。

PCOSの治療法は、クロミフェンのみ、またはクロミフェンにメトホルミンを併用する方法、注射剤を併用する方法、腹腔鏡手術で卵巣の表面を焼くドリリング術など、確立されています。

ただし、排卵誘発剤は卵巣への刺激を強めるため、もともと卵胞数の多いPCOSの場合はOHSSになるリスクが高まり、排卵誘発後に一旦キャンセルせざるを得ないケースも少なくありません。

また、キャンセルせずに治療を進められても、多胎妊娠の可能性が高くなります。

OHSSや多胎妊娠は、排卵誘発で起こりうるリスクですので、できるだけそのようなリスクが低い排卵誘発法を考えることが必要です。

また、お腹に穴を開ける腹腔鏡手術に躊躇される方もいらっしゃいます。

“グリスリン”で卵胞が発育した場合は自然排卵と等しく1個であるため、OHSSや多胎妊娠の可能性も低い。

同じ悩みを持つ患者さんに一つの選択肢として“グリスリン”を提示しており、試してみたいという声も増えています」

不妊治療のみならず 女性の体を トータルでサポート

不妊治療における“グリスリン”の位置付けと、今後どのような期待を持たれているかを教えてください。

伊藤先生「まだ検証例が十分ではなく、現時点ではすべてが“グリスリン”による効果であるとは断言できませんが、一定の効果があると期待しています。

“グリスリン”はサプリメントなので、あくまでも補助的なものであり、今後も、最初にクロミフェン、次にHMG注射、腹腔鏡手術によるドリリング術という治療の流れになりますが、注射や外科的治療の一歩手前で患者さんに“グリスリン”という選択肢を提示することができますね。

また、“グリスリン”はアミノ酸で構成されているタンパク質で、食用のマイタケに由来する成分ですから、体に悪影
響を及ぼすものではありません。

インスリン抵抗性のある糖尿病の患者さんに試験的に投与して、血糖値が下がったという臨床効果も発表されています。

不妊治療だけでなく、未婚女性の月経不順の原因の大半を占めるPCOSに穏やかに効くサプリメントとして広く知っていただくことも必要ですし、生活習慣病の治療や予防、体重コントロールをサポートする役割として捉えてみるのもよいでしょう。

できるだけ自然に近い状態での治療を希望される患者さんや、時間的にまだ余裕があり、さまざまな治療法を試してみたいという患者さんに多くの選択肢を提供することは、我々医師の努めです。

安心して使っていただけるサプリメントだと自信を持って患者さんにおすすめできるように、今後も症例数を増やし、より多くのデータを集めていきたいと思います」

 

※PCOSの3つの基準:無排卵・排卵障害など月経異常であること、超音波でのう胞が20個以上認められること、LHがFSHより高い、またはテストステロン(男性ホルモン)が0.3ng/mL以上であること。

 

伊熊 慎一郎先生 関西医科大学医学部卒業。越谷市立病院にて初期臨床 研修を修了し、順天堂大学医学部産科婦人科学教室入 局。2011年8月よりセントマザー産婦人科医院に勤務
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