子宮内の細菌バランスを整える「ラクトフェリン」

子宮内の細菌バランスも着床にとって大切な条件の一つ。

善玉菌を優位にするといわれている注目の成分「ラクトフェリン」の効果や期待について伺いました。

俵 史子 先生 浜松医科大学医学部卒業。浜松医科大学 非常勤講 師、臨床准教授。2004年愛知県の竹内病院トヨタ不妊 センター所長に就任。2007年、俵IVFクリニックを開業。 2015年静岡駅前に移転、リニューアルオープン。

ドクターアドバイス

まずは腟内の簡易検査で状態を把握し、 取り入れやすいサプリで改善を

腸だけではなく、子宮内も 細菌バランスが大切

体外受精や顕微授精を実施した際、良好な胚を繰り返し移植しても結果が出ないという方は少なからずいらっしゃいます。妊娠が成立するためには卵子側の条件が重要といわれていますが、それと同様に胚が着くベッド、つまり子宮内の環境も影響するのではないかと考えられているんですね。

子宮内膜ポリープなど見た目でわかる器質的な異常に加え、最近は子宮内の細菌バランスの乱れも着床を妨げる要因の一つとして注目されています。

「腸内フローラ」という言葉を聞いたことがあると思いますが、実は子宮内にもさまざまな細菌が一定のバランスを保ちながら存在していることがわかってきています。腸内で善玉菌が減って悪玉菌が優位になると便通や消化の状態が悪くなるように、子宮内で「ラクトバチルス」という善玉菌が減少すると、着床から妊娠維持に至るまでよくない影響が出るという報告が複数なされています。

善玉菌が優位かどうかで 妊娠率に大きな差が

たとえば2016年に発表された海外の論文によると、子宮内にラクトバチルスが90 %以上の割合で存在する人とそれ以下の割合で存在する人を比較すると、同じ胚移植あたりの妊娠率が前者は 70 %、後者は33 %と有意な差が出たとあります。

では、自分の子宮内細菌バランスを調べるためにどうしたらいいのでしょうか。

最近は、子宮内フローラ検査という方法を提案している施設も増えてきています。これは子宮内膜組織を抽出し、NGS(次世代シーケンサー)を用いて遺伝子レベルで細菌叢の菌構成を調べる検査です。

最新の検査ではありますが、子宮内の組織採取をしなければいけませんし、検査代も比較的高額です。日常の臨床でどなたでも容易に受けられるかというと、まだ現実的ではないように思います。

  そこで当院はもっと手軽にできる方法を 考えてみました。子宮内と腟内の環境はある程度相関しているといわれているので、まず腟内環境を調べてみることに。ただ現状を調べるのではなく、ラクトバチルスを優位にする作用があると報告されているラクトフェリンを配合したサプリメントを試験者に飲んでもらい、摂取前・摂取後の腟内状況を比較してみました。

まず試したのは当院の職員 15 人。腟内 の組織は自己採取してもらったのですが、最初に調べてラクトバチルスが検出されなかった人は 53 %で全体の約半数。 1 カ 月間サプリメントを摂取して再度調べたところ、検出されなかった人の 57 %にラ クトバチルスの存在を確認できました。

ご希望した患者さんに試したケースでは 10 例中7例にラクトバチルスが認めら れませんでしたが、サプリメント摂取後は7例中4例の方に認められました。

善玉菌が優位なほうがより妊娠によい影響があるというのは当院の臨床例でも実感しており、良好な胚を1個だけ移植したという場合、主にラクトバチルス属で構成されているデーデルライン桿 かんきん 菌という細菌群が腟内にまったく認められない人は「たくさんいる」「少しいる」という人に比べ、妊娠率が低かったという結果が出ています。受精卵の質に左右されることが多い高齢の患者さんはあまり変わらなかったのですが、若い方には有意差がありました。腟内・子宮内の環境を変えてメリットがあるのは特に年齢が若い人だと思います。

厳選したサプリメントで より高く確実な効果を

当院の考え方は、なるべく簡易な検査や方法でその方の妊よう性を高めていくというのが基本。子宮頸がん検査のついでに細菌状況も調べ、結果が悪かったら薬ではなく、まずサプリメントで状況を改善していけたら患者さんのハードルもぐっと低くなると思います。

今、ラクトフェリン配合のサプリメントは多く販売されていますが、その中から子宮内で働くことが期待できる製品を選ぶことも大切。厳選したサプリメントのみ置いている病院もあるので、迷ったら一度、医師に相談されてみてはどうでしょうか。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

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