妊活中に摂りたいサプリメント。どう選ぶ?

無数にあるサプリメントのなかでも、妊活に必要なサプリメントとは?それぞれの妊活ステージにあわせたサプリメントの選び方や活用法について、リプロダクション浮田クリニックの浮田祐司先生、浮田美里先生に伺いました。

兵庫医科大学付属病院、府中病院、兵庫医科大学篠山病院に勤務後、兵庫医科大学付属病院 産婦人科の助教に。英ウィメンズクリニックで不妊専門医療に携わった後、2020年開院。一般不妊治療から高度生殖医療までクオリティの高い治療を提供する県内有数の施設として、妊娠から出産まで手厚くサポート。「早く赤ちゃんに出会うために、専門医による早めの妊活を。お一人目、二人目にかかわらず、赤ちゃんが欲しいと思われたら、ぜひ私たちに相談してください」

葉酸入りのマルチサプリで、妊娠しやすい体をめざす

 

普段から完璧な食生活ができている人はそれほど多くありません。また、栄養バランスを考えた毎日の食事づくりは、ときにストレスになることもあります。そこで、これから妊活をはじめる人には、毎日の食生活などで不足しがちな栄養素を効率的に補うことを考え、妊娠しやすい体づくりに必要な成分を配合したベーシックなサプリメントをおすすめします。

妊娠を考えはじめたら早めに摂りたいのが「葉酸」です。葉酸は赤ちゃんの成長に欠かせない栄養素で、妊娠前から妊娠後に不足しやすくなるといわれています。厚生労働省では妊活中の女性に対して、1日の葉酸量をサプリメントなどで400μg以上摂取することを推奨しています。さらに妊娠後は葉酸のほかに、赤ちゃんの成長を維持するための鉄、亜鉛、カルシウム、ビタミンC、ビタミンDなども欠かせません。

ベーシックなサプリメントを選ぶときは、パッケージの成分表をチェックし、葉酸の含有量が400μg以上で、なおかつ鉄、亜鉛、カルシウム、ビタミンC、ビタミンDなどがバランスよく配合されたマルチサプリメントを選ぶといいでしょう。

 

着床しやすい子宮環境にととのえるラクトフェリン

 

さらに治療が進むと、治療の効果をサポートする目的でおすすめしているサプリメントもあります。その一つが、子宮の環境を整える「ラクトフェリン」です。たとえば、体外受精では胚移植のときに子宮の環境が着床に影響することがあります。

子宮の環境は、子宮検査などで一時的に把握できますが、その時々の状態を知ることはできません。当院は子宮の環境をととのえる意味で、移植の前周期から飲んでいただくようにしています。とくに良好な胚をくり返し移植しても着床しにくい方には、着床をサポートする有効な成分だと思います。

また、一般不妊治療では子宮鏡検査をしたときに、子宮のなかに炎症が起きていることがあります。この場合は抗生物質(抗菌薬)で炎症の原因である細菌を死滅させますが、同時に大切な常在菌も一緒に死滅させてしまう可能性があります。そのため、治療を行うときは、抗生物質と子宮の細菌叢のバランスを整えるラクトフェリンの併用をご提案しています。

卵子へのアプローチで注目される抗酸化物質PQQ

近年、採卵の数や卵子の質が良くない方に対して、強い抗酸化作用をもつ「PQQ(ピロロキノリンキノン)」という成分が注目されています。実際に私も患者さまに採卵の前周期からPQQを飲んでいただいて、良い方向に変化するケースをいくつか見てきました。その肌感覚から、PQQはこれまでの補助的なサプリメントとは異なり、治療に近い位置づけで考えています。

卵子の問題には年齢などいろんな要因があるため、PQQ ははじめからすべての方が対象というわけではありません。体外受精がうまくいかない場合に、排卵誘発法などほかの有効な治療を検討しつつ、さらにもう一歩でも妊娠に近づけたいときに前周期から飲んでいただくようにご提案しています。

患者さまからみれば、あくまでもサプリメントの一つで、ご本人が直接自覚できる改善症状がありません。けれど、これが結果につながったときは、「やっぱり飲んでいてよかった」という声をいただくこともあります。食品ですので服用による体へのリスクもほとんどなく安心です。また、PQQの高い抗酸化作用は、卵巣などの局部だけでなく、疲労感の改善や感染予防など体への広い効果も期待できます。

男性もサプリの摂取などで妊娠率を上げよう

妊娠につながりにくい原因は、女性だけでなく、男性の約半数にもあるといわれています。

男性の精子所見が思わしくない場合は、ビタミン剤や漢方薬などを処方していますが、次の処方時期がきても「お薬がなかなか減らない」という声を聞きます。男性は病気でもないのにお薬を飲むという習慣があまりなく、また、妊活を女性まかせにしているなど、妊活の実感が薄いのかもしれません。

精子所見の程度によって適切な治療は必要になることもありますが、それとともに男性も妊娠率を上げるほかのアプローチも必要だと思います。それにはまず処方されたお薬をきちんと飲んでいただくことが一番ですが、どうしても難しいようであれば、亜鉛、葉酸、ビタミンなど必要な成分が凝縮されたサプリメントで補ってもらうことも一つだと思います。

自分でサプリを選ぶときのポイントは?

たとえば、はじめてサプリメントを取り入れるときは、最初にお話ししたマルチビタミンなど、ベーシックなものから選んでいくといいでしょう。そのうえで、妊活ステージに合わせて、必要なサプリメントをプラスしていくといいと思います。

最近は、インターネットなどですぐに調べることができますので、自分で選んだサプリメントを飲んでいる方も多いかと思います。ただ、なかには同じ成分を過剰に摂取していたり、偏った取り入れ方をされている方も見受けられます。過剰摂取によって体の栄養バランスが崩れたり、成分によっては体内に有害になることもあります。それぞれの成分の正しい用途や摂取量を確認して摂るようにしましょう。

当院は妊活ステージや具体的な検査・診断に合わせたサプリメントの提案はもちろんのこと、すでに飲まれているサプリメントに関する相談や組み合わせ方などのアドバイスも行っています。サプリメントの選び方で迷ったときは、気軽に医師に相談してください。

 

浮田先生からのメッセージ

妊娠しやすい体づくりは、子宮や卵巣など骨盤まわりの血流をあげることも一つです。当院の漢方外来は、漢方薬で全身の血流を上げるアプローチも行っています。さらに有酸素運動で血流が上昇するともいわれていますので、1日10〜15分のウォーキングなど軽い運動も心がけるといいでしょう。

また、バランスの良い食事や良質な睡眠など、普段の生活の積み重ねで体を整えておくことも大事です。たとえば、日づけが変わる前に眠ると、妊娠に必要な成長ホルモンが出やすくなるといわれています。

体が不安定な状態だと、いくら高度な治療をしても結果につながりにくくなります。サプリメントの摂取やセルフケアで体を少しずついい方向に近づけながら治療の効果をあげて、早期の妊娠を目指していきましょう。

 

医療法人せせらぎ会 リプロダクション浮田クリニック 浮田祐司先生・浮田美里先生

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