グリスリン最新情報をレポート!【医師監修】

現場の医師に聞く! 〝グリスリン〞 と不妊治療の今後

天然由来成分〝グリスリン〞は PCOSや生理不順の改善に役立つとして 不妊治療の現場で注目されていますが、 前号で、〝グリスリン〞が不育症にも期待が持てると 語られたレディースクリニック北浜の奥先生。 今回は、奥先生が現場で感じているという さらなる可能性についてお聞きします。

あげはさん・33歳 Q.以前からPCOSで不妊治療をしていましたが、だんだ ん卵巣が疲弊してしまい、休むために3カ月間カウフマ ン療法、鍼灸をしながらグリスリンを服用。まったくの 自然にまかせていたら、時間はかかりましたが排卵し、 妊娠しました。その後、2度流産してしまったのですが、 グリスリンを飲み続け、時間はかかるものの排卵したの で、排卵誘発せずにタイミング指導と、不育症治療をし ました。それから3周期ほどで妊娠でき、現在5カ月です。 鍼灸も大きな効果があったように思いますが、グリスリ ンも効果があったと思っています。

無月経、月経不順には 〝グリスリン〞を処方 自然排卵の改善も

不妊治療をしていて、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)で悩んでいる方は多いですが、このPCOSを改善するとして、キノコのマイタケから抽出される天然成分である〝グリスリン〞が注目されています。
本誌やウェブ『ジネコ』でご紹介して以来、ジネラーからも「使ってみたい」「役に立った」という声が多数寄せられています。
この〝グリスリン〞を不妊治療の現場で応用しているレディースクリニック北浜の奥裕嗣先生は、「〝グリスリン〞にはさまざまな可能性がある」と語ります。
前号では、現場での〝グリスリン〞の活用法や、PCOSにともなう不育症への処方例や効果について興味深いお話をしていただきましたが、先生は〝グリスリン〞にはさらなる可能性があるとおっしゃいます。
詳しくお聞きしました。
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 前回は、〝グリスリン〞が糖尿病薬のメトフォルミンと同じメカニズムを持つことに着目され、〝グリスリン〞を患者さんに使用して、PCOSにともなう不育症改善の実感を得られているということでしたが、PCOS以外の方へ処方される場合もあるのでしょうか?

奥先生 「当院はレディースクリニックなので未婚の患者さんもいらっしゃるのですが、そういった方の無月経、月経不順の改善にも〝グリスリン〞を応用しています。

月経が来ないと子宮体がんのリスクが高まるといわれていますから、毎月月経を起こす必要があります。
患者さんに妊娠希望がなくクロミッドⓇなどでの排卵誘発を希望しない場合、一般的には低用量ピルを処方しますが、ホルモン剤に抵抗感があって自然な治療を望む方には、基礎体温チェックとあわせて〝グリスリン〞を処方しています。
ある患者さんは、〝グリスリン〞の服用後、まもなく自然排卵が起こり、3カ月間続けるうちに二相体温で毎月排卵が起こるようになりました。
その後、1年ほど来院されていませんでしたが、『〝グリスリン〞がないとやっぱり排卵しない』と再来院され、3カ月分処方したというケースがあります。
これは明らかに〝グリスリン〞の効果があったケースではないでしょうか」

PCOSにともなう 卵巣過剰刺激症候群にも 予防効果の可能性が

〝グリスリン〞は天然成分なので副作用の心配がなく、薬との併用も安心とのこと。レディースクリニック北浜では、妊婦さんにも受け入れられているそうですね。

奥先生 「メトフォルミンの場合は、なかには下痢の副作用が出てしまい、食欲不振などで服用を諦める方もいらっしゃいます。

また妊婦さんの場合、胎児の奇形への影響を心配される方もいらっしゃいます。
当クリニックでは、PCOSで流産をくり返された患者さんが妊娠された場合、メトフォルミンを内服しながら分娩先の産科をご紹介させていただきますが、産科の先生方からメトフォルミンを処方された妊婦さんについて相談を受けることもあります。
そういった場合は、妊娠 10カ月までメトフォルミンを服用しても問題ないという主旨の論文をお送りしています(アメリカ食品医薬品局・FDAの基準カテゴリーでもBで、妊娠中も服用可です)。
それでも心配という方には〝グリスリン〞を処方するのも1つの方法だと思います」

ほかにも応用できそうな症例はありますか?

奥先生 「PCOSの患者さんのIVF周期にともなう卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の場合、事前にメトフォルミンを服用することで、OHSSの予防になり、胚の質がよくなるという報告があります。

卵胞発育が正常な場合は卵胞期にエストロゲン( E2 )が低下せず、一気に上昇するのですが、PCOSで胚の質がよくない方は E2 がアップダウンしながら上昇する傾向にあります。
PCOSによって胚の質が不良になるのは、この E2 のアップダウンが悪影響を及ぼしているとも考えられ、現在、この点も〝グリスリン〞で改善できるかもしれないと考えています。
さらに応用すれば、未熟卵体外受精(IVM)の採卵前に使用して、未熟卵の胚質を改善することも期待できるかもしれません。

PCOSにともなう 男性不妊にも期待が

さらに〝グリスリン〞の可能性は広がっていきそうですね。今後、先生が期待されることはありますか?

奥先生 「検証はまだまだこれからですが、将来的に男性不妊にも応用できないかと考えています。

実は以前から、男性にもPCOSがあるのではないかと考えていました。
PCOSは家系に出るといわれますが、たとえば姉妹の姉がPCOSだと妹もPCOSの可能性が高いように、兄弟
にも同様のことがいえるのではないかということです。
PCOSは、女性の場合は排卵障害がありますが、男性の場合は精子が少ないといった症状が考えられるかもしれません。
私の勤務医時代に、糖尿病のコントロールが非常に悪い患者さんがいらっしゃいました。
その方はインスリン療法が必要なレベルで、精子を調べてみたところ、精子量が少なく運動率も悪かった。
その時はメトフォルミンではなくインスリン療法を実施しましたが、血糖値を下げてから3〜5カ月後に精子の状態が正常値に戻ったのです。
もちろん重症度にもよりますが、軽度の男性不妊には男性版のPCOSが潜んでいる場合があるかもしれません。
糖尿病のコントロールが悪いために精子に影響を及ぼしているケースがあるのではないでしょうか。
今後、そういった症例にも〝グリスリン〞の可能性を感じています」
【医師監修】奥 裕嗣 先生 1992年愛知医科大学院修了。蒲郡市民病院勤務 の後、アメリカに留学。Diamond Institute for Infertility and Menopause にて体外受精、顕微 授精等、最先端の生殖医療技術を学ぶ。帰国後、 IVF大阪クリニック勤務、IVFなんばクリニック副 院長を経て、2010 年レディースクリニック北浜を 開院。医学博士、日本産婦人科学会専門医、日本 生殖医学会生殖医療専門医。
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