Q 診察する医師によって 治療方針が異なる場合は?
伊藤 哲 先生 順天堂大学医学部卒業、同大学院修了。順天堂大学医学部産婦 人科学教室講師、国際親善総合病院産婦人科医長を経て、1999 年あいウイメンズクリニック開院。日本生殖医学会生殖医療専門医。
目次
ドクターアドバイス
●刺激周期でたくさん卵子が採れたらその後1、2周期休むのがベスト。
●ホルモン値が正常であれば次回もロング法で、その結果を受けて検討を。
ちゃろろさん(33歳)からの相談 Q.男性不妊で顕微授精をしています。前回は3月末にロン グ法で採卵。採れた数は18個でしたが、胚盤胞は2個、 いずれも卵子のグレードが悪いため、続けて採卵するこ とに。4月に来院した際に副院長先生に「来月採卵しましょ う。前回の卵子の質が悪いから、次回は誘発方法を変え ましょう」といわれました。そして、今月生理がきて来院 したところ、院長先生に「今月はまだ卵巣が休まってい ないから、採卵はやめたほうがいいよ。誘発法は変えず に再度ロング法でいきましょう」と。どちらの意見が正し い? 次もロング法でトライしてもいい?
地元では有名な不妊治療専門施設のよ うですが、毎回診察する先生が替わるそ うです。
伊藤先生 大学病院を含め、規模が大きく、たくさんドクターがいるような施設だと毎回担当医が替わることもあるようですね。ただ、医師は替わっても治療方針は一つの方向に決めておかないと患者さんが混乱してしまいます。
不妊治療は前もって仕事を調整するなど、生活のスケジュールにも影響してくるので急に変更するのは難しいです。医師の考えだけで進めるのではなく、実際に治療を受ける患者さんがやりやすい形をとることが一番だと思います。
最初に治療を担当したのは院長先生だと思われるので、副院長先生に提案されたことに疑問を抱いたら、どういうことなのかはっきり院長先生に尋ねたほうがいいと思います。
すぐ次の周期に別の誘発法で採卵するの か、卵巣を休ませてから同じ方法でトライするのか、
どちらがいいのでしょうか。
伊藤先生 当院の場合、刺激周期、特にロング法やショート法で採卵した時は1周期か2周期お休みするようにしていま す。 18 個採れたということは、針もそれ だけ刺しているということ。卵巣は疲れているはずなので、やはりその後は休ませたほうがいいと思いますね。院長先生がおっしゃっていることは確かに理解できます。
預けている受精卵があるので転院は躊 躇しているそうですが、
やはり次の選択肢は採卵ですか。
伊藤先生 預けているのは今回できた胚盤胞でしょうか。もしそうであって、グ レードが悪いけれど凍結はできたということであれば、融解胚移植を優先したほうがいいのでは。その間、卵巣を休ませ ることもできます。それで結果が出なければ誘発法の変更も含め、次の採卵を考えてみてはいかがでしょうか。
次もロング法でいいのでしょうか。
伊藤先生 FSHやAMHなどホルモンの値が正常で、ロング法にはまだ1回しかトライしていないのであれば、次もロング法を採用するという選択肢はあると 思います。同じ方法でもよい時と悪い時があるので。誘発法を変えるなら、その後でもいいような気がします。
卵子の数は多く採れていますが、ショート法にしたらもっと増えてしまう可能性も。そうなるとOHSSのリスクが高くなってしまいます。
採卵数の割に胚盤胞ができる確率が少し低く、グレードもあまりよくないのは、精子の質が影響していることがあるかもしれません。ただ、ちゃろろさんは、まだお若いので、治療の選択肢はいろいろあると思います。試す時間も残されているので、希望をもっていただきたいですね。