焦りや不安などネガティブな気持ちのもとになる「な ぜ?」。
その理由を知る努力をすることで解決することも。 そこで、不妊治療中のカップルのほとんどが抱いている「な ぜ妊娠できないの?」という根本的な疑問と、夫婦2人で 前向きに治療に取り組むためのコツを、セントマザー産婦 人科医院の田中温先生に教えていただきました。
人間が妊娠しづらいの は、お産のリスクから 女性の体を守るため でもあります。
人は、進化の過程で 妊娠しづらくなった
「不妊症」とは、夫婦がお互いに子ども を望み、健康的な夫婦生活もできているのに1年経っても妊娠できないことをいいます。不妊症の夫婦は 10 組に1組から最近では6〜7組に1組と増えていますが、その背景には、晩婚化で女性の結婚年齢が 30 歳を超えていることが深く関わっています。
数年前からメディアなどでも頻繁に取り上げられているので、ご存知の方は増えているとは思いますが、女性の卵子は年齢が上がるにつれて老化します。しかし、キャリアを優先して結婚しない、または結婚してもすぐには子どもを作らない女性は多く、「そろそろ」と思った頃には妊娠しづらい年齢になっているというのも現実なのです。
そのような社会背景もありますが、不妊治療をしている患者さんの根本的な疑問は「なぜ、妊娠できないのか?」ということでしょう。その理由はとてもシンプル。人間はそもそも「妊娠しづらい」という “ 特徴 ” を持っているからです。
まずは身体的な特徴を説明しましょう。人間には「月経」という現象がありますが、そもそも哺乳類で毎月排卵する月経があるのは人間以外では一部のサルやコウモリ、ネズミなどで、大多数の哺乳類には月経はありません。年に1、2回しか交尾期がないため、種を保存するためにも1回の妊娠率が高くなっていると言えるのです。反対に、人間は現象的には毎月妊娠できる月経があるため、1回の妊娠率は低くなってしまう。理由としては、回数が多い分、年1、2回よりも障害が起きやすく、完全な排卵状態になるのが難しいと考えられます。
また、ネズミなどほとんどの哺乳類は卵管と卵巣が一つの袋に入っていて、卵巣で排卵した卵子は必ず卵管に入るようになっています。しかし人間の卵巣と卵管は離れていて、卵巣から飛び出た卵子を卵管采がタイミングよくキャッチできなければ卵管に運ばれません。卵管の周囲に癒着がある場合も同様です。そして、ほかの哺乳類の子宮は2つありますが、人間は一つ。一度の妊娠で多胎になることを防ぐために進化の過程で子宮が1つになったと考えられています。毎月排卵して妊娠できるようになったが故に1回の妊娠率が下がり、妊娠しづらいという進化を遂げたのは、お産のリスクから女性の体を守るためなのです。