Q 顕微授精で前核1個だと 異常受精なのですか?
ドクターアドバイス
前核が1個というのはよくあることな のでしょうか。
大島先生 もともと卵子には4個の染色体があって、排卵時に2個1組が外に放り出されます。そして、精子が入ると残りの2個のうちの1個がさらに放り出され、精子と卵子の核それぞれ1個ずつ2つそろうと正常受精ということになります。前核が1個ということは、おそらく受精時に卵子の核が全部出てしまったの ではないでしょうか。
1前核は頻繁に起こるとはいえませんが、決してまれなことではありません。若い方でも起こりますが、印象としては35 歳以上の方に多く見られるような気が しますね。高齢になるとどうしても受精の異常も起こりやすくなってしまいます。ねこのめさんは現在 38 歳。もしかしたら 年齢も影響しているのかもしれません。
異常受精かどうかは見てすぐに判断で きるのですか。
大島先生 1前核でも2倍体など、ある程度大きさがあれば正常受精とされることがあります。精子と卵子の核の融合が早かった場合などは、見た目では核が1個に見えることがあるのですね。核は1 個だけれど染色体の数が多いから大きくなってしまう。
このような場合は一応5日目まで培養して、胚盤胞になれば正常受精だったと考えます。異常受精の場合は培養しても受精卵は育ちません。
1前核の胚盤胞を移植した場合、最初から前核が2個あって正常受精と判断されたものと比べ、妊娠率や出産率はほと んど変わらないといわれています。
ねこのめさんが治療を受けている施設ではすぐに異常受精と判断されたようですが、これは明らかにサイズが小さかったからではないでしょうか。
「顕微授精の際に損傷したのでは」と心 配されていますが。
今後も異常受精は起こってしまうので しょうか。
大島先生 年齢が高いので起こらないとはいえませんが、まったく受精しないわけではなく、受精自体はしているので妊娠の可能性は十分あると思います。
ただ、移植の機会を増やせるように、もう少し卵子の数を確保できるといいですね。排卵誘発法などを工夫してみるのも妊娠への近道かと思います。