初期胚と胚盤胞

Q 分割が遅い場合は胚盤胞より 初期胚を戻したほうがよい?

宇津宮 隆史 先生 熊本大学医学部卒業。1988年九州大学生体防御医学研究所講 師、1989年大分県立病院がんセンター第二婦人科部長を経て、 1992 年セント・ルカ産婦人科開院。国内でいち早く不妊治療に取 り組んだパイオニアの一人。開院以来、妊娠数は8,600 件を超える。 この秋、臨床遺伝専門医に合格。O型・おひつじ座。
すっこんぶさん(26歳)からの相談 Q.男性不妊が主ですが、自らもFSHが高いのでショート法 にて採卵2回、顕微授精2回(両方採卵2日後移植の初期 胚)。 採卵では1回目も2回目も5〜6個採れて2個戻しま したが、グレードのいいものは3分割や2分割と分裂が遅 い状態でした。これから秋に向けて3回目の採卵をしようと 思います。次回の計画を先生に相談したら、胚移植の確率 が下がるので胚盤胞まで育てるより初期胚を戻すことをす すめられましたが、個人的には2つくらいグレードがよけれ ば初期胚1個、胚盤胞手前くらいまで育ててもう1個移植 できたらと思うのですが、実際可能でしょうか? また、分 割が遅い場合はやはり初期胚のほうがいいのでしょうか?

主な原因は男性不妊ですが、FSH値や受 精卵の分割などが気になるようです。

宇津宮先生 当院で行うART(高度生殖補助医療)で、男性不妊、卵管のみの原因、抗精子抗体の3つのグループの妊娠率を調べたところ、もっとも早く妊娠するのは抗精子抗体、次に卵管のみ、もっとも妊娠率が低いのは男性不妊という結果でした。それだけ男性要因での妊娠は難しいという認識です。

顕微授精は、1つでも精子が採取できれば可能ですから、質が低いなかからでもなるべく多く選び、多数個、受精を試みたいところです。

胚盤胞と初期胚。すっこんぶさんのケース なら移植に適しているのはどちらですか?

宇津宮先生 基本的には培養3日目の初期胚か、さらに2〜3日成長を進ませた胚盤胞で移植を行います。どちらの胚も戻す「 2段階移植法」という方法が一部で行われていますが、 2 つとも着床し、双胎妊娠になる可能性があることは理解しておかなければなりません。また、初期胚移植と胚盤胞移植については2000年頃から多数の報告が出ていますが、基本的には胚盤胞移植の方が妊娠率は高いとの結論です。ですか ら初期胚移植もそれを知った上で一度試みてもよいかと思います。

受精卵の培養方法について教えてくだ さい。

宇津宮先生 受精から着床までの流れを体外で行うのが培養。卵管内とよく似た環境の培養液で受精卵を培養し、子宮へ移植するのが体外受精です。また、多数採卵・受精させて胚がたくさんできた場合、胚を凍 結させ、次の周期に融解し、移植するという技術もあります。現在では受精翌日、受 精2〜3日目の初期胚から5〜6日目の胚盤胞まで、どのタイミングでも凍結保存が可能になりました。しかし受精卵が成長 し、凍結・融解に耐えうるだけのグレードをもった精子と卵子でなければ成り立ちません。すっこんぶさんのように卵子や精子に不安がある場合は、なるべく数を増やして確率を上げることが大事だと理解していただけるでしょう。

先生の病院で用いている培養液について、 詳しく教えていただけますか?

宇津宮先生 受精卵を育てる培養液の種類は数多くありますが、現行はすべて海外から輸入されています。そこで、日本卵子学会が培地開発委員会を立ち上げ、製薬会社とともに 10 年以上の歳月をかけて研究し、「完 全なヒトの体内環境をモデルとした、世界でも類を見ない純国産の培養液」を開発しました。従来の培養液とで胚盤胞の育ち方を比較すると、きれいな胚盤胞に育つ割合は常に 10 〜 20 %高いという結果が出ていま す。安全性が高く結果も出せるというのは、患者さんにとって朗報ですから、100%ヒト由来の純国産培養液が、今後さらに広く使われることを我々は期待しています。
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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。