Q 卵管が癒着し、詰まる卵管留水腫。 自然妊娠は無理?
ドクターアドバイス
卵管留水腫とは、卵管先端のラッパ状の卵 管采が癒着して通過性を失った状態です。そ の原因は子宮内膜症であったり、クラミジア などによる炎症だったりさまざまなことが考 えられます。卵管が癒着していると卵管内の 分泌物が腹腔内に流れず、卵管内に溜まって 水腫状になります。これに感染が起こり、膿 が出れば「卵管留膿腫」です。
卵管采の癒着が強固なものでなければ造 影剤(ヨード剤)を強く注入することで一 部の癒着が取れ、通ることもありますが、 卵管が完全に通ることはごくまれですし、 ご自身でも心配されているように卵巣から 排卵した卵子のピックアップはかなり難し いと思われます。
造影剤のみでの解決は難しい、ということ ですね。
蔵本先生 Chunya さんはまだまだお 若いので、腹腔鏡手術の技術の高い医療施設 で手術を行い、卵管采の癒着があれば剥がし て再建術をされてみてはいかがでしょう。そ の時に子宮内からインジゴカルミンという色 素を注入し、卵管が十分通っているかどうか 腹腔鏡で確認してください。これがうまくい けば自然妊娠できる可能性があります。
もし腹腔鏡手術をし、卵管を通した後に 再度卵管が閉鎖したり、なかなか妊娠しな いようならその時に初めて IVF を考えられては。また、一度子宮鏡検査を行い、子 宮内腔にどこか異常がないか確かめておく ことをおすすめします。
医師から IVF をすすめられたというこ とですが。
蔵本先生 手術を行わず、最初から IVF を行うことも可能ですが、顕著な卵管留水 腫があればその内容液が子宮内へ逆流する ことで着床率は低下してしまいます。胚盤胞移植をして胚が子宮内にとどまる時間を 減らしたり、胚移植日に抗生物質を十分投 与して移植前に経腟エコー下で卵管留水腫 を穿刺吸引することになります。それでも 妊娠しない場合は、子宮と両側卵管の境を 切断し、卵管留水腫の内容液が逆流するこ とを防ぎます。しかしこの方法は、それ以 後は IVF でしか妊娠できません。
また、疑問の一つである「当日のみのレ ントゲン撮影」は、水性造影剤を使うもの で、翌日撮影する油性造影剤より現在ポピュ ラーなことなので心配されることはありま せん。Chunya さんがもし海外在住で、 このような検査の手順のわかりにくさなど 些細なことでの不安が大きいのであれば不 妊治療の間は日本に滞在し、安心できる環 境でしっかり治療に向き合われるのもメン タル的に重要かもしれません。