初めての体外受精について

Q 初めての体外受精で 2個胚移植を希望できる?

吉田 仁秋 先生 獨協医科大学卒業。東北大学医学部産婦人科学教室入局、不妊・ 体外受精チーム研究室へ。米国マイアミ大学留学後、竹田綜合病院産 婦人科部長、東北公済病院医長を経て、吉田レディースクリニックを開設。 2016年1月に「仙台ARTクリニック」として移転・リニューアルオープン。
ちゃそさん(29歳)からの相談 Q.約10年間、「若いから大丈夫」と医師からいわれてタイ ミング療法だけで妊活してきました。不妊に関して一通り の検査もしましたが、特に異常はなし。30歳を迎えよう としている今、医師からは人工授精をすすめられています が、排卵誘発をしてまでタイミングをとり続けてきたのに、 人工授精に切り替えたところで意味があるとは思えませ ん。人工授精を何度もするお金があるなら、1回の体外受精に使いたいと思っています。そこで質問ですが、少な い回数で妊娠の確率を上げるために、リスクを承知で胚を 2つ、あるいは2段階胚移植を受けたいという望みを受け 入れてもらえますか? 子どもは3人欲しいと思っていたの で、リスクはありますが多胎も一つの手だと考えています。

19歳で初めて結婚。離婚、再婚も経験さ れて、その間いくつかの病院でタイミング療法を続けられてきたそうです。

吉田先生 年齢がまだお若く、卵管やホル モンの状態も異常がないということで、どの先生もタイミング療法をおすすめしてい たようですね。ただ、施設が変わったとしても、 10 年近く同じ方法を続けるのは長す ぎるのではないでしょうか。

一般不妊治療の場合、どんなに若い人でも6カ月おきというのが通常のやり方だと思います。いろいろな検査をしながら6カ月間タイミングをみて、それでなかなか結果が得られなかったら次は人工授精を6周期試して、難しいようなら体外受精にステッ プアップする。一般の婦人科であれば「1~2年タイミングをとって」という考え方 もあるかもしれませんが、不妊治療専門クリニックだとなるべく早く妊娠を叶えるために、一つの治療にかける期間はより短縮されます。

約 10 年続けても結果が出なかったという ことは、タイミング療法では妊娠できない要因があるのかもしれません。一通りの検査は行ったということですが、もしAMH(抗ミュラー管ホルモン)の値を計測してい ないようなら、一度調べてみてはいかがでしょうか。卵巣の予備能をみて、現在の体の状態をもう少し詳しく把握しておくこと も大切かと思います。

次は人工授精ではなく、体外受精、それ も2つの胚を同時に移植して妊娠の確率を上げたいと考えているようですが。

吉田先生 グレードのよい胚盤胞を2個移植すれば、1個を移植した時と比べて確かに妊娠率はアップします。だいたい2~3割程度高くなるでしょう。しかし、その分、双子になる確率も上がってしまいます。「双子も一つの手」とお考えのようですが、1人の赤ちゃんを産むのも大変なところ、2人となったらリスクはもっと大きくなり、早産になる可能性も。それこそ母子ともに 命がけの出産ということになります。

安全な出産をするために多胎になること はなるべく避けるというのが医療側の原則ですから、1回目の体外受精から2個の胚 盤胞を戻す提案をする施設はないでしょう。

 経済的な事情で、体外受精にトライする回数は限られるとのこと。まだ年齢がお若く、AMHなどに問題がなければ、1回の採卵でも多くの卵子を確保できるはずです。当院の場合、 20 代なら通常の胚盤胞移植でも5~6割の方が妊娠されています。 残りの受精卵を凍結しておけば、3人お子さんを妊娠・出産することも可能ではない でしょうか。

「一度の治療で双子を授かれるといいかも」と安易に考えるのではなく、出産後のこともしっかり考えていただきたいですね。双子でもちゃんと育てられる環境が作れるのかなど、出産時のリスクも含め、担当の先生やご家族とよく話し合って治療方針を決められるとよろしいかと思います。

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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。