2度 の初期流産。 このまま胚移植を続けるか、 若いうちに採卵するべき?2度の流産を経験されたちゅらさん。
残りの凍結胚で移植を続ける? それとも少しでも若いうちに採卵しておいたほうがいいのでしょうか? レディースクリニック北浜の奥裕嗣先生に伺いました。
ドクターアドバイス
これまでの治療データ
検査・ 治療歴
不妊の原因と なる病名
精子 データ
漢方・サプリメント の使用
ちゅらさんは2回流産を繰り返しています。 先生のご意見をお聞かせください。
奥先生 お気持ちとしてはつらいと思いま す。流産の原因は染色体異常がある場合が60 ~ 70 %、そのほかの原因がある場合が 30 ~ 40 %とされています。とくに染色体異常 の確率は母体の年齢とともに上がり、 40 歳 以上では 80 %以上になります。ちゅらさん も染色体異常が2回続いている可能性は否 定できないですね。
また、染色体異常と不 育症が重なっていることも考えられます。 このような方に対して、当院では絨毛染色 体検査をおすすめしています。この検査で は流死産後に得られる検体から胎盤絨毛組 織や胎盤組織を採取・培養し、染色体の数 や構造の異常がないかを調べて、染色体異 常か不育症かを判別することができます。 流産を2回以上繰り返していても絨毛染色 体検査で染色体異常が見つかれば、たまた ま染色体異常の受精卵が着床しただけで、 次に染色体異常でない受精卵に出会えれば 妊娠が継続できる可能性はあります。一方 で染色体が正常であれば、不育症が原因と いうことになり、それに適した治療が必要 になります。
ちゅらさんの場合は染色体異常か不育症 かどちらかわかりませんが、不育症検査で 第 12 因子とプロテインSが低下しています ので、今後、胚移植をされる場合は、血液 の循環を良くするアスピリンとヘパリンで 同時に治療する必要があります。現在はヘ パリン単独で治療をされているようですが、 アスピリンとヘパリンそれぞれ単独で使用 するよりも、それらを同時に併用するほう がより有効とされています。
また、2回連続で流産をしていても卵子 は個々に違います。同じ周期に採卵した受 精卵が連続して染色体異常だったとしても、 ほかの受精卵もすべて染色体異常かどうかはわかりませんし、染色体異常の確率が高く なるということもありません。
このまま胚移植を続けるか?
奥先生● 40 歳以上の方については、意見が 分かれるところだと思います。治療の基本 原則は、患者様の体の負担が少ない方法を 選択するということです。残りの受精卵が 1~2個しかないということであれば話は 別ですが、この方は4つ残っています。胚 移植は凍結融解胚移植でも、自然周期移植 でも子宮内膜を着床しやすい環境に整えるだけですので、胚移植を続けるほうが体へ の負担は少ないでしょう。ただ、どのよう なグレードの凍結胚が残っているのかがわ かりません。基本的に胚移植を続ける場合 は、受精卵のグレードが良いことが前提に なります。たとえば、6日目の胚盤胞の妊 娠率は 25 ~ 30 %で、5日目の胚盤胞に比べ ると妊娠率は約半分になります。もしもグ レードが良い5日目の胚盤胞などが残って いれば、胚移植を続けられるといいと思い ます。
一方で、6日目の胚盤胞で、しかもグレードが良くないということであれば、この方 もおっしゃるように、年齢が少しでも若い うちにグレードの良い卵子を採卵するとい う選択もあると思います。しかし、排卵誘発 剤による体への負担をはじめ、採卵時の出 血や細菌感染のリスクもありますのでケー スバイケースです。
40 歳以上の方には、胚盤胞移植と分割胚移 植どちらがいいのでしょうか?
奥先生 良い受精卵を選定するという意味 では、体外環境で受精卵の成長スピードが 早く、高い着床率が期待できる胚盤胞のほうがいいのですが、 40 歳以上の方の受精卵 は体外環境でのストレスに弱く体外での長 期培養に適していないという説があり、初 期胚で早く体内に戻すほうがよいとされて います。分割胚から胚盤胞の成長過程で理 想的なのは、1番が卵管内の自然環境で、 2番目が体外環境です。
ちゅらさんはおそらく二段階胚移植をさ れているのだと思います。二段階胚移植は、 同じ周期に2~3日目の初期胚と5~6日 目の胚盤胞を二段階のタイミングに分けて 移植する方法ですが、2つメリットがあり ます。1つ目は、初期胚と胚盤胞の2つの 培養環境が異なる胚移植を同時に試せるこ とです。先ほどお話ししたように、分割胚 から胚盤胞まで卵管の中で育つのが一番良 いとされていますので、グレードの低い受 精卵が体外よりもいい環境で胚盤胞まで育 ち、卵管から子宮に戻って着床することが あるかもしれません。2つ目は胚盤胞の着 床率を上げる可能性です。1回目に移植し た初期胚が子宮内膜を刺激することによっ て、次の胚盤胞が着床しやすくなる効果も あるといわれています。この方法は着床障害がある 40 代の方にも適しており、ちゅら さんのような方に合っていると思います。