中村先生教えて!たまごのこと

妊娠は、卵子と精子が受精することからはじまりますが、卵子はいつ、どこで、どのようにつくられているのでしょうか。

第1回は、卵子のメカニズムについて、なかむらレディースクリニックの中村嘉宏先生に伺いました。

 

中村 嘉宏 先生 大阪市立大学医学部卒業。同大学院で山中伸弥教授(現CiRA 所長)の指導で学位取得。大阪市立大学附属病院、住友病院、 北摂総合病院産婦人科部長を経て、2013 年より藤野婦人科ク リニック勤務。2015年4月なかむらレディースクリニック開院。ユー チューブで落語を愉しむのが最近のリラックス法という先生。「大 阪ネイティブなので、上方落語が好きです。おじいちゃんの愛らしさ をもつ笑福亭松鶴師匠と、ふくよかな語り口の桂米朝師匠が好み です。生前に直で落語を見ることができなかったのが残念です。」

ポイント

★生まれた時から一生分の卵子をもっています。

★卵子が新しくつくられることはありません。

★年齢とともに卵子は減り、老化していきます。

★卵子の成熟、排卵にはホルモンが関係しています。

★卵子は卵管采によって吸い上げられます。

Q・卵子はどうやってつくられるの?

A・生まれた時に一生分の卵子をもっています。

女性はお母さんのお腹の中にいる時から、卵巣の中に一生分の卵子をもっています。卵子のもとになる細胞は受精後2週間という妊娠の超初期につくられ、その後アメーバ状に運動しながら卵巣のもとになる臓器にたどり着きます。そして卵母細胞となり、どんどん数を増やしていきます。この細胞はつくられるとすぐに卵胞という袋につつまれ、原始卵胞になります。その数は妊娠5〜6カ月の胎児の頃が一番ピークとされ、700万個ともいわれています。

その後、卵子が新たにつくられることはなく、生まれた時にはすでに200万個、月経がはじまる頃には 30 万 個ぐらいまで急激に減少します。そして排卵するしないにかかわらず毎日 30 〜 40 個ずつ減り、閉経近くなると数 千個程度になります。女性が一生を通じて排卵する卵子の数はわずか500個ほどで、そのほかの卵子のほとんどは成熟せずに消滅してしまいます。卵巣の中の卵子の数には個人差がありますが、AMH(抗ミュラー管ホルモン)という卵巣予備能を調べる検査で、卵巣に残っている卵子の数をある程度予測することができます。

もう一点大事なことは、卵子は新しくつくられないこと。20 歳の時に排卵された卵子は約 20 年間、 40 歳なら約 40 年間、 卵巣の中にいたことになり、卵子は母体とともに加齢しダメージが蓄積していきます。

Q・卵子はどのように成長するの?

A・ホルモンによってコントロールされています。

卵子の成長にはホルモンが大きくかかわっています。脳にある視床下部からGnRH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)が分泌されると、下垂体から卵胞の成熟をうながすFSH(卵胞刺激ホルモン)が分泌され、月経の頃に卵巣にある数十個の二次卵胞から通常 1 個の胞状卵胞(約5㎜)が排卵に向けて成長をはじめます(選ばれた卵胞を主席卵胞といいます)。

そしてFSHなどの作用により卵胞の中で卵子を包んでいる顆粒膜細胞からエストロゲン(卵胞ホルモン)が分泌されます。約2週間かけて主席卵胞は、 18 〜 20 ㎜の 大きさに成熟し、卵胞から分泌されるエストロゲンはピークを迎えます。

エストロゲンの分泌がピークを迎えると、それを下垂体が察知して、排卵の合図であるLHサージを起こします。するとLHサージを合図に卵子は卵胞を破り、卵巣の外に飛び出します。これを排卵といいます。排卵後、卵胞は黄体という組織に変わり、プロゲステロン(黄体ホルモン)を分泌します。プロゲステロンはエストロゲンで厚くなった子宮内膜を受精卵が着床しやすい状態に整えます。

Q・排卵した卵子はどうやって子宮に届くの?

A・卵管の先にある卵管采に吸い上げられていきます。

排卵された卵子は、卵管の先にある卵管采に取り込まれます。大切なことは、卵子が卵管采に飛び込んでいくのではなく、卵管采の運動によって卵子がタイミングよく吸い上げられていることです。卵管は卵巣と子宮をつなぐ 10 ㎝ほどの器 官で、常にくねくねとした運動(ぜん動運動)を繰り返しています。そして、手のひらのような形をした卵管采が、左右の卵巣の表面を常に撫でまわして排卵された卵子をうまくキャッチし、卵管の中に取り込んで精子が来るのを待ちます。卵子が卵管に取り込まれにくい原因として、クラミジアや子宮内膜症などによる卵管の炎症のため、卵管采が卵子をキャッチできない場合や、卵管が癒着を起こして卵管のぜん動運動が妨げられていることが考えられます。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

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