Q 2回移植に失敗したのは、 受精卵の染色体異常のせい?

伊藤哲先生 順天堂大学医学部卒業、同大学院修了。順天堂大学医学部 産婦人科学講師、国際親善総合病院産婦人科医長を経て、 1999 年あいウイメンズクリニック開院。日本生殖医学会生殖医 療専門医。まとまったお休みが取れると、北から南まで日本各地 で走っているSLの撮影に行くという伊藤先生。カメラ機材を抱え て山道や崖を登るのが、いい運動にもなっているそうです。
みちこさん(39歳)からの相談 Q.治療1年目はクロミッドⓇを使ったタイミング法でうまくいか ず、2年目は精子の動きと形があまり良くないので、夫が 精索静脈瘤の経皮的塞栓術を受けました。私の子宮卵管 造影の結果は異常なしで、そのすぐ後に妊娠しましたが6 週目に流産。それから1年間、3回の人工授精を経て4カ 月前から顕微授精を開始。卵子が5個採れて2回に分けて、 そのうち4個を2個ずつ移植しましたが、結果はどちらも陰 性でした。医師は「胚の質が悪かったから着床しなかった」 といいますが、すべての胚に染色体異常があることは考え られますか? また、子宮内に超音波で見えないようなポ リープができていることもあるのでしょうか。移植後、下 腹部と太ももの付け根に冷たい感覚があるのですが、プロ ゲステロン製剤が合っていないということはありますか?

移植したすべての胚に異常があることは 考えられますか?

伊藤先生 年齢が 39 歳の方だと、正常な受 精卵のほうが少ないと思います。確率でいうと、だいたい3分の2くらいは染色体異常であるといわれているんですね。多いのは確かですが、別の見方をすれば3分の1は正常である可能性が高いということです。ですから、すべてが異常だったとはいえないでしょう。

正常な受精卵でも着床率は100%ではありませんから、結果が出なかったのは染色体異常のせいだと決めつけることはないと思いますね。

  受精卵の状態が胚盤胞で、染色体異常がな いかどうかを調べるのは、着床前診断を受けてみないとわかりません。この検査は現在、国内では、習慣流産の方など特定のケースを対象に、日本産科婦人科学会の臨床委員会で承認を得た症例に限り行われています。

ほかに心配されているポリープや下腹部 の違和感が着床に影響していることはあるのでしょうか。

伊藤先生 超音波検査で見えないようなポリープが子宮にあったとしても、それが着 床に大きな影響を及ぼすことはないと思います。確かに子宮鏡検査をしないとわからない部分もありますが、超音波下でもある程度大きさは見えてくるので、心配されることはないのでは。

下腹部と太ももの違和感については、13 年前に自然妊娠された時にはなかった ので心配されているようですね。これはホルモン剤が合わなかったから起きた症状とは考えにくく、単に感覚的なものだ と思います。長く続いて気になるようでしたら、主治医の先生に相談されてみて はどうでしょうか。

後どのような形で治療を進めていった らいいですか。

伊藤先生 残念ながら2回とも着床はしませんでしたが、卵子の数は5個採れて、すべて受精したということ。次からは採卵からのスタートになると思いますが、排卵誘 発法に関しては今までと同じ方法でもいいのではないでしょうか。

おそらくアンタゴニスト法などの刺激法を選択されていると考えられますが、まずまずいい形で卵子が採れているので、別の方法に変える必要はないように思われます。変えるとすればもう少し注射の量を増やして、7個から8個くらいの卵子を採ることを目指してもいいかもしれません。少 しでも卵子の数が多いほうが、胚盤胞にいく確率が上がりますから。

あとは着床の問題ですが、もしこれまでやっていないようなら、体外受精の施術前に受精卵が透明帯から脱出するのを助けるアシストハッチングや、胚を着床しやすくするエンブリオグルーという培養液を試してみるのも一つの手だと思います。できることはまだあると思うので、前向きに次の移植にチャレンジしていただきたいですね。

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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。