凍結胚盤胞移植後の血液データに関して

Q 移植後のホルモン数値が低めでも 妊娠を継続できますか?

北村誠司先生 慶應義塾大学医学部卒業。1989年からIVFおよび内視鏡手術に 従事。子宮鏡下手術による胚移植の改善や、腹腔鏡下手術による 子宮筋腫、内膜症の解消・改善を積極的に図ると同時に、妊娠困 難症例に対しても新しい治療を取り入れて対応。普段多忙なので、 夏と冬、年に最低2回は家族と旅行することを決めているという北村 先生。お子さんたちも楽しみにされているそうです。
とよさん(28歳)からの相談 Q.生理開始4日目よりホルモン補充をしながら、D16に 6日目凍結胚盤胞を1個移植しました。移植後10日目 の判定で、ホルモン数値はHCG:99.8mIU/ml、E2: 132.9pg/ml、P4:5.6ng/mlでした。診察時は勉強 不足で医師に質問できませんでしたが、帰宅後、調べて みると、全体的に数値が低い気がします。特にP4やE2が 低い気がするのですが、移植後10日目にこの数値で妊 娠を継続できる可能性はあるのでしょうか。エコー検査 はしていないので、子宮内膜の厚さなどはわかりません。 薬は移植前からジュリナⓇ、プレマリンⓇ、ルトラールⓇ、 ウトロゲスタン Ⓡ腟錠を使用しています。

移植後 10 日目のホルモン数値が低いので はないかと気にされていますが。

北村先生 特にP4(黄体ホルモン)とE2(卵胞ホルモン)について心配されている ようですが、それほど気にする必要はないのでは。当院では、妊娠判定時にこの 2つのホルモン値の計測はしていません。もちろん計測をする施設もあると思いま す。結果を見て、「平均からみると低めなので対策しましょう」と、ホルモン補充を考える場合もあるかもしれません。

この点については施設ごとに見解が異なってくるかと思います。当院ではこの時期に特に補充は考えず、このまま様子をみていくという形になると思います ね。不安でしたら、担当医の先生に相談されてみてはいかがでしょうか。

HCGの値についてはどう思われますか。

北村先生 HCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)は、胚が着床すると絨毛という組織から分泌されるホルモンです。普段は女性の体内に存在しないので、このホルモンが増加しているかどうかで妊娠を判定することができるんですね。

とよさんは 99 ・8mIU / ml とのこと。当 院では100mIU / ml を妊娠の継続可能な ボーダーラインとしているので、それからみると「やや低めかな」という感はありますが、ほぼ問題はないと思います。妊娠継続の可能性については、 75 %くら いが継続し、残りが流産になるという、体外受精の一般的な割合を目安にしていただければいいのではないでしょうか。

妊娠継続は厳しいというHCG値のボー ダーラインは?

北村先生 施設によって基準としている数値は異なると思いますが、当院では 25 mIU / ml 以下だと妊娠の継続は厳しく、出産までいく可能性はかなり少ないのではないかと考えています。
  ただし、最初は分泌が遅く、その後増加し、10 日くらいかけて通常の数値になってくる という方も。ホルモン分泌の上昇のしかたには個人差があると思うので、妊娠判定の基準値も絶対とはいえません。当院ではHCG値が 9.1mIU / ml 、学会の報告では 5.1mIU /ml で出産までいった方もいましたから。

結論としては、何もせず、このまま様子 をみていって問題はないということですか。

北村先生 当院の見解ではそう思います。特に流産する確率が高くなっているとか、危機が非常に大きいという印象はありません。

  担当の先生から何も提案がなかったので、 患者さんからすると「これで大丈夫かな」という感じがしたのかもしれませんね。ただ、体外受精まで行っている専門施設のようですから、問題があればすぐに対応しているはずです。ホルモンも厳しい数値なら、補充を提案しているでしょう。

この時点ではあまり心配せず、先生を信じて、このまま様子をみていっていいと思いますね。

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