【Q&A】治療方法のご相談~藤本先生

ちゃどさん(29歳)

私にあった治療法はなんでしょうか。主人側には何の問題もなく、むしろ優秀な精子です。
2021年に5月にアンタゴニスト法による採卵後、ホルモン補充周期による2度の移植を行いましたがいずれも最初の血液検査で陰性でした。2022年9月にもう一度、黄体ホルモン併用による採卵を行って、凍結受精卵2個で移植待ちです。先生曰く、移植しても着床しない原因として考えられるのは、卵子の質が良くないこと、そして子宮内の環境が良くないことだそうです。
私は多嚢胞性卵巣症候群ではないそうですが、AMHが高め(9.34)の為hcgに過剰に反応してしまいOHSSとなってしまいます。
2021年2月の不妊検査後に自然妊娠できましたが(排卵誘発剤によるタイミング法です)、初期流産でした。その当時のわずかな妊娠中も非常にお腹が苦しく、OHSS状態でした。
また、採卵時に使用する点鼻薬は効き目がよくなく、ホルモン値が上がりません。卵胞数の割にエストロゲン値が低すぎるしもともと低い体質なんですね、と言われました。2度の採卵でも、育っていた卵胞数に比べて採卵数が少なく、また凍結受精卵も1度目で3個、二度目で2個でした。1度目の採卵時では、分割スピードが遅くあまり良い受精卵ではなかったそうです。
2度目の採卵では一度目と同じ方法で採卵準備をし、点鼻薬(ブレセリン)に関しての挿入回数を増やしました。しかし点鼻薬は反応せずで、採卵予定日に採卵はできませんでした。OHSSになってしまう為、なるべくhcg注射は避けたいとのことでしたが、結局hcg注射を打ちました。結果、凍結できたのは受精卵2個です。先生曰く、適切な時期にhcg注射をしていれば卵子が成熟し、もう少し採卵できた、あるいは質の良い卵子ができていたかもしれない、とのことでした。また、2度目の移植時に、着床不全の原因を調べるため子宮内膜フローラ検査を行っており、そ䛾結果、ラクトバチルス䛾割合が1.3%と低い為、抗菌薬を
飲み、ラクトフェリンサプリも服用し始めました。2022年12月にもう一度子宮内膜フローラ検査をしましたが、ラクトバチルスは0%になっていました。その為、前回とは異なる抗菌薬を服用し、ラクトフェリンサプリの量も1ヶ月間は1日6錠(600mg)に増やし(通常は1日3錠(300mg))、加えてラクトフェリンの膣剤を約2週間服用しています。
次回は3月に今凍結している受精卵を移植する予定です。そして、今凍結している受精卵で妊娠に至らなかった場合、次回は採卵方法については、基本的にアンタゴニスト法は変更せず、点鼻薬はやめてhcg注射を打つ、ということです。ただ、OHSSのリスクを少しでも下げるため、育つ卵胞の数は減ってしまうことは覚悟で、卵胞を育てる注射量を減らして卵胞数を減らすそうです。
質問になります。
①今回の移植で妊娠できれば良いのですが、万が一、3度目の移植となった場合、現在先生が提案してくださっている方法で試してみるべきなのでしょうか?自分では最適な方法がわからないですし、これまで先生を信じて進もうと思っているので提案された内容を受けていましたが、他の先生のご意見も伺いたく質問させていただきます。まずOHSSになってしまう私の体に、この高刺激の採卵方法は合っているのでしょうか。体の負担は大丈夫なのか心配です。質の良い卵子を得るために最適な方法は何か他にあるのでしょうか。実際に検査結果を診ていただいているわけではないのでご判断が難しいかと思いますが、よろしくお願いします。
②ラクトフェリンサプリについてですが、過剰摂取になっていなかったのか心配です。サプリの用法には目安1日3錠までとされているところ、先生の指示により1日6錠に増やしました。加えて同時期から、ラクトフローラフォルテという、ラクトフェリン膣剤も2週間服用しています。サプリの過剰摂取なども問題になるかと思いますが、大丈夫なのでしょうか。(もう遅いのですが。。)
③上記、ラクトフェリン膣剤についてです。膣剤を使用開始してからおりものに似たようなものがショーツに付着し、織物シートに黄色いものが広がっていることが多いので、クリニックの先生に相談しました。先生からは膣剤を使用していれば多少はあるだろうとの返答のみでした。どうも気になり販売元に確認をしたところ、「対象の膣剤を使用して、おりものが気になるという
報告はかなり稀で1000例に1例ほど、また乳酸菌が刺激となった粘膜からの分泌の可能性は否定できない」との回答がありました。先生からは膣剤の方が効き目が良いからと飲み薬ではなく膣剤を指示されましたが、販売元の回答が正しいとすれば使用を中止した方が良いのでしょうかもしくは薬の服用をするべきでしょうか?
④質の良い卵子だったとしても、私の子宮内膜の状態では着床できないのではないかと不安です。抗菌薬を飲んでもラクトバチルスの割合が増えない体質の私で、膣剤も体が反応してしまうとなれば、子宮内環境を良くする方法は他にあるのでしょうか?3度目のフローラ検査は実施せずに移植するとのことなので、良い菌が増えたのかもわかりません。
⑤今の私の状態で、着床窓検査などもした方がいいのでしょうか。何かできることがあればご意見いただけると嬉しいです。

藤本先生に聞いてきました

さっぽろARTクリニックn24 藤本 尚先生

日本産科婦人科学会認定 産婦人科専門医、臨床細胞学会細胞診専門医。札幌医科大学産婦人科、神谷レディースクリニック 副院長を経て、医療法人社団 さっぽろARTクリニック開院し理事長に就任。2019年5月 医療法人社団 さっぽろARTクリニックn24開院。
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。
ちゃどさん、こんにちは。さっぽろARTクリニックn24の藤本です。
ご質問が多岐にわたるのでできるだけ完結にお答えしたいと思います。

そしてはじめに書いておきますが、やはり不明なことは出来るだけ貯めずに、その場で主治医に質問をぶつけるのが一番いいと思います。

ちゃどさんの情報とデータをすべて持っているので、質問に答えやすいからです。
その上でどうしても納得のいく答えが得られない場合には転院も含めて考えてみるのがいいかなと思います。

それでは①~⑤の質問に答えていきたいと思います。

①万が一3度目の移植となった場合、今の先生の提案で試してみるべきでしょうか?

胚移植はまだ2回しかされていないので、まずは胚移植を行うべきと思います。低刺激は体には優しいかもしれませんが、発育する卵胞が少ないと、採卵できる卵胞も少なくなります。
そうなると培養して最終的に凍結基準を満たす胚も少なくなります
現在の保険での回数に制限のある体外受精制度では、仮に僕が行う場合にもAMH:9.34のちゃどさんには高刺激を行うと思います。
誘発方法はAntagonist法あるいはPPOS法を行うと思います。
ただその場合でも過去のデータ(前2回の排卵誘発方法、採卵でとれた個数、受精率、分割状況など)を踏まえてトリガーの時間や方法、使用する薬剤の種類や量を変えたりすると思います。

②ラクトフェリンサプリが過剰摂取になっていないか心配です。

サプリメントは医薬品ではないので、その規制が緩いため、入っているというものが規定の量入っていなかったり、入っていると言われていないものが入っていたりということもないわけではありません。
医薬品についてはそのあたりがとても厳しく管理されています。
それでも稀に問題になることはありますが、、、。
現在、ちゃどさんが内服しているサプリそのものについてはわかりません(1錠あたりに入っている容量も分からない)が、ラクトフェリンはタンパク質です。
ラクトフェリンについては多めにとっても問題はないと思います。
イメージとしてはコップに入った水と考えるといいかもしれません
あふれるだけです。3倍内服したから3倍効果が出るわけではないですが、害が増えるということもありません。
ラクトフェリンの膣剤について服用するべきでしょうでしょうか?
これは僕が見たわけではないので、私見になりますが、ちゃどさんの主治医の先生は、ちゃどさんを診察しての見解であり、販売元は一般論を話しているだけになります。
決して、ちゃどさんのことを見て話しているわけではありません。
膣錠は婦人科ではいろんな種類の薬剤がありますが、溶解して帯下様にでてくることはあります。
私自身も患者さんでラクトバチルス膣錠挿入後帯下様に出てきた人は複数人経験があります。
また、世界的にはラクトフェリン内服よりも、膣錠での乳酸菌製剤治療が主流と思いますので主治医の先生のおっしゃっていることに一致します。
どちらが正しいかは文章だけではわからないので、中止したほうがいいかの判断はできません。
④子宮内環境を他に良くする方法はありますか?
“質の良い卵“という言葉はあまり使いたくないのですが、そもそも29歳のちゃどさんの卵は質が良いはずです。
子宮内の乳酸菌状況についての見解についてはまだまだ確かなものではないですが、乳酸菌が少ない(いない)場合に妊娠しないわけではなく本来の確率よりも下がってしまう可能性があるというものです。
膣や子宮の環境は膣が肛門(菌がたくさんいる場所)に隣接しており日々変化します。
仮に3回目のフローラ検査をして、その結果が2週間後に出たとするなら、その結果が今の膣/子宮の環境を表しているとは限りません(あくまでも2週間前の膣/子宮の金環境を示している)。
これが難しいところです。
フローラ検査を含めて膣/子宮内の細菌検査結果は検査当日に出るものではない事、膣/子宮の菌環境は日々変化していることを考えたうえで、そこにとらわれすぎずに基準を満たした凍結胚移植をもう少し行ってみるのが良いと思います。
⑤今の私の状態で着床の窓の検査もした方がいいでしょうか?

着床の窓の検査は反復着床障害の検査になります。
3回以上の良好胚を移植しても着床しない場合に診断となります。
なので現時点でちゃどさんには勧めません。

最後に、ちゃどさんは29歳でAMHも高いので妊娠できる要素はしっかりとあるので、治療を続けていけば妊娠できると思います。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

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