今後の治療法について

Q 重度のPCOSと診断。 体外受精に進むべき? ほかには?

山口剛史先生 奈良県立医科大学卒業。2007年京都府立医科大学大学院医学 研究科統合医科学専攻、同博士課程修了。公立南丹病院、京都 府立与謝の海病院産婦人科医長などを経て、2010年より醍醐渡辺 クリニック勤務。O型・天秤座。もともと産婦人科医として活躍され ていた先生。大学院で生殖医療の研究をしていたことから、30代後 半で「年齢的にも最後のチャンス」と、渡辺先生のもとで生殖医療 について必死に学ばれたそう。そして今年、日本生殖医学会生殖医 療専門医に。今後ますますのご活躍に期待しています。

ドクターアドバイス

●PCOSの詳しい検査や現在の治療を見直すこともひとつです。
●調節卵巣刺激法で卵胞が育つ可能性があるので体外授精の検討を
なすがままさん(33歳)からの相談 Q.薬を飲まないと生理がこない重度の生理不順でPCOSと 診断され、クロミッド Ⓡ、自己注射も効かず、1年前にドリリ ングしました。それでも自然排卵せず、注射で育て3回AIH。ほかの月は卵胞が育たずキャンセルに。今回も75 単位で自己注射するも育たずキャンセルで、体外受精をす すめられました。年齢のことや卵子が育たないこと、生理 期間も3〜4日と短くなっているのが気になります。PCOS は卵子の質が悪いと聞くので、このまま体外受精に進ん でいいのか、ほかにやれることはないのか悩んでいます。

この方のPCOSについてどう思われ ますか。

山口先生 PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)は、生殖年齢の人のなかで最も多く みられる内分泌疾患です。結論からお話しすると、この方はPCOSのなかでも、なかなか薬が効きにくいクロミフェン抵抗性タイプかもしれません。ドリリングの効果は1〜2年といわれており、この間に効果が出なければ体外受精に進まれるのがいいと思います。

体外受精に進む前にできることはあり ますか。

山口先生 4つのオプションが考えられます。
一つ目はインスリン抵抗性の検査です。一般的にPCOSの人は多毛や肥満といった傾向がありますが、この方のBMIは 20 ・ 06 で、基準値の 25 未満です ので肥満に当てはまりません。PCOSでも痩せ型の人にみられるインスリン抵抗性(耐糖能異常)が隠れているかもしれません。インスリン抵抗性はHOMA指数でわかり、 1.6 未満が正常、 2.5 以上を 抵抗ありとしています。数値が高い場合 はクロミッドⓇにメトホルミンを併用するといいと思います。

 二つ目は、高プロラクチン血症の検査 です。該当する場合はドーパミンアゴニストを併用することでプロラクチンが低下し、排卵しやすい環境が整います。

三つ目は、現在の治療の見直しです。 クロミッドⓇを投与する前にカウフマン療法やOC(経口避妊薬)を服用すると、 クロミッドⓇによる排卵率、妊娠率の改善が期待できるといわれています。それ でも卵胞が育ちにくい場合はFSH低用量漸増療法やドリリングを行います。

四つ目は、アロマターゼ阻害剤(レトロゾール)を用いる方法です。しかし、第一選択のクロミッドⓇに代わる第二選 択として用いるべきで、クロミフェン抵抗性の人には効果がないと結論づける学 者もいます。その一方で、PCOSの人にはクロミッドⓇよりレトロゾールのほうが排卵率や生産率が優れているという意見もあります。

最後にアドバイスをお願いします。

山口先生 体外受精に躊躇されるのでしたら、まずはインスリン抵抗性、高プロラクチン血症を調べてみるのがひとつ。 さらにカウフマン療法かOCを内服した うえで、クロミッドⓇの一日量を増やしたり、FSH低用量漸増療法を行ってみてはどうでしょうか?

ただ、この方は治療歴が5年と長く、精子も少なめとのことですので、精子数が2000万/ ml 未満、運動率が 40 %未 満であれば体外受精をおすすめします。調節卵巣刺激法で卵胞が育ちやすくなる可能性もあります。PCOSの方は採卵個数が多い傾向はありますが、卵子の質が悪くなるということはありませんので安心してください。

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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。