子宮 のトラブル治療すべき?

子宮 のトラブル 治療すべき? 妊娠を優先すべき?

代に多くみられる子宮のトラブルにはどんなものがあるのでしょうか。

また、治療と妊娠、どちらを優先すべきなのか、いくたウィメンズクリニッ クの生田克夫先生にお話を伺いました。

 

生田 克夫 先生 名古屋市立大学医学部卒業。名古屋市立大学産科婦人科学 教室助教授、名古屋市立大学看護学部教授などの経歴を重ねた が、不妊に悩む名古屋の方たちの役に立ちたいという思いで、教 育者の立場を辞して独立。地元・名古屋の中心部、栄に開院し、 1986年から体外受精の現場を歩いてきた経験と穏やかな人柄で、 数多くの患者さんを妊娠に導く。毎年夏はどこかへ旅行に行きたく なるという先生ですが「ミニチュアシュナウザーとゴールデンなど犬 を5 匹も飼っているので、さすがに連れては行けません。毎年、ど こかに行きたいなぁと思っているだけです(笑)」とのこと。

40 代に多い子宮筋腫 発生した部位によっては 治療を優先することも

妊娠に悪影響を及ぼす子宮のト ラブルとしては、骨盤内の婦人科 系の異常としての広い意味での子宮内膜症卵巣嚢腫子宮の奇形 などが挙げられ、なかでも 40 代に 多く見られるのが子宮筋腫です。

ただ、いずれの病気も、その治 療を優先するか不妊治療を優先す るかはケースバイケース。

まず、子宮筋腫は発生する部位 によって、粘膜下筋腫、筋層内筋 腫、漿膜下筋腫の3種類に分類さ れますが、確実に治療を優先する のは粘膜下筋腫です。

粘膜下筋腫 は子宮内膜の粘膜の下にできるも ので、子宮の内側に向かって成長 していきます。

子宮の腔の中に顔を出しているものや、子宮の腔が 変形しているようなものが多く、 これは明らかに受精卵が着床する のはもちろん、着床しても成長す るのを邪魔しますから、まず妊 娠しないですし、妊娠したとして も流産の確率が非常に高くなりま す。

筋腫が小さいうちから生理痛 とか生理の異常などの症状も起き ている可能性があり、とにかく問 答無用で治療優先となります。

子宮の筋肉の中にできる筋層内 筋腫は、筋腫が大きくて子宮の形 が歪んでいる、腔が広がっている ようなものは手術の対象になる可 能性が高くなります。

子宮の外側 に向かって成長していく漿膜下筋 腫については、いくら大きくても ほとんど影響がありません。

要するに、子宮腔が変形し、子 宮内膜の血流に影響するようなも のはダメですね、ということです。

ただ、筋腫がいくつかある場合は 手術をしても全部取り切れるわけ ではありません。

子宮の傷が回復 するまでは妊娠もできませんか ら、その後は一気に妊娠しやすく なる治療をしていかないと、取り 切れなかった筋腫が発育を始め、 手術前と同じ状態になってしまう 可能性もあります。

子宮内膜症の治療を開 始すると治療中半年近 くは妊娠できません

子宮内膜症の場合は、軽い段階 では、ヨーロッパの学会では不妊 の治療を優先するべきという結果 が出ています。

子宮内膜症とは、 子宮内膜あるいはそれに似た組織 が、子宮内腔以外の場所に発生す る疾患です。

子宮内膜症にはいろいろな病変があるのですが、最初は透明な袋 ができて、赤黒いブルーベリー斑 と言われるものができてきて、周 囲の炎症を起こし、下腹部に引き つるような痛みが出るというよう に進行していきます。

ただ、その あたりまではまだ不妊治療を優先 でかまいません。

しかし、子宮内膜症が進行し、 癒着が起こって周囲の組織がベタ ベタとくっついてしまうと難しく なります。

たとえば、子宮と卵管 がひと塊になってしまうようなこ とになれば、薬物治療と剥離手術 を優先したほうがいいかもしれま せん。

卵巣嚢腫も同じようなもので、 子宮内膜症が卵巣の中に発生し、 その病巣が進むと卵巣内に嚢胞を 形成します。

その嚢胞内に血液が 溜まった状態がチョコレート嚢腫 です。

これも5㎝くらいの大きさ であれば手術を考える基準となり ます。それを超す場合は悪性腫瘍の可能性もありますし、あまりに 大きくなると卵巣の体積自体が大 きくなり、卵管の動ける範囲には 限界があるため卵子を拾いにくく なります。

大きさ、もしくは腫瘍 マーカーの値によっては手術を考 えるべきでしょう。

ただ、子宮内膜症の薬物治療を 開始すると、卵巣の働きを一時的 にとめ、閉経状態にするため、半 年間は妊娠できないということで す。

チョコレート嚢腫など卵巣を 触る手術では、術後に卵巣の卵巣 刺激に対する反応が悪くなり、発 育してくる卵胞の数が減ってしま う恐れもあります。

子宮の奇形についても、どう だったら妊娠しないかという判断 は難しいところです。

ある種の奇 形は流産を繰り返す原因になった りもするので、流産を繰り返して いるのであれば手術したほうがい いと思います。

しかし、現在はよ ほど変わった奇形でなければ手術はあまりしません。

双角子宮など も、若干、妊娠しづらかったり、 流産を繰り返すということもある のですが、まったく妊娠しないか というとそうでもありません。

何歳までに子どもを産むか ご夫婦の人生設計も 重要な判断基準です

以上のように、どのトラブルも その人の年齢、卵巣の予備機能、 病巣の状態などを見ながらドクターとよく相談するべきだと思い ます。

大切なのは、患者さん自身 がいつまでに妊娠したいか、どこ までの治療をしたいか、何歳まで 頑張るのかを最初にある程度考え ておくことです。

また、現在は条件を満たせば体 外受精の1回目には 30 万円の助 成金が出るようになりましたが、 年齢によって助成金の回数も違 います。

そのあたりもすべて理解したう えで、ご夫婦での人生設計をする ことが、治療か妊娠かをはかるた めにも重要だと思います。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

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