子宮腺筋症の 診断にもう妊娠できないのかなと 心のどこかで思っています
子宮筋腫と比べて完治が難しいとされる子宮腺筋症との診断。
今後どのような気持ちで不 妊治療と向き合うべきか、田村秀子婦人科医 院の田中紀子先生に伺いました。
「子宮腺筋症になったら妊娠できない(絶望的)」
子宮腺筋症と診断もう妊娠は絶望的?
おそらく 40 歳という年齢を境に、 思い切って体外受精の治療へと進まれたのでしょう。
今回、子宮腺筋症と初めて診断され、これまでの治療のことも含め、いろいろな思いが一気にきてしまったのでしょうね。
2011〜2012年に日本産科婦人科学会の行った調査で、子宮腺筋症を合併している不妊症の方の 40 %程度 は、ホルモン治療や手術療法なしで妊娠に至ったと報告されています。
妊娠のメカニズムを思い出してみると、卵胞の発育、排卵、着床と、これらのプロセスにおいて、すべての条件を満たして初めて成立するのが妊娠です。
これらの過程で、卵子の質や受精の状況、受精卵の発育状態など、これまでのタイミングや人工授精の治療ではわからなかったことをみることができます。
今はまだ気持ちを切り替えることが難しい時期かもしれませんが、今回、せっかく思い切って体外受精へと進まれました。
子宮内膜症と子宮腺筋症の 違いは?どんな治療法が ありますか?
子宮内膜症とは、子宮内膜と似た組織が、子宮の内膜以外にできる婦人科の病気で、生殖年齢の女性のおよそ 10 %に発生し、月 経痛や腰痛などの痛みおよび不妊が主な症状です。
女性ホルモン(エストロゲン)の影響を大きく受け、子宮の内膜以外の場所で、月経周期とともに増殖し、出血を伴って剥離を繰り返します。
一方、子宮内膜症が子宮の筋層内にでき たものを、特に子宮腺筋症と呼びます。
子宮腺筋症とは、子宮の筋層の中に子宮内膜と似た組織が発生し、子宮の筋層が全体的に厚くなり、月経痛や過多月経を起こします。
半数に子宮筋腫、約 1 割に子宮内膜症を合併しています。
子宮腺筋症は、子宮筋腫のように“こぶ”ができるのではなく、子宮筋層全体が厚くなることが多く(腺筋症でもこぶ状にできる場合もありますが)、正常の子宮の筋層との境界がわかりにくいため、超音波検査だけではなかなか診断がつきにくいこともあり、その場合MRI検査を行えば位置や範囲がもう少しはっきりするとは思います。
子宮腺筋症の治療には、ホルモン剤による治療と、外科的な治療があります。
子宮腺筋症の縮小手術を行う施設もありますが、まだまだごく一部です。
子宮内膜症や子宮腺筋症を持っている方の不妊治療は、妊孕能(妊娠する能力)を維持しつつすすめないといけないので、治療の選択にはとても苦心します。
今までの不妊治療が すべてムダなわけではない
その結果、ようやく体外受精のステップに入ったところです。
子宮内膜症も子宮腺筋症も、女性ホルモンの影響を強く受けるため、根治させるものではなく、上手に付き合って治療を進めていくもの。
特に不妊治療、すなわち妊娠を目指すための治療の過程では、排卵誘発剤などの投与でエストロゲンの作用を強め、さらに症状を進ませてしまうこともあるでしょう。
不妊治療は順番が決まっているものではありません。それぞれの方の状況に応じて、医師と二人三脚ですすめていくものだと思います。
これまであなたを診てきた主治医も、まずは妊娠を先に見据えて治療をしてきて、今この時期に体外受精を選ばれたのではないでしょうか。
そういう意味でも、症状が強い場合にはホルモン治療を優先する、または先に採卵しておいて、ホルモン治療の後に治療を再開するなど、時間を有効に使いながらすすめていく治療を一つの選択肢にするのもいいのではないでしょうか。
体外受精に進んで、今回新たに得られた情報もあるはず。