多嚢胞性卵巣で 卵胞がうまく育ちません。
合っている誘発法は?
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堀川 隆 先生 琉球大学医学部卒業。国立国際医療センター、国立成育医療セ ンター不妊診療科勤務を経て、2009年12月より高崎ARTクリ ニック院長に就任。国際医療センター勤務時より内視鏡手術・生 殖補助医療に従事。成育医療センターでは難治性不妊治療・加齢 と不妊についての研究に取り組む。同クリニックは自然の排卵と、 自然の受精メカニズムを大切にした治療を行うのがコンセプト。 排卵誘発剤など薬剤の使用は必要最低限に抑え、心と体にやさ しい不妊治療で妊娠率を向上させることを目指しています。
Millさん(30歳・会社員)からの相談 Q.多嚢胞性卵巣と男性不妊のため、IVFで治療中で す。1回目はセロフェンⓇとフォリスチムⓇによる誘発 (準自然周期)で10個採卵。未成熟卵や変性卵が 多く、受精したのは2個のみで、1個は分割スピード が遅くて破棄、残りの1個を移植するも陰性でした。 2回目の採卵に挑戦する予定で、フェマーラⓇとゴナー ルエフⓇ、フォリスチムⓇで誘発していましたが、周期 17日目でまだ8㎜と卵胞が育たず、キャンセルにな りそう。私のような多嚢胞性卵巣の場合、自然周期と 高刺激、どちらの方法がいいのでしょうか。可能であ れば、自然に近い形で誘発したいと思っています。
多嚢胞性卵巣の場合は、 自然な排卵の見極めが困難
自然周期採卵についてご説明いたします。
こ の方法はその名前の通り、自然の排卵に合わせ て採卵する方法のこと。
薬を使わず、完全に自 然な形で採卵する場合は、月経周期や排卵周期 が順調な人に限られてくると思います。
Millさんは多嚢胞性卵巣ということで すが、排卵障害の程度が軽く、 35 日など比較 的早めに排卵するタイプであれば完全自然周 期採卵の対象になるかもしれません。
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しかし、 注射を何回しても反応しにくく、排卵までの 期間が長い。Millさんの場合はやはり、 自然に近い形に排卵誘発剤をプラスした低刺 激法を選択されたほうがいいと思いますね。
月経周期が安定している人は排卵日や採卵 日の予想がしやすいので、自然周期でも卵子 が採れるチャンスを高められると思います。
ところが、安定していない方は1週間とか 10 日とか、排卵日が毎周期大きくずれてしまう ことが多い。
早すぎてもダメだし、遅いとすでに排卵して採れなくなってしまうことも。
卵子を採るタイミングを見極めるのが非常に 難しいので、病院に来ていただく回数も増え てしまうんですね。
完全自然周期採卵は体に も経済的にも負担が軽い方法ですが、患者さ んの状況によってはかえって負担になってし まうこともあります。
もう一つ、悩んでいらっしゃる高刺激で卵 子を採る方法ですが、薬の量を増やして強く 刺激すれば卵胞が育つのは間違いないと思い ます。
しかし、多嚢胞性卵巣の方は塩梅を誤 ると卵胞がたくさんできすぎて、OHSS(卵 巣過剰刺激症候群)のリスクが高まってしま うことも。
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それが怖いので採卵日を早めに決 めてしまい、結果的に未熟卵が増えて妊娠に つながらないということもあるんですね。
このようなことから、Millさんの場合 は、これまで実施されてきた排卵誘発剤+注 射という低刺激の方法が合っていると思われ ます。
1回目の誘発でセロフェンⓇを使って 子宮内膜が薄くなったので、2回目はフェ マーラⓇに変えたとのこと。
文献的にも多嚢 胞性卵巣の方はフェマーラⓇで妊娠に関して いい成績が報告されているので、この選択は 正しいと思います。
問題なのは卵胞の発育が 悪いということですが、これを改善するには 注射をもっと細やかにコントロールすること が必要なのではないでしょうか。
単純に注射を打つだけではなく、FSHな ど血中のホルモン状態をこまめに調べなが ら、薬が足りているのかどうかをチェックす る。
Millさんにとってこの量で反応する のかどうかを確認しながら、注射の量を増や すなど、うまくコントロールしていくことが 大切だと思います。
30 歳とまだお若いので、あえて高刺激で一 度にたくさん卵子を採る必要はないと思いま すね。
弱めの刺激で数はあまり多く確保でき なくても、質的にいい卵子が出てくる可能性 は十分あると思います。