移植後のホルモン補充が飲み薬だったから妊娠しなかった?【医師監修】

【医師監修】堀川 隆 先生 琉球大学医学部卒業。国立国際医療センター、国立成 育医療センター不妊診療科勤務を経て、2009 年12 月より高崎ARTクリニック院長に就任。国際医療セン ター勤務時より内視鏡手術・生殖補助医療に従事。成 育医療センターでは難治性不妊治療・加齢と不妊につ いての研究に取り組む。B 型・みずがめ座。医師 2 人 体制の診察が始まってから、待ち時間も大幅に短縮。 NHKで放送された「卵子の老化」特集番組の反響もあ り、初診の患者さんが増えているそう。
yamaちゃんさん(35歳)Q.今年から2人目を望んで治療を始めました。3年前に1人目を妊娠した時はショート 法で2個採卵。胚移植後は毎日黄体ホルモンの注射がありました。今回は違う病 院で治療を受けていますが、主人のサバイバルテストの結果、顕微授精に臨むことに。 アンタゴニスト法で7個卵子が採れて4個受精、2個凍結。胚移植後は飲み薬の 服用のみでした。結局、妊娠しなかったのですが、その結果を聞いて主人が「黄体 ホルモン補充が飲み薬だったからダメだったのかもしれないから、注射にしてもらえ」 と言い出したのです。私にも一度成功したという思いがあって、前の病院で再挑戦 したほうがいいのでは、と迷っています。

誘発法の違い

3年前の治療では注射で黄体ホルモンの補充をし、今回は飲み薬で補充をされていますが、なぜ方法が違うのでしょうか。
堀川先生 それは、排卵誘発の方法が異なるからだと思います。
3年前、最初のお子さんを授かった時はショート法で誘発をされていますが、ショート法やロング法というのは排卵誘発剤をたくさん使って、卵子をしっかり採る方法です。
薬の作用によって卵子がたくさん育ち、排卵を促すLHサージが勝手に起きてしまうと、ベストなところで卵子が採れなくなってしまいます。
早くLHサージが起きると未熟なものばかりで、いい卵子が採れないというケースが多いので、それをコントロールするために薬で一時的にLHなどのホルモン分泌を抑えます。
ただしそうすると、採卵後の黄体変化の際にも不可欠になってくるLHが足りなくなってしまう。
黄体を維持しないとすぐに生理が来てしまうので、外からの補充が必要になってくるんですね。
しっかり抑えた分、しっかり補充しなければいけないので、注射になることが多いようです。
 一方、2回目の排卵誘発はアンタゴニスト法ということですね。
この方法でもLHを抑える薬を使いますが、使う期間はショート法より短く、体の中から早く薬が抜けてしまう。
よって黄体ホルモンの補充は少なくて済みますから、飲み薬や腟錠などで最小限に行うことが多いのです。

状況に合わせた選択

排卵誘発法に合わせて選んでいるということですね。
堀川先生 黄体ホルモンをたくさん補充すれば妊娠する、ということではなく、適切な量を補充することが大切です。
現在の病院は正しい選択をされていると思いますよ。
排卵誘発の方法が変わったのは、3年前と比べて卵巣や精子の状態・条件が変化しているからでしょう。
もしご主人が納得されていないようなら、ご夫婦そろって先生の説明を受けてみてはいかがでしょうか。
一度成功されたので、最初の病院が気になるというお気持ちもわかりますが、せっかく凍結までできた胚が2個残っているので、その結果を待ってからでもいいのでは?
それが待てないということでしたら、凍結胚をしばらく置いておいても妊娠のチャンスは変わらないので、以前かかった病院へ行ってご相談されてみることをおすすめします。
モヤモヤしたまま治療を続けていてもいい影響はありませんから、早めに解決されるといいですね。
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