卵管造影検査の薬剤は有害?

造影剤は有害ではないの?

卵管造影検査を受ける メリット・デメリットは?

田口 敦 先生 昭和大学医学部卒業。昭和大学産科婦人科学教室入局後、 昭 和大学産科婦人科学教室助手に。国立精神神経センター国府台 病院、佐野厚生病院を経て、1999年医療法人三秀会理事に就 任。2000年国立長野病院、2001年鉄蕉会亀田総合病院医長、 2002 年三秀会中央クリニック副院長に。2003 年宇都宮中央ク リニック院長に就任。2009 年より現職。「東京駅、丸の内に近い こともあり、働く女性を応援したいという気持ちを強くもっていますが、 同様に男性も応援したい。いずれは、男性不妊の分野も強化したい ですね」
リュウさん(39歳)からの相談 Q.去年の8月から不妊専門病院に通い始め、半年ぐらいタイミング法で様子を見 てから体外受精に移行する意思を伝えたところ、「それなら卵管造影検査は必 須ではない」と言われ、まだ一度もしていません。その後も検査をしないまま、 これまでに体外受精を4度試しましたが妊娠に至らず、食欲もかなり落ちてし まったことから、思い切ってしばらく治療をお休みすることに決めました。お休 み中も自然妊娠に期待したいと思っているのですが、その場合もやはり卵管造 影検査は受けておいたほうがよいのでしょうか? 1年ほど前に化学流産をして いるので、少なくとも片方の卵管は通っているとは思います。ネットなどで調べ るととても重要な検査のようですが、薬剤が体内に長時間残るということです し、かえって体に悪いような気がしてなりません。

卵管造影検査とは?

卵管造影検査とは?
田口先生 排卵された卵子が子宮へと向かう際の通り道が卵管で、ここに詰まりや癒着、ポリープなどの障害がないかを調べるのが卵管造影検査です。
子宮内にバルーンを入れて少しずつ膨らませ、造影剤を注入し、造影剤が子宮内に広がる様子をレントゲンで確認して卵管の通りをみます。
リュウさんは、造影剤が体に及ぼす影響を気にしています。
田口先生 造影剤として使用される薬剤には、水溶性のものと油性のものがあり、患者さんの任意でお選びいただくことができます。
どちらもヨードが基剤ですので、体に影響を及ぼすことはありませんが、甲状腺疾患のある方は注意が必要ですので、検査前にご相談ください。
水溶性はすみやかに代謝されて体外に排出されるので、体内に残る心配はありません。
油性は、検査から 1 年後でもレントゲンに写ることがあります。
長く残りますが、体に悪影響はなく、それはそれでメリットもあります。
油性造影剤のメリットとは。
田口先生 卵管造影検査は、あくまでも“検査”ですが、油性の造影剤を用いると、ときとして“治療”となることがあるのです。
子宮内をバルーンで膨らませて圧をかけ、そこに油溶性の造影剤を注入すると、塞がっていた卵管の通りが、油性薬剤によって良くなることが多くあります。

卵管造影検査は痛い?

卵管造影検査に、痛みは?
田口先生 よく、「卵管が詰まっていると激しい痛みをともなう」といったコメントも見受けますが、コツを得たベテラン医師であれば、バルーンの圧のかけ具合も心得ているので、それほど痛みもないはずです。
ご心配なら、痛み止めも処方します。
保険適用内でできる検査で、費用もそれほどかかりませんし、受けておくに越したことはないとは言えるでしょう。

お勧めする理由

リュウさんは、治療をお休みする前に検査を受けておくべきでしょうか。
田口先生 どうしても卵管造影検査に抵抗感があるのでしたら、無理にはお勧めしませんが、やはりする価値はあると思います。
自然妊娠を望むにしろ、どちらかの卵管が詰まっていれば確率は 1 /2になってしまいますから、その前に対処が必要です。
でも、現在では、卵管の通りをみる検査としては、ほかにも超音波下で卵管通水をする検査、子宮鏡下で管を入れる選択的卵管通水などもあります。
ただし、情報量は卵管造影検査のほうが多いですし、これらは保険適用外ですので、よくご検討を。
肉体的にも食欲が落ちるなどして不妊治療に耐えられない、精神的にも不妊治療を負担に感じるなどあって、お休みしたいお気持ちもわかります。
ですが、ご年齢のこともあるので、できればお気持ちを切り替え、信頼できる医師のもとで適切な治療をされることをお勧めしたいですね。
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