福田 勝 先生 順天堂大学医学部・同大学院修了。米国カリフォルニア大学産婦人 科学教室留学後、順天堂大学医学部産婦人科学教室講師を経て、 1993年福田ウイメンズクリニック開院。息子さんが学生時代ラグビーをさ れていたとのことで、先日のワールドカップも録画して観戦。「にわかラグビー ファンになっちゃった(笑)」とのこと。次はこれからシーズンが始まるフィギュ アスケートに注目です。

IVA移植後の刺激を ゴナールエフ300単位に 増やしても問題ない?

ちろちゃんさん(40歳)からの相談 Q.AMH0ng/ml、早発卵巣機能不全で、昨年6月に卵胞が育ったきりその後は確認 できず、刺激とリセットを繰り返しています。今年の7月にIVAの移植を受けました。 組織検査の結果は原始卵胞が1個だけ見つかりました。摘出した卵巣8片のうち 2片を移植し、8月から刺激を再開。ゴナールエフⓇ225単位注射とブセレキュア Ⓡを使用しています。2周期目を終え、E2の反応は全て30台です。医師からは、「現 在ゴナールエフⓇ225単位が最低ギリギリのラインでうまく吸収されていないので はないか、次周期は300単位に増やして刺激をしてみましょう」と言われています。 医師の言うとおり、次周期はゴナールエフⓇ300単位の刺激でいいのでしょうか? それからIVA移植後、破綻出血も毎周期起こっています。これはプレマリンⓇによる 子宮内膜増殖症だと言われましたが、これからも続くのでしょうか?

IVFという治療法

IVA移植は聞きなれない言葉ですが、どのような治療法なのでしょうか?
福田先生 IVAとは体外活性化( in vitro activation )のことで、体外に取り出した卵 巣組織にある操作を加え、卵巣内にある発育開始前の原始卵胞を体外で成長開始させて、再びご自身の体内に戻す新技術です。
具体的にはまず医師が腹腔鏡を用いて片方の卵巣を体外に取り出します。
そして最少量の卵巣組織を用いて、どの程度の卵胞が残っているかを確認します。
その他の大部分の卵巣組織は将来の卵胞活性化に備えて凍結保存します。
卵胞が残存していることが確認されたら、一部の卵巣組織を融解して小さな断片にした後、IVA用の溶液の中に 2 日間浸し、卵胞を休眠状態から活性化した状態にします。
そして再び腹腔鏡にて卵管の近くに戻します。
その後は卵胞が発育しているかどうかを超音波と血中ホルモン検査で検査していきます。
そして卵胞が成熟卵胞の状態にまで成長したら採卵し、体外受精を行います。
これはあくまでも早発卵巣機能不全の場合に行う方法で、閉経して卵胞がゼロになってしまうと治療できません。
ちろちゃんさんは早発卵巣機能不全ということで、ホルモン療法などいろいろやってこられたのでしょう。
それでもうまくいかないということで、究極の新技術を使って治療されたのだと思います。
AMHが0 ng/ml と書かれていますが、0・ 16ng/ml 未満のような判 定ではないでしょうか。
ほんのわずかでも卵胞組織があれば、このような治療が可能になります。

今の刺激法はベスト

IVA移植後の刺激を、ゴナールエフⓇ300単位に増やしてもいいのかというご質問です。
福田先生 IVA移植後、自然に卵胞が育たないので、エストロゲン(=プレマリンⓇ)+GnRHアゴニスト(=ブセレキュアⓇ)を使ったのでしょう。
通常GnRHアゴニストを4~8週間投与して卵胞の様子を見ますが、それでも発育が見られなかったため、hMG(=ゴナールエフⓇ)hCG療法を追加したのだと思います。
この場合、ご本人が考えている以上に大量のhMGを投与する必要があります。
ですからゴナールエフⓇを225単位から300単位に増やすことに驚く必要は全くなく、受けられたらよいと思います。
プレマリンⓇを投与していることで内膜が増殖し破綻出血を起こしているとのことですが、これはあくまでもエストロゲンの影響なので、特に問題はありません。
今やっていらっしゃる刺激法はベストな方法だと思います。
もしもこういった治療を繰り返しても卵胞の発育が見られない場合、今のまま排卵誘発を行っても難しいかと思います。
ちろちゃんさんはまだ卵巣の凍結が残っています。
もしこのまま結果が出なかったら、残りの卵巣片を移植するということになるかと思います。
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