人工授精後から おりものや出血が 続いています

北村 誠司 先生 慶應義塾大学医学部卒業。1989年からIVF および内視鏡手術に 従事。子宮鏡下手術による胚移植の改善や、腹腔鏡下手術による 子宮筋腫、内膜症の解消・ 改善を積極的に図ると同時に、妊娠困 難症例に対しても新しい治療を取り入れて対応。本院(荻窪病院) 泌尿器科の男性不妊専門医の協力により、TESE- ICSIや逆行性 射精など、男性不妊の治療体制も整えている。開院して7年。駅か ら近いのに閑静な場所、と通院する人にとってうれしい立地ですが、 院内はまだ改善したい部分がたくさんあるとか。患者さんやスタッフの 声を聞き、近い将来、さらに快適な施設を目指す予定です。
papasさん(39歳)からの相談 Q.不妊治療5カ月目で、今月初めて人工授精をしました。9日昼頃に排卵抑制剤の 注射をして、11日昼頃に人工授精を実施。その後、ずっと茶色のオリモノが続 いています。そして16日(高温期5日目)に伸びる透明のオリモノと鮮血が出 ました。この時、排卵痛のように左下腹部がズキズキ痛み、左足付け根や全体 がとてもだるい感じで、イスに座っているのもつらかったです。この後は茶色い オリモノが続き、19日(高温期8日目)にまた伸びる透明のオリモノと鮮血が。 この時も下腹部痛など16日と同じ症状でした。気になったので内診とエコーで 調べてもらいましたが、異常はないとのこと。排卵は11日の人工授精前のエコー で確認済み、基礎体温も次の日に高温期に移行しています。このことから考える と排卵出血でも着床出血でもなさそう。私の体はどこかおかしいのでしょうか?

クラミジアの可能性

おりものや出血など、どこか気になる症状はありますか?
北村先生 いくつかありますが、まず透明のおりものが何日かあったというのが気になりますね。
「透明のサラサラしたおりもの」というのは、クラミジア感染症の典型的なサインといわれています。
papasさんはクラミジアの検査はされているのでしょうか。
自分では気づかなくても隠れていることがあるので、まだチェックされていないようでしたら、念のため検査を受けることをおすすめいたします。
それから出血についてですが、人工授精や子宮卵管造影の後は挿入した器具の刺激などでしばらく出血する方もいらっしゃいます。
また、不正出血は婦人科系の疾患や子宮がんなどの兆候とも考えられているので、まったく疑いがないわけではありません。
触診やエコーでそのへんも診ていただいたうえでの「異常なし」ということなら心配ありませんが、もしがん検診をしていないようでしたらそちらもチェックを。
年齢的にも年1回は検診を受けられるのが好ましいですね。

排卵痛ではない

痛みについてはどうでしょうか。
北村先生 排卵の後は確かに排卵痛という形で痛みが現れる方もいらっしゃいます。
通常は1日程度ですが、人によっては2~3日続くことも。
痛みについては軽く下腹部が痛む程度から、ひどい方だと生理痛より強く、救急車で運ばれるようなケースもあります。程度には個人差があるようですね。
しかし、papasさんは排卵からしばらく経って痛みが起こり、それが長く続いています。もしかしたら排卵の診断がずれていたのかな、と思いましたが、きちんと確認済みということですから、排卵痛ではない可能性が高い。
左足付け根、つまりリンパの部分ですが、ここが痛むのも排卵と関連があるのか疑問ですね。
婦人科以外が原因という可能性もゼロではないので、ずっと続くようでしたら、今一度先生に相談されたほうがいいかと思います。

高温期の継続的な出血

では、どのようなことが原因だと考えられますか。
北村先生 高温期にずっと出血していたことから考えると、一つは前述したようにがんなど悪性腫瘍によるもの、もう一つはホルモンの異常が考えられます。
ホルモンの異常は、ちゃんと排卵している人には起こりにくいとされていますが、排卵して基礎体温が二相になっていても、黄体期が弱いと起こる可能性も。
ホルモンが減って子宮内膜が剥がれる生理の現象が早く起こって、イレギュラーな形で出血してしまうんですね。
黄体ホルモンや卵胞ホルモンが出にくかったり、それを受け入れる側がうまく機能しなくなっているのかもしれません。
たまたまこの周期だけかもしれませんが、もし次周期も今のような症状が続くようでしたら、黄体ホルモンの数値などを注意深くチェックしていかれたらどうでしょうか。
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