採卵キャンセル

誘発途中に排卵したのは 卵巣機能の低下が原因?

不安でたまりません

宇津宮 隆史 先生 熊本大学医学部卒業。1988年九州大学生体防御医学研究所講師、 1989年大分県立病院がんセンター第二婦人科部長を経て、1992年 セント・ルカ産婦人科開院。国内でいち早く不妊治療に取り組んだパイ オニアの一人。開院以来、妊娠数は7,000件を超える。O型・おひつ じ座。毎食の食事量を減らし、4カ月で6kg減量に成功した宇津宮先生。 今ではベルトの穴が5つも小さくなったそうです。「ダイエットは、努力の成 果が翌日の体重計に出ます。やる気が続き、無理なく痩せることができま した」と、笑顔で語ってくださいました。
まめさん(28歳)からの相談 Q.顕微授精2回、移植2回。D3からHMGフジ300を開始し、胞状卵胞は2.4。 D7の診察では12~13㎜の卵胞が育っているとのことでしたが、数は不明で す。そしてD9で採血すると黄体ホルモンが出てしまっているとのことでした。 卵胞は育っているけど採卵しても質が悪いとのことで、今周期はプラバノールⓇ を飲み採卵は見送ることになりました。そしてプラバノールⓇで生理をこさせてか ら、休まずすぐに採卵周期に入ります。誘発中に黄体ホルモンが出てしまったと いうことは排卵してしまったのでしょうか。以前、HMGフジで2回誘発、採卵し ていますがそんなことにはならなかったので、卵巣機能が低下しているのか不安 です。ここ数日で体重が5kg減りました。それも何か関係あるのでしょうか。

HMGの投与量が原 因?

誘発中に黄体ホルモンが出てしまった原因 は、どんなことが考えられますか?
宇津宮先生 情報が少なく、確実にこれが原 因だとは言えませんが、いずれにしても月経 後 9 日(D9)で黄体化しているというのは、 通常では考えにくいケースで、排卵誘発の方 法にも疑問があります。
卵子がある程度成長するD7からGnRH アンタゴニストという注射を用いるのが一般 的ですが、まめさんが使用したかどうかの記 載がありません。
使用していなければ論外で すが、使っていれば、その使い方が間違って いるのかもしれません。
HMGの投与量が原 因になっている可能性もありそうです。
顕微 授精を行っている施設ですから、不妊専門施 設であることは間違いありません。
それなの にアンタゴニストまたはアゴニストを使わな いとは考えられませんが、仮に低刺激または 自然周期だとするならば、あり得ないことで もありません。
しかし、低刺激、自然周期の 治療開始数あたりの妊娠率は 4 ~5 % と、通 常刺激法が 30 ~ 40 %であるのに対しその1 /10 であることは知っておくべきでしょう。

排卵誘発法は合っている?

自然周期と限定した場合の可能性は?
宇津宮先生 自然周期でHMGを使えば、こ のように勝手に排卵することはあります。
し かし、D7で 12 ~ 13 ㎜の卵胞が 2 日後のD9 で黄体化している。
このタイミングで排卵す るとは考えられないので、D7の診察の前日、 D6で排卵していた可能性があります。
D7 ではすでに排卵していて見えなかったので、 この時に確認できたのは残りの小さな卵胞。
9 日目に黄体化したのは、 6 日目に排卵して いたものだと考えれば、つじつまが合います。
年齢的にまだ若いため、HMGの投与量が 多いのは否めず、予定より早く敏感に反応し たかもしれません。
まめさんに合った排卵誘 発法を選んでいる主治医か、文面を見る限り では疑問が残りますね。

コマメな検査

先生なら、まめさんのような患者さんにどのような治療をお勧めしますか?
宇津宮先生  28 歳で卵巣の反応も良いはず ですから、とにかくこまめに検査をして経 過を診ます。
仮に、D3にHMGの投与量 を300単位にするなら、数日後には検査 して状態を評価し、その後の治療を組み立 てます。
ただし、300単位は多いので最 後まで続けず、 2 ~ 3 日間だけ投与してそ の後は150単位に落とします。
投与量を 減らしても、若さが反応を敏感にする可能 性はありますから、早めの検査で卵胞の数 や大きさ、ホルモン値を常にコントロール してあげることが不可欠でしょう。

体重の急激な減少は他の要因?

大幅な体重減少は関係ありますか?
宇津宮先生 数日で5 kg も減ったというこ とですから、理由が必要です。
なぜこんな に痩せたのか。
病気であれば甲状腺機能低 下などを疑い、先に治療をするべきです。
精神的な問題なら、重度のストレスを抱え ているかもしれません。
この痩せ方は異常 ですから、その問題を解決しなければなり ませんね。刺激法と薬の投与量から推測す ると若く反応が良いから早め早めの検査を。
体重の急激な減少は他の要因が考えられま すからその解決を。
それが、まめさんに対 する私のアドバイスです。
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