2回の胚移植で 数値の悪いほうが 治療継続なのはなぜ?
顕微授精した胚を2段階胚移植、2個移植と2度戻し、 β-hCGが低い2度目のほうが治療継続になったのはなぜなのか、 とくおかレディースクリニックの徳岡先生に伺いました。
●これまでの治療データ
検査・ 治療歴
2015年4月より開始。
採卵2回し、顕微授精。
一度目は2段階胚移植、二度目は凍結胚2個同時移植。
AMHの値:1.35ng/ml
不妊の原因と なる病名
左卵管閉塞
現在の 治療方針
注射(HCG、プロゲホルモン) 薬(プレマリンⓇ、ウトロゲスタン腟錠、エストラーナテープⓇ)
精子 データ
特に問題なし
妊娠判定について
まず、移植後の妊娠判定の方法を教えていただけますか?
徳岡先生 当院では妊娠判定は移植後 2 週間頃、つまり妊娠4W3D~5Dの頃に、hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)を調べて、その数値で判定します。
hCGとは受精卵の周りの絨毛細胞から出ているホルモンです。
受精卵が育つと絨毛が多くなるので、hCGも上がっていきます。
4W頃に100 IU/ml以上で+(プラス / 陽性)、それ以下は±(プラスマイナス / 偽陽性)、感度以下であれば-(マイナス / 陰性)と判定します。
ただし4Wの時点で 25IU/ml 以下なら、本来は数値が出 ているので±・偽陽性なのですが、過去の例から見ても妊娠継続の可能性はないと考え、陰性として再検査も必要ないと判断します。
ななほしさんが通われているクリニックで は、βーhCGで判定するとのこと。
hCGにはαとβがあり、βーhCGサブユニットは妊娠時の絨毛細胞から出るもので、より妊娠判定に適しているとされています。
移植後2週間で判定する施設が多いなか、7日目にしているとのことですので、βーhCGで早い時期に判定をしようと考えられているのではないでしょうか。
いずれにしても、hCGやβーhCGで陽 性反応が出ていても、移植後3週間頃、つまり妊娠5W頃に胎嚢が見えた時点で臨床妊娠と判定します。
妊娠判定の方法や基準もそれぞれ違う
1度目より2度目のほうがβーhCGが低かったのに、2度目が治療継続になったのはなぜなのでしょうか?
徳岡先生 採卵の誘発方法がクリニックによって違うように、妊娠判定の方法や基準もそれぞれ違います。
hCGはαとβの合計の値になりますので、βーhCGだけの数値は通常のhCGの値よりは低い基準値に設定されているはずです。
7日目のhCG値を当院では測らないので参考数値も不明ですが、おそらくその先生が基準値を決めていらっしゃるのだと思います。
いくつ以上なら+で次の診察では超音波を見るとか、この数値以下なら±だから再検査、などの基準があると思います。
ただご質問を読んだだけでは、私もなぜ2 度目の低いほうを治療継続にしたのか疑問ですね。
採卵周期の新鮮胚移植と、ホルモン補充周期での移植とで違うのかもしれませんが、通常はhCGが高く偽陽性率が高いほうを再検査するはずだと思います。
E2とP4と妊娠判定
E2とP4の数値は判定には関係ないのでしょうか?
徳岡先生 E2はエストラジオール(卵胞ホルモン)、P4はプロゲステロン(黄体ホルモン)で、妊娠判定には関係ありません。
これらは今のホルモン状態、子宮内膜の状態を表していて、下がってしまうと着床しづらいと考えます。
通常はこの時点で、エストラジオールは100pg /ml 、プロゲステロンは 10ng /ml あれば大丈夫なので、問題ありません。
一度目はこの周期に採卵をしているので、卵胞から出るE2が高いのでしょう。
2度目はE2、P4両方高いですが、それはホルモン補充周期で良い内膜状態と考えます。
プレマリンⓇと エストラーナテープⓇでE2を、注射とウトロゲスタン腟錠でP4を補充しているのです。
子宮内膜の環境は十分整っているので、βー hCGは7日目の時点では低いけれど、後から上がってくる可能性もゼロではないと判断されたのかもしれないです。
それと、ななほしさんの年齢やAMHの値を考えたのかもしれないですね。
AMH 1 ・ 35ng/ml は、当院 ですと 44 歳相当だとお伝えします。
2回連続 で陰性になることの精神的な影響も考えて、できる限り追いかけてみようとしたのかもしれないですね。
誘発方法、移植方法に工夫
今後ななほしさんは、どのように治療を進めていけばよいと思われますか?
徳岡先生 凍結胚がまだ残っているのであれば、ホルモン補充周期で戻していくことになると思います。
もしもう凍結胚がない場合は、もう一度採卵を頑張っていただきたいですね。
年齢が 41 歳で、AMHも 1 ・ 35ng/ml と低 めなので、自然周期かアンタゴニスト法での採卵になると思います。
移植を採卵周期にするか、ホルモン補充周期にするかですが、そこは担当の先生とななほしさんの話し合いで決めていくことになります。
採卵周期であれば3日目に戻せますが、ホルモン補充周期となると受精卵を凍結して一度生理を起こし、そこから貼り薬、飲み薬を使って子宮内膜をつくっていくことになり、コストがかかります。
状況から考えると受精卵1個あたりの妊娠率は低いとは思いますが、それでもホルモン補充周期のほうが妊娠率は高くなるといわれています。
大事な受精卵なので、いい子宮内膜をつくって戻してあげてほしいと思いますが、そこはじっくり見てくれている主治医の先生とよく相談してみてください。
ななほしさんは治療を始めてから5カ月と いうことなので、まだまだあきらめることなく頑張っていただきたいですね。
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