妊娠判定の結果と治療継続について

2回の胚移植で 数値の悪いほうが 治療継続なのはなぜ?

顕微授精した胚を2段階胚移植、2個移植と2度戻し、 β-hCGが低い2度目のほうが治療継続になったのはなぜなのか、 とくおかレディースクリニックの徳岡先生に伺いました。

徳岡 晋 先生 防衛医科大学校卒業。同校産婦人科学講座入局。自衛隊中央 病院産婦人科勤務後、防衛医科大学校医学研究科に入学し、 学位(医学博士)取得。2005 年、とくおかレディースクリニッ クを開設。クリニック内のジム室に本格的なトレーニングマ シンを導入。2カ月間週2回、診療後プロのトレーナーに指 導を受け、体重 5㎏、ウエスト 5㎝を落とされたそう。「かな りきついですが、汗をたくさんかくのでストレス発散になり ますね」と先生。
相談者 ななほしさん(41歳)からの相談 今年2月に治療を開始し、これまでに採卵、移植を2 回して、7日目に妊娠判定をしてもらっています。1回 目は2段階胚移植でD12に新鮮胚、D15に凍結胚の 移植を行いました。ホルモン結果はβ-hCG/12.9IU/ ml、E2/370.7pg/ml、P4/11.52ng/ml で 陰 性 と いうことで治療が終わりました。2回目はホルモン周 期でD22に2個同時に凍結胚移植を行いました。ホ ルモン結果はβ-hCG/1.7IU/ml、E2/208.3pg/ml、 P4/17.51ng/mlで化学流産になる可能性が大きいけ れど、治療の継続と次週再判定を行うことになりました。 β-hCGIU/mlの数値は明らかに2回目のほうが悪いの に、治療継続になったのはなぜなのでしょうか。

●これまでの治療データ

検査・ 治療歴

2015年4月より開始。

採卵2回し、顕微授精。

一度目は2段階胚移植、二度目は凍結胚2個同時移植。

AMHの値:1.35ng/ml

不妊の原因と なる病名

左卵管閉塞

現在の 治療方針

注射(HCG、プロゲホルモン) 薬(プレマリンⓇ、ウトロゲスタン腟錠、エストラーナテープⓇ)

精子 データ

特に問題なし

妊娠判定について

まず、移植後の妊娠判定の方法を教えていただけますか?

徳岡先生 当院では妊娠判定は移植後 2 週間頃、つまり妊娠4W3D~5Dの頃に、hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)を調べて、その数値で判定します。

hCGとは受精卵の周りの絨毛細胞から出ているホルモンです。

受精卵が育つと絨毛が多くなるので、hCGも上がっていきます。

4W頃に100 IU/ml以上で+(プラス / 陽性)、それ以下は±(プラスマイナス / 偽陽性)、感度以下であれば-(マイナス / 陰性)と判定します。

ただし4Wの時点で 25IU/ml 以下なら、本来は数値が出 ているので±・偽陽性なのですが、過去の例から見ても妊娠継続の可能性はないと考え、陰性として再検査も必要ないと判断します。

ななほしさんが通われているクリニックで は、βーhCGで判定するとのこと。

hCGにはαとβがあり、βーhCGサブユニットは妊娠時の絨毛細胞から出るもので、より妊娠判定に適しているとされています。

移植後2週間で判定する施設が多いなか、7日目にしているとのことですので、βーhCGで早い時期に判定をしようと考えられているのではないでしょうか。

いずれにしても、hCGやβーhCGで陽 性反応が出ていても、移植後3週間頃、つまり妊娠5W頃に胎嚢が見えた時点で臨床妊娠と判定します。

妊娠判定の方法や基準もそれぞれ違う

1度目より2度目のほうがβーhCGが低かったのに、2度目が治療継続になったのはなぜなのでしょうか?

徳岡先生 採卵の誘発方法がクリニックによって違うように、妊娠判定の方法や基準もそれぞれ違います。

hCGはαとβの合計の値になりますので、βーhCGだけの数値は通常のhCGの値よりは低い基準値に設定されているはずです。

7日目のhCG値を当院では測らないので参考数値も不明ですが、おそらくその先生が基準値を決めていらっしゃるのだと思います。

いくつ以上なら+で次の診察では超音波を見るとか、この数値以下なら±だから再検査、などの基準があると思います。

ただご質問を読んだだけでは、私もなぜ2 度目の低いほうを治療継続にしたのか疑問ですね。

採卵周期の新鮮胚移植と、ホルモン補充周期での移植とで違うのかもしれませんが、通常はhCGが高く偽陽性率が高いほうを再検査するはずだと思います。

E2とP4と妊娠判定

E2とP4の数値は判定には関係ないのでしょうか?

徳岡先生 E2はエストラジオール(卵胞ホルモン)、P4はプロゲステロン(黄体ホルモン)で、妊娠判定には関係ありません。

これらは今のホルモン状態、子宮内膜の状態を表していて、下がってしまうと着床しづらいと考えます。

通常はこの時点で、エストラジオールは100pg /ml 、プロゲステロンは 10ng /ml あれば大丈夫なので、問題ありません。

一度目はこの周期に採卵をしているので、卵胞から出るE2が高いのでしょう。

2度目はE2、P4両方高いですが、それはホルモン補充周期で良い内膜状態と考えます。

プレマリンⓇと エストラーナテープⓇでE2を、注射とウトロゲスタン腟錠でP4を補充しているのです。

子宮内膜の環境は十分整っているので、βー hCGは7日目の時点では低いけれど、後から上がってくる可能性もゼロではないと判断されたのかもしれないです。

それと、ななほしさんの年齢やAMHの値を考えたのかもしれないですね。

AMH 1 ・ 35ng/ml は、当院 ですと 44 歳相当だとお伝えします。

2回連続 で陰性になることの精神的な影響も考えて、できる限り追いかけてみようとしたのかもしれないですね。

誘発方法、移植方法に工夫

今後ななほしさんは、どのように治療を進めていけばよいと思われますか?

徳岡先生 凍結胚がまだ残っているのであれば、ホルモン補充周期で戻していくことになると思います。

もしもう凍結胚がない場合は、もう一度採卵を頑張っていただきたいですね。

年齢が 41 歳で、AMHも 1 ・ 35ng/ml と低 めなので、自然周期かアンタゴニスト法での採卵になると思います。

移植を採卵周期にするか、ホルモン補充周期にするかですが、そこは担当の先生とななほしさんの話し合いで決めていくことになります。

採卵周期であれば3日目に戻せますが、ホルモン補充周期となると受精卵を凍結して一度生理を起こし、そこから貼り薬、飲み薬を使って子宮内膜をつくっていくことになり、コストがかかります。

状況から考えると受精卵1個あたりの妊娠率は低いとは思いますが、それでもホルモン補充周期のほうが妊娠率は高くなるといわれています。

大事な受精卵なので、いい子宮内膜をつくって戻してあげてほしいと思いますが、そこはじっくり見てくれている主治医の先生とよく相談してみてください。

ななほしさんは治療を始めてから5カ月と いうことなので、まだまだあきらめることなく頑張っていただきたいですね。

ジネコ注目のスタッフ!

培養室 室長 畠山将太さん 当院では採卵されたすべての患者様に、卵の受 精状況や成長状況を胚培養士からお話しをさせて いただいています。患者様にお会いすることで大 切な命のもとをお預かりしていることを再認識し、 使命感と責任感をもって仕事に取り組んでいます。  顕微授精は精子を卵子に入れるという操作をす るので、抵抗がある方もいらっしゃると思います。 しかし、受精は私たちの力だけでできるのではな く、もともと巡りあう運命だった精子・卵子が、 私たちを先導して動かしていると感じています。 数ある精子の中から「自分を使ってくれ」とアピー ルした精子をしっかりと卵子に届け、その精子・ 卵子の持っている力を100%発揮できる環境を 作るのが私たちの役割。最後は自分たちの力で受 精し、そのあとも成長していくのだと思います。

 

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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。