胚移植の時期について

良好胚でも成功しないのは 高齢で「着床の窓」が ずれているから?

複数回、良好な胚を移植しても結果が出ないのは、着床のタイミング がずれてしまっているからなのでしょうか。

はらメディカルクリニックの高橋しづこ先生にお話を伺いました。

高橋 しづこ 先生 1995年、米国オレゴン州私立Reed Collegeを卒業。1997年、 東海大学医学部へ入学。同大卒業後、東京大学医学部大学院を 経て、2011年より加藤レディースクリニックで非常勤医師として勤 務。現在ははらメディカルクリニックで主に採卵と人工授精を担 当。A型・いて座。自身も不妊治療を受けながら39歳で第1子、 41歳で第2子と、高齢で出産。治療のつらさや痛みがわかる分、 患者さんのお話にはできるだけ真摯に耳を傾けたいというのが信 条。趣味はサイクリングで、通勤にもロードバイクを愛用するアク ティブな一面も。

ドクターアドバイス

●ホルモン補充周期なら着床の窓は安定
●膣座薬でもきちんと補充できるので安心を
●反復不成功例には「SEET法」も有効
ギズモさん(37歳)からの相談 Q.着床には「インプランテーション・ウィンドウ(着床の窓)」というもの があるそうですが、高齢の人や妊娠しづらい人はそれが前にずれてい る、開いている期間が短いなどの状況が考えられる場合があると聞き ました。これまで良好な胚を移植しても着床すらしないことばかりで、 自分はその着床の窓に原因があるのではないかと思い始めました。ホ ルモン補充周期で移植する場合、どこを基準に排卵日として考えてい るのでしょうか。また、黄体補充の薬についてはエストラーナⓇと膣座薬はいつも出ますが、注射はありません。毎回同じ方法で結果が出て いないのに注射もしないという治療法でいいのでしょう?

●これまでの治療データ

検査・ 治療歴

ひと通りの検査を受けたが、高プロラクチンぎみということ を除けば特にこれといった問題はなし。 これまで顕微授精で6回の胚移植を行っているが、1回目は 着床したものの継続せずに化学流産、4回目は陽性反応は出 たが5週あたりで流産。その他の回は着床すらせず、結果が 出ていない。 

不妊の原因と なる病名

高プロラクチン?現在は着床の窓にも原因があると考えている。

現在の 治療方針

7回目の移植に向けて点鼻薬を始めたところ。

精子 データ

手元にデータがなく、詳しい数値は不明

着床の窓が開くために

インプランテーション・ウィンドウとは何を 意味しているのでしょうか。
高橋先生 「着床の窓」ともいわれているイ ンプランテーション・ウィンドウは、簡単に いえば着床可能な時期ということになります。
この時期、子宮内膜の表面には受容体のよう なものが出現して、受精卵を受け入れるのに 最適な環境になります。
期間としてはだいた い5、6日間程度。それほど長くはなく、この 時期を逃してしまうと着床は難しくなると考 えられています。
ギズモさんがおっしゃっているように、年齢 などでその期間がずれてしまうということは あるのですか?
高橋先生 前にシフトしてしまっているので はないかと心配されているようですが、それ は考えにくいですね。
この方はホルモン補充 療法をされています。
ホルモンを補充するこ とで子宮内膜等もしっかりコントロールされ ているので、自然周期に比べたらインプラン テーション・ウィンドウもきちんと定まって いるのではないかと思います。

着床の窓を安定させるために

そのホルモン補充についても疑問や不安を 抱かれているようです。
高橋先生 ホルモン補充周期の方法は施設に よって様々かと思いますが、基本的にはエストロゲン(卵胞ホルモン)製剤を最初に使っ て子宮内膜の環境を整え、内膜の厚みとホル モン値が良ければロゲステロン(黄体ホル モン)製剤を使い、移植に備えて着床しやす い状態に整えます。
ギズモさんは排卵日の推定についておたず ねですが、通常はプロゲステロンを使い始め るタイミングが自然の排卵日に近いと考えら れ、胚盤胞移植であれば使い始めて5~6日 目が移植日に相当します。
ホルモン補充周期はホルモン値が安定する のでキャンセルがほとんどなく、より確実に 移植できる方法です。
また、先ほど申し上げたように、着床のタイミングであるインプラ ンテーション・ウィンドウも安定するのでは ないかと思います。

多少のホルモン値のバラつき

注射を足さないのは問題なのではないかと思 われているようですが。
高橋先生 ギズモさんはインプランテーショ ン・ウィンドウのずれを危惧されていますが、 実は一番心配されているのはホルモン補充の 方法なのでは?
現在、膣座薬を使われているということで すね。
もしかしたら「膣座薬は膣内に残りが あったりして何となく効果がないのでは?」 というイメージをお持ちになっていませんか。
膣座薬中にはプロゲステロンが222㎎も含 まれているので、使用時に溶け残りがあって も心配はいりません。
「注射はしなくていいのか」と疑問を持たれ ているようですが、確かに筋肉注射には膣座 薬に比べ、ホルモン濃度が一定になるメリッ トがあります。
しかし、膣座薬も筋肉注射も その効果にはほとんど差がなく、同様の妊娠 率・生産率であることが報告されています。
膣座薬は血中濃度が低い割にこの結果という ことは、局所的に効いているということなの かもしれません。
いずれにせよ、膣剤だけで も妊娠や着床に問題はなく、通院回数が少なく、痛みもほとんど伴わないことから、欧米 ではホルモン補充法の主流となっています。
ホルモン数値に多少バラつきが出たとし てもきちんと効いているはず。
注射をしな いせいで結果が出ないということではない と思います。

シート法や、二段階胚移植

では、今後も同様の治療を続けていってよい のでしょうか。
高橋先生 卵子はちゃんと採れているようで すし、移植の回数は6回と多めですが、その うち2回は流産という結果ながら妊娠をされ ています。
はっきりとした着床不全の原因が 解明されていないのであせるお気持ちはわか りますが、まだまだ成功する可能性はあると 思いますね。
ただし、ずっと同じやり方で結果が出ない ようでしたら、違う治療法でトライしてみて もいいかもしれません。
たとえばどのような方法がありますか。
高橋先生 ギズモさんは子宮内膜の状態をと ても心配されているようですね。
そのような 方は、一度「SEET(シート)法」を試されてみてはいかがでしょうか。
体外受精 ー 胚移植の着床不全の1つに受精卵と子宮内膜の反応不全があります。
最近の 研究では、着床準備のためには受精卵からの シグナル(胚因子)が必要であり、それと同 調して子宮内膜は着床環境を整えている。
冒 頭にお話しした、「インプランテーション・ウィ ンドウが開く」ということがわかりました。
よって、胚盤胞移植単独ではそのシグナルを 送るタイミングがないため、着床不全の原因 になる可能性もあるといえます。
そこで当院では、胚盤胞を培養する時に使っ た培養液を、胚盤胞を子宮内に移植する2~ 3日前に注入し、子宮内膜の状態を整えるSEET法を採用しています。
2日目の胚を移 植してから胚盤胞を移植する「二段階移植法」 と同様の考え方ですね。
SEET法の妊娠率は高く、特に3回以上 移植しても妊娠しなかった方には期待できる 方法だと思います。
もし胚盤胞もできている ようでしたら、一度この方法にチャレンジさ れてみるのも1つの選択だと思います。

30代後半の最新記事

>全記事がドクター編集!

全記事がドクター編集!

不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。