検査時の卵胞数より 多くの卵が採れました。 本当に私の卵なの?
波多野 久昭 先生 日本医科大学卒業。ハンブルク大学産婦人科学教室留学後、日本医科 大学付属病院産婦人科学教室講師、飯田市立病院産科科長を経て、 2005年ノア・ウィメンズクリニックを開院。A型・やぎ座。今年の夏はご夫 婦と下の息子さんで北海道・洞爺湖へ旅行に行かれるご予定だそう。車で の旅行は5匹の愛犬たちも一緒に連れて行くことが多いそうですが、今回 は上の息子さんとお留守番です。
かむらさん(39歳)からの相談 Q.昨年の検査で低AMH、高FSH、卵管右閉塞・左狭窄とわかり、今年から体外受精に取り組んでいます。これまでに2回マイルド法で採卵できたもの の受精や着床がうまくいかず、今回は質の良い卵を目指しアンタゴニスト法で採卵。 3日前の卵胞チェックでは、右は前回3個あったのが2個、左は2個あったのが0個 になっていて、採れても1~2個と言われていました。採卵が始まってから、記憶が 正しければ右は2回刺し、左は刺したけど採れないようでした。終わってみると採卵 数は4個だと話がありました。1つの卵胞からは卵子は1つしか採れないと思いま すが、これはどういうことでしょうか。「本当に私の卵ですか?」と聞くと、「そうです。 多分引っ付いていたのでしょう」との回答で、今一つ納得できません。土曜で混みあ っていて、取り違えしていないかと心配です
卵胞数より多くは採卵できない
3日前の検査で確認した卵胞数より多くの卵子が採れたそうです。
波多野先生 卵胞の数よりたくさん卵子が採れることは絶対ないので、4つ卵が採れたのなら、卵胞の数も4つ以上あったはずです。
以前の検査では卵胞が右3個、左2個と言われていたのが、3日前に2個、0個になったわけですから、もともとは5個あったのかもしれないですね。
患者さんに卵胞の数をお伝えする時には、十分に大きくなった、卵が採れそうな卵胞の数を言うことが多いと思います。
小さいものまで数に入れてしまうと、あまり採れなかった場合、がっかりさせてしまうことになりますから。
かむらさんにも3日前の時点で十分大きくなった、穿刺できそうな卵胞の数だけをお伝えしていたのではないでしょうか。
ある程度大きくて穿刺できそうな卵胞の数は2つしかなかったけれど、実際採卵してみたら、小さい卵胞からも採れたのかもしれないですね。
予測が嬉しい方に外れたということではないでしょうか。
一度の穿刺で複数採卵できる
採卵中に、実際針を刺した回数の記憶とも違っているようです。
波多野先生 穿刺の回数は、患者さんがわかることもあるかもしれないですが、正確ではないと思います。
採卵針は膣壁を刺して卵巣までいくわけですが、何度も刺すとやはり痛いので、できるだけ膣壁の穿刺は 1 回にして、一つの卵巣の中で角度を変えて卵胞に穿刺するようにします。
患者さんは最初の膣壁の穿刺の時に痛みを感じるだけで、卵胞への穿刺の時には痛みを感じません。
医師も痛みを感じそうな時に「刺しますよ」と声をかけるので、隣にある卵胞も同時に穿刺する時にはお伝えしていないと思います。
ですから針を刺したと感じた痛みよりも多く採れている可能性は十分にあります。
採卵時もダブルチェック
卵の採り間違えを心配されていますが、そういうことは起こり得るのでしょうか。
波多野先生 人がやることなので100%ないということは誰にも言えませんが、まず起こらないことだと思っていいでしょう。
当院では採卵日の朝にはミーティングで、同じような名前の方がいる場合は特に気をつけるようにしっかり確認をしますし、採卵時には培養士がダブルチェックを行っています。
どの病院でも間違いが絶対に起こらないよう、細心の注意を払っているはずですので、心配なさらなくても大丈夫だと思います。
最後にかむらさんにアドバイスをお願いします。
波多野先生 39 歳という年齢とAMHが低めでFSHが高いという状況で、今回こんなに卵が採れたのはよかったと思います。
アンタゴニストの刺激のやり方が、かむらさんに合っていたのではないでしょうか。
4個採れたのはラッキーだと思って、あまり心配なさらずに、このまま治療を進めていかれた方がいいと思います