注射や飲み薬など 排卵誘発剤は 卵子の質を低下させる?
吉田 仁秋 先生 獨協医科大学卒業。東北大学医学部産婦人科学教室入局、不妊・体外 受精チーム研究室へ。米国マイアミ大学留学後、竹田総合病院産婦人 科部長、東北公済病院医長を経て、吉田レディースクリニック開設。同クリ ニックでは、東北大学農学部と泌尿器科の先生と共同開発し、卵子の老 化をブロックする新しいサプリメントを発売。注目成分・プラセンタを配合した もので、女性用のほかに男性用もあり、すでに顕著な結果が出ているそう。
たじゃさん(31歳)からの相談 Q.今月から不妊治療を開始。来月からHCG+HMGの注射をして、タイミング療法を 開始するそうです。 疑問なのですが、排卵誘発剤を注射するたびに、卵巣(卵子の質)が老化していく というのは本当ですか? すぐに妊娠すればいいのですが、なかなか妊娠できず、 いざ体外受精に進むとなった時に「卵子の質が低下していて成功率が下がるので は?」と心配です。また、飲み薬のクロミッド®でも同じように卵子の質は低下してい くのでしょうか?
排卵誘発と卵子の老化
来月から注射で排卵誘発をしながらタイミング療法をされるそうですが、排卵誘発剤を注射するたびに卵子が老化するということはあるのですか?
吉田先生 HMGやHCGの注射は、卵胞の発育や排卵を促すためのもの。
少しでも卵子の状態を良くして妊娠率を上げるために使います。
結論から申し上げると、これらの注射が卵子を老化させるということはありません。
一般不妊治療で使用したとしても、影響はないでしょう。
卵子へ減っていく
たじゃさんは一般不妊治療をしていますが、たとえば、体外受精の排卵誘発で卵子をたくさん採りすぎると卵胞が早く枯渇する、というようなことはないのでしょうか。
吉田先生 卵子の数は、お母さんのお腹の中にいる時は700万個くらい。
出生と同時に70 ~200万個ほどになり、生理を迎えた思春期からは毎月 10 個くらい出ていきます。
たとえば、 10 歳で初経を迎えたとすると、年間に出ていくのは120個。
10 年だと1200個程度です。
確かに年齢とともに減ってはいきますが、ストックは結構たくさんあるんですよ。
毎月の注射でたくさん浪費したとしてもまったく問題にならない程度で、それが卵子の老化に結びつくということもありません。
クスリと卵子の関係
それはクロミッド ® など経口薬でも同じことがいえますか?
吉田先生 はい。クロミッド ® も卵子を老化させるということはありません。
一つ問題なのは、卵子には影響がありませんが、この薬は長期服用すると子宮内膜が薄くなったり、頸管粘液が少なくなるという方もいらっしゃいますので、使用するのはだいたい半年が目安ですね。
副作用が出てしまう方は、クロミッド ® の代わりにフェマーラ ® を使います。
これはエストロゲンの拮抗剤なので、子宮内膜が薄くなる心配がありません。
では、排卵誘発の薬が卵子に悪影響を及ぼすということはないのですね。
吉田先生 妊娠率を上げるために排卵誘発を行っているので、ご心配いりません。
それよりも、卵子の質を低下させる一番の原因は年齢です。
一番妊娠しやすい年齢は 22 歳前後。
そこをピークとしてだんだん低下していき、30 歳を過ぎれば低迷期、 35 歳を過ぎれば今度は不妊の決定期に。
肌や内臓の機能が老化していくように、卵子も同じ細胞ですから老化が進んでいきます。
卵子の老化を心配されるのなら、なるべく早い時期に治療を始められることが大切だと思います。
卵子の老化予防
卵子の老化を予防する方法はありますか?
吉田先生 最もおすすめしたいのは血流を良くすること。
全身の血行が良くなるということは、卵巣への血液の流れも良くなるということですから。
ウォーキングやストレッチなど、軽い運動を習慣的に取り入れて。
ストレスの解消など精神面にも良い影響があるので、ぜひ実施していただきたいと思います。