FSHが高値ですが 薬による治療で 自然排卵は望めますか?

FSHが高値とホルモンに異常があって自然排卵が難しい場合、 薬による治療を行えば、きちんと排卵するようになるのでしょうか。

吉田レディースクリニック ARTセンターの吉田仁秋先生に伺いました。

吉田 仁秋 先生 獨協医科大学卒業。東北大学医学部産婦人科学教 室入局、不妊・体外受精チーム研究室へ。米国マイア ミ大学留学後、竹田総合病院産婦人科部長、東北 公済病院医長を経て、吉田レディースクリニック開設。 今年も「自分ができることを地道に1つ1つやっていく こと」が目標という吉田先生。昨年還暦を迎え、気持ち も一新。これからも健康に気をつけ、プライベートでもさ らにいろいろなことにチャレンジしていきたいそう。

この薬が知りたい!

●プロベラ ®

黄体ホルモン製剤。稀発月経 など月経周期や月経量の異 常、黄体機能不全による不妊 症などの治療に使われる。
ま れに吐き気や頭痛などの副作 用が出る人も。
ももひらさん(28歳)からの投稿 Q. 5年前から大学病院にて治療。受診内容は生理不順でしたが、 FSHの値は100と異常値。プレマリン®とプロベラ®で生理を起こ していました。昨年9月の結婚を機に不妊治療に切り替わり、治療 開始時にはFSHの値は50に下がっていました。主にプレマリン® で様子を見て、生理12日目に卵胞の状態を確認していました。10 カ月目に、遅いながら25日目に自然排卵しました(それまでは一度 も自然排卵したことはありません)。それから2カ月後、12日目に 診察すると排卵後ということでした。それ以降、排卵は起こらず、病 院は転院をすすめてきました。今後、薬による治療で自然排卵し、 妊娠できる可能性はありますか?

■これまでの治療データ

検査・ 治療歴

5年前に生理不順で大学病院を受診。
血液検査と内診を実施 し、FSHが100の高値と判明。
プレマリン®とプロベラ®で 生理を起こしていた。

不妊の原因 となる病名

FSHの値が高い。

現在の 治療方針

昨年から不妊治療に切り替わり、スタート時はFSH値は50に 下がっていた。
現在、プレマリン®を服用して様子を見ている が、毎周期は排卵せず、医師からは転院をすすめられている。

精子 データ

異常はないとのこと。

FSHの値

最初に受診された時はFSH値が100あったということですが。やはり、これは異常な値といえますか?
吉田先生 これは月経の3日目に測った基礎値でしょうか。そうだとすれば、かなり高い数値といえますね。
まだ 20 代であれば、通常は 10 以下が正常な範囲だと思います。
FSHは卵胞刺激ホルモンといって、卵胞 を成熟させて排卵を起こさせるために重要なホルモンです。
脳下垂体から分泌され、卵巣に働きかけるのですが、このホルモン値が高いということは、卵巣が反応していないということ。
反応しないから、脳が焦って指令を出そうとして、FSHがどんどん増えていくのです。
卵巣機能が低下しているとこのような状態になり、高齢になって更年期が近づいてくるとFSH値は上昇していきます。

POF(早発卵巣不全)

ももひらさんはまだ 20 代ですが。
吉田先生 若い方でも卵巣機能が落ちて、FSHが高値を示す方もいらっしゃいます。
POF(早発卵巣不全)といって、遺伝的な要因やがんなどの化学療法による影響などで卵巣の反応性が悪くなり、ほとんど生理が来なかったり、 40 歳未満で閉経してしまうこともあります。
このような方は、FSHはもちろん、LH(黄体化ホルモン)の値も著しく高値となります。
記載されていませんが、ももひらさんはLHの値も高いのでしょうか。
POFの可能性もありますが、ももひらさ んは初経年齢が 12 歳と一般的です。
POFの場合は初経が 15 ~ 17 歳くらいと、遅い方が多いんですね。
不順ではあるものの生理も来ているようですから、完全なPOFとはいえないのではないでしょうか。

プレマリン ® とプロベラ ®

プレマリン ® とプロベラ ® で生理を起こすようにしていたということですが、これらはどのような薬ですか?
吉田先生 プレマリン ® は卵胞ホルモン(エストロゲン)剤、プロベラ ® は黄体ホルモンの製剤です。
2つの薬でホルモンを補充して、正常な月経のサイクルを作っていたということですね。
一般的にこの治療は、カウフマン療法とい われています。
基礎体温でみると、サイクルは通常だと低温期と高温期の2相に分かれますが、稀発月経など月経に問題がある方はきちんと2相になりません。
そこで、低温期に当たる時期に卵胞ホルモン、高温期に当たる時期に卵胞ホルモンと黄体ホルモンを投与して、規則的なサイクルを人為的に作り出そうというものです。

カフマン療法

カウフマン療法を一度行えば、正常な生理が起こってくるのでしょうか。
吉田先生 その方の状態によって異なってくると思います。
1回で戻る方もいれば、2~3周期続けないと戻らない方も。
ももひらさんの場合は、半年くらいこの治療を行って様子をみていかないと、なかなか正常に排卵していかないかもしれませんね。
治療後、FSHとLHの値を計測しながら、辛抱強く続けていくことになるかと思います。

ホルモン剤の副作用

ホルモン剤を飲み続けることで体に悪い影響はありませんか?
吉田先生 エストロゲン剤を使うホルモン補充療法は更年期障害の治療にも使われていますが、その場合、症状が重い方は何年も飲み続けることがあるので、乳がんや子宮体がんのリスクが高まるのではないかということを懸念する意見もありました。
しかし、それほど長期にわたる使用でなければ、体への影響はほとんどないと思います。
副作用としては、プレマリン ® の場合はむくみなど、プロベラ ® など黄体ホルモン剤は服用すると頭痛や吐き気を訴える方も時々いらっしゃいますが、それらは一時的なもので、服用をやめればすぐになくなります。
どうしても合わないという場合は、同じ黄体ホルモン剤でも種類はたくさんあるので、合うものに変えていくことができます。
ですから、治療で使用する薬に関しては、医師の指示通りに服用していれば、心配されることはないと思いますね。

状況に応じて治療

現在は不妊治療に切り替えて、プレマリン ®を飲んで様子を見ているということです。
吉田先生 現在飲まれているプレマリン ®は、もう少し卵胞を育てていこうという目的で使われているのだと思います。
このような治療法もあるかと思いますが、当院ではあまり行っていないですね。
卵胞を育てて排卵を起こしていこうという ことであれば、まずはクロミッド ® など、内服の排卵誘発剤を試されてみてはいかがでしょうか。
1錠飲んで変わらなければ、2錠にしてみるなど、薬の量を増やして様子を見ていきます。
それで反応しなければ、注射を足していくという方法もありますね。
もしくは、FSHが高いので、スプレキュ ア ® などのようなお薬を使ってダウンレギュレーションしてFSHの分泌をぐっと抑え、注射で卵巣が反応するように持っていくなど、他にもいくつか方法はあると思います。
FSH値が高いからといって、必ずしも卵 巣が反応しないというわけではありません。
内服や注射の排卵誘発剤を使えばちゃんと反応する方もいらっしゃいます。
ももひらさんは、毎周期ではないけれど排卵があるということですから、薬による治療で十分期待が持てるのでは。
さまざまな方法を試し、排卵していくようになれば、タイミング法から半年程度の期間で治療をステップアップされていくのがよいのではないかと思います。
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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。