「ルトラール®」「デュファストン®」

黄体ホルモンによる 引きつるような右下腹部痛。

不妊の原因でしょうか?

体外受精には、黄体ホルモン剤は欠かせない存在ですが、 痛みなどの不調に悩まされることもあります。

幸の鳥レディスクリニックの ささ山高宏先生に伺いました。

この薬が知りたい

●ルトラール ®とデュファストン ®

経口黄体ホルモン剤。両者 の黄体補充効果に差はない と考えられる。たとえばルト ラール ® を使用して月経前緊 張症候群の症状が出てしまっ た場合に、デュファストン ® に 替えると症状が軽減するこ とがある。
あんパンさん(39歳)からの投稿 Q. 今回は、2回目のホルモン周期で体外受精に挑んでいます。前回はプ レマリン®とプロゲステロン注射のみだったのですが、皮膚アレルギー が出たため、今回はプレマリン®をエストラーナ®に変更しました。 昨年、流産をしてから、毎回、排卵日2~3日後より、右の卵巣と腸のあ たりが引きつるように痛みます。プロゲステロン注射をすると痛みが始 まり、高温期中のみ、定期的に続きます。腹腔鏡検査をしましたが、子宮内膜症は見つからず、右の腸に少し癒着があり、少しだけ剥がしました が全部は剥がせていないということでした。痛みは続き、肛門の奥に響 くような激痛もあります。先生に聞いても回答が得られないのですが、 これが不妊原因なのでしょうか?

■これまでの治療データ

投薬・ 治療歴

2012年2月にタイミング療法を開始。
2カ月後に妊娠 するも自然流産。
その後、タイミング療法を続け、AIHを3 回するも失敗に終わり、現在別の病院で体外受精に挑む。
3月に腹腔鏡検査をしたが、子宮内膜症は見つからず。

不妊の原因 となる病名

子宮内膜症の疑い?

現在の 治療方針

IVF カウフマン療法

精子 データ

運動率70%、
精子検査異常なし。

プロゲストロンと痛み

あんパンさんはプロゲステロンの注射を打つと、定期的に高温期中のみ、右下の腹部に痛みが続くようです。この痛みについて、どう思われますか?
ささ山先生 まず、黄体ホルモン(プロゲステロン)とは、排卵後、卵胞から変化した黄体から分泌されます。
そして、子宮内膜の環境を充実させ、受精卵が着床しやすい状態にします。
この期間は体温が上昇する高温期(黄体期)です。
さらに、着床後も分泌が続き、妊娠を維持する働きをします。
この黄体期は、体や精神面が不安定になる 時期です。
黄体ホルモンの影響でイライラしたり、気持ちが不安定になったり、便秘や下腹部痛、腹痛などの症状が出ることがあります。
それがひどくなると、月経前緊張症候群として生活に支障が出る場合もあります。
月経前緊張症候群は、イライラや憂うつ、落ち着かない、のぼせなどの症状のほか、頭痛や乳房痛、下腹部膨満感、便秘、下痢、下腹部痛、腹痛などの症状があります。
あんパンさんは、プロゲステロンの注射を 打ち出すとその症状が始まり、高温期中のみ続くことから、黄体ホルモンの注射による月経前緊張症状だと考えられます。

黄体ホルモンについて

そもそも黄体ホルモン剤は、どのような目的で使用されるのでしょうか?   また、どん な種類がありますか?
ささ山先生 卵胞は、排卵が起こると黄体に変わって、それまで分泌していた卵胞ホルモン(エストロゲン)とともに、黄体ホルモン(プロゲステロン)を分泌し始めます。
黄体ホルモンは、温熱中枢を刺激して体温を上昇させ、通常排卵後に卵胞から変化した黄体から自然に分泌されますが、この黄体ホルモンが十分に出ていないと、子宮内膜が分泌像を示すことができず、着床できなかったり、流産の原因になったりします。
この状態を、黄体機能不全といいます。
また、黄体ホルモンは着床後も分泌が続き、妊娠を維持するために働きます。
黄体機能不全かどうかは、基礎体温の高温 相の長さや変化を観察し、高温期の血中黄体ホルモンの値を測定し、子宮内膜の組織検査による日付診等によって診断します。
また超音波検査により、内膜の厚さを測定して十分に発育しているかどうかを診断します。
そして、黄体機能不全などで黄体ホルモン の分泌が悪い場合は、プロゲステロンを補充する目的で黄体ホルモン製剤を使用します。
黄体ホルモン製剤には、ルトラール ® 、デュファストン ® などの飲み薬、プロゲデポー ® 、プロゲホルモン ® などの注射のほか、腟坐薬など、さまざまなタイプがあります。
タイミング療法や人工授精の場合は、通常、内服薬を使用します。
体外受精による胚移植の場合は、これらを医師の判断で組み合わせて使います。
黄体ホルモンの投与は、腟坐薬より注射のほうが効果が高いといわれることもあるようです。
当院では、内服薬と腟坐薬の組み合わせを基本にしていますが、効果の差は感じられません。
注射は自分ですることができず、通院の手 間がかかるため、当院では腟坐薬の挿入が苦手な方や、かゆみが出るという方に注射を使用しています。

腹痛と癒着

あんパンさんの腹痛と癒着の関連性、そして今後の不妊治療への影響は考えられますか?
ささ山先生 あんパンさんは腹腔鏡検査で子宮内膜症が見つからなかったようですが、右の腸辺りに癒着があったとのことですね。
流産した頃の何らかの炎症性の癒着である可能性が高いと思います。
黄体ホルモンは腸にも影響しますので、黄体期に癒着のある右の腸管あたりに、特に痛みが出るのではないでしょうか。
腹腔鏡検査で子宮内膜症などの異常所見は なかったようですので、癒着が直接の不妊原因とは考えにくいと思います。
現在治療中の体外受精の妊娠率には影響しません。
彼女の場合は、以前に流産はしましたが、タイミング治療において自然周期で妊娠しているので、基本的に黄体機能不全ではない可能性がありますね。
ホルモン補充周期による凍結融解胚の移植で痛みがかなりつらいようであれば、自然周期で移植することも考慮していいと思います。
ホルモン補充周期で凍結融解胚を移植する場合、自分の体から黄体ホルモンが出るわけではないので、どうしても黄体ホルモンをしっかり補充しないといけません。
それによって、あんパンさんは月経前緊張症状の痛みが出たのだと思いますよ。
ただ、不妊治療とは別に、痛みが続くようであれば、再度の腹腔鏡下できちんとした癒着剥離手術を行うことをすすめます。
主治医の先生とよく相談してくださいね。
1日も早く妊娠されるよう願っています。
ささ山高宏 先生 産業医科大学医学部医学科卒業。産業医科大学病院、和歌山労災 病院、九州労災病院、セントマザー産婦人科医院の勤務を経て、1997 年4月、幸の鳥レディスクリニックを開業。患者さん一人ひとりを大事に する姿勢で生殖医療に携わる。A型・おひつじ座。好きなキャラクター をお聞きすると、「人生の旅人、スナフキン」と先生。ムーミン谷に登場す る、自由と孤独を愛するスナフキンの人生哲学に憧れ、ストラップやカッ プ、ボールペン、ポーチ、箸置きなどのグッズを収集するお茶目な一面も。
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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。