多嚢胞性卵巣症候群の治療

卵胞がなかなか育ちません。同じ治療のくり返しでいつか妊娠できますか?

渡辺 浩彦 先生 滋賀医科大学卒業後、京都大学医学部附属病院産婦人科、大津赤十 字病院、済生会茨木病院などを経て、1971年から不妊治療を行っている 父親の病院を継承。不妊治療から分娩まで手掛け、365日24時間の診 療体制をとる。O型・おとめ座。先日、卵巣予備能が低下した患者に対する 治療方法について学会で発表したところ、反響が大きかったという先生。自 身の豊富な診療経験に基づくデータにも説得力があったよう。「今後もあら ゆる治療法について研究を続けていきたいですね」。
ちいぶうさん(25歳)からの相談 Q. 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と診断され、クロミッド®3錠でも効かずに注射になり ました。HMG注射をすると少し時間はかかりますが、卵胞は育っています。ですが、 HCG注射を4回してもなかなか排卵せず、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)になってし まいました。体温は上がり、ルトラール®を飲みましたが、生理が来てリセット。今周期は 弱い注射に替えて、卵胞が育ったらHCGを注射しました。OHSSになりましたが、体 温が上がり、子宮内膜も厚くなっていたようで、またルトラール®を飲みました。 2週間後に生理が来てしまったので、また注射になるのですが、このままの方法でいい のでしょうか? 卵胞は育ちますが、排卵までに時間がかかりすぎて、何度も内診しなく てはいけないので大変です。注射に通うのは可能ですが、同じことをくり返していれば いつか妊娠できるのでしょうか?

PCOSは不妊原因?

同じ治療をくり返すことに不安なようです。
渡辺先生 不妊治療を行う患者さんのうち、PCOSの方の割合は1~2割といわれています。
最近の傾向として、PCOSによって排卵障害を起こす方の特徴は、従来いわれてきたような肥満や多毛というタイプはそれほど多くないんです。
特徴的なのは生理が始まった当初から生理不順ということ。年齢の若い患者さんが多いです。
PCOSは実際にどういう点が問題かとい うと、卵巣の表面の皮が硬く、卵胞はたくさんあるけれども、卵子が育ちにくい、排卵しにくいということです。
その結果、排卵まで日にちがかかる、なかなか排卵しない、無排卵といった症状につながります。
しかし、PCOSは不妊の決定的要因では ありません。
たまたま排卵の時期にタイミングが合えば、治療を受けずに自然妊娠できる方も大勢おられます。
けれどもきちんと排卵する人よりもチャンスが少ない、あるいはわかりにくいという点で大きく不利なのです。

PCOSの治療段階

なるほど。クロミッド ® の内服や注射のほか、どんな治療法がありますか?
渡辺先生 不妊治療にステップアップという概念があるように、PCOSにも治療の段階があります。
ちいぶうさんのような中程度以上のPCOSですと、まずは2カ月間ほどカウフマン療法で人工的に低温期、高温期を作ってホルモンのアンバランスを補正します。
FSHが低く、LHが高いという状態をなるべくなくしていくのです。
そして3カ月目に入った頃、クロミッド ®1錠とプレドニン ®5㎎というふうに、クロミッド ® とプレドニン ® を組み合わせて処方します。

投与量の変更や、他の治療法

クロミッド ® だけでなく、プレドニン ® も一緒に服用するとよいのですか?
渡辺先生 クロミッド ® 単独で処方される施設も多いようですが、クロミッド ® 、プレドニン ® の組み合わせがまず第一選択だと思います。
クロミッド ®1錠を通常5日間服用し、それで卵胞が育たなければ、二段投与といってもう4、5日内服を続けます。
それでも育たない場合はクロミッド ® を2錠に、それでもダメなら2錠で二段投与と、いろいろ試してみるのがいいと思います。
クロミッド ® の量を増やしてある程度まで卵胞を育てたら、あとはHMGの注射で成熟させます。
HCG4回とありますが1回で十分でしょう。
また、GnRHアゴニストで排卵させるほうが、より生理的な排卵に近く、卵巣が腫れにくいですね。
内服や注射でうまくいかない場合は、最後 の手段として腹腔鏡下で卵巣の表面をレーザーで焼灼し、卵巣の皮を薄くして排卵しやすくする方法も。
自然妊娠も期待できますが、効果は一時的なので、手術後は体外受精へ進んだほうが妊娠率も高まると思います。
PCOSは患者さんによって程度がさまざ まなので、根気よくいろいろな方法を試してみる必要があると思います。
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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。