初期胚、2日目で6分割は正常な分割スピード?

特集1 胚移植の ギモン&不安

受精卵の分割スピードは、胚のグレードや胚移植に どのような影響があるのでしょうか。

クリニックママの古井憲司先生にお話を伺いました。

古井 憲司 先生 1986年日本医科大学卒業。1年間の研修医を経て、 1987年名古屋大学産婦人科学教室入局。名古屋大学産 婦人科では文部教官を務める。さらにその後、大垣市民病院 産婦人科医長を経て、1998年クリニックママを開院。A型・ やぎ座。地産地消の体に優しい料理が自慢の、同クリニック内 のレストラン・厨房スタッフによる創作メニュー“大垣ラブコロ 21”は、地元のご当地グルメイベントで見事優勝! 雑誌『ソトコ ト(』木楽舎)でも紹介されたそう。

ココがポイント

胚の分割スピードについて

●速いよりも遅いほうが問題
●初期胚は胚盤胞に比べて見極めが難しい
●グレードがよくてもダメな場合も
●心配し過ぎないことも大切
 gats1976さん( 37 歳) Q. 今回、初期胚移植をしてきました。2日目の、グレード2の6分割と言われました。受精卵の分割スピードでは、2日目は4分割が標準と聞きますが、速い分割はいいのかと思い調べてみると、速い場合、染色体異常などの可能性や、決していいわけではないとのこと。病院では、朝 11 時に採卵し、2日目の 11 時半頃に移植。その間、 48 時間で すが、実際、受精時間が速かったのか遅かったのかでもスピードの判断は難しいと思います。48 時間で6分割は正常範囲内な のか、もし受精時間まで 10 時間 かかり、移植時点で 38 時間だったとしたら、6分割は速すぎるのかなど、教えてください。

2日目で4分割以上なら 正常範囲

gats1976さんが質問内容でも書かれている通り、受精後2日目であれば4分割が一般的ですので、6分割ですと、やはり少し速い分割速度だといえます。
分割期の胚の良し悪しを判断する 基準には、昔からビーク分類がありますが、ビーク分類では、受精卵の分割スピードは加味されていません。
あくまでも、割球の大小不同とフラグメンテーションの有無など、見た目の特徴から胚のグレード(質)を分類する方法です。
しかし、今回の質問にもあるよう に、2日目で6分割の胚もあれば、3日目で4分割の胚もあり、受精卵によって分割速度もさまざまです。
私は、そのあたりを加味せずに受精卵の評価をすることは難しいのではないかと考え、当院では、古井の頭文字Fをつけた「Fスコア」という、オリジナルの評価法で3日目の胚を評価しています。
これは、Day3の胚の質をスコ アリングしたもので、3日目で7分割以上なら3点、あとは割球の大小不同があるかないか、フラグメンテーションの割合が多いか少ないかで点数を加算していき、5点満点で評価する方法です。この評価法は論文にもしており、学会でも何度か発表しました。
Fスコアは、あくまでもDay3 胚の評価法なので、2日目の胚の評価に関しては参考程度にしかなりませんが、それでもやはり受精卵のひとつひとつを受精から観察した結果、2日目は4分割、3日目は8分割が一番良いと思われます。
また、3日目で7分割と8分割で はそんなに大差はありませんが、 10分割とか 12 分割になってくると胚盤胞到達率が少し下がるような印象があります。
しかし、スピードが速すぎて問題があるということはあまりなく、むしろ遅い方が良くないと思っています。
当院の検討では、3日目で7分割 以上であれば胚盤胞到達率が8割くらい、6分割ですと6割くらいというデータが出ています。
さらに4分割では3割くらいまで低下します。
つまり、速過ぎるからダメだということは、あまり考えなくてもいいと思います。
gats1976さんは、2日目 で6分割であることをご心配されていますが、2日目で4分割以上であれば、問題ない範囲ではないでしょうか。
3分割であっても、その日のうちに4分割になる過程の可能性もありますので、2日目で3分割までは大丈夫だと思います。
しかしDay2で2分割となると、厳しいという印象がありますね。

あまり心配しすぎず 穏やかな気持ちで治療を

gats1976さんは、実際に受精した時間によっても分割スピードの判断が難しいのではないかとも考えていらっしゃるようですね。
受精から移植までの時間など、細かな部分まで心配されるお気持ちはわかります。
しかし、心配し過ぎることは、精神衛生上も良くありません。
初期胚でどんなにグレードが良く ても、また胚盤胞まで到達したとしても、妊娠に至らないケースはいくらでもあります。
受精時間や分割スピードなど、あまり仔細なことにこだわり過ぎなくてもいいのではないでしょうか。
穏やかな気持ちで過ごすことも、治療中には大切なことだと思います。

胚盤胞での移植も検討してみては

それと、初期胚で胚移植されたということですが、当院では、基本的に胚盤胞での移植を行っていますので、全てのDay3胚について胚盤胞到達率を検討しています。
今回のような初期胚移植では良好胚の選別が難しいのは確かです。
たとえば、Day3で8セルでフ ラグメンテーションが5%以下で、非常にピカピカの良い卵なのに、桑実胚で分割が止まってしまい、胚盤胞まで至らないということもいくらでもあります。
つまり、Day3でグレードがとても良くても、それが胚盤胞まで到達する確率は100%ではないのです。
要するに、妊娠し易い胚を見極めるには、Day2、Day3の初期胚のほうが胚盤胞よりもずっと難しいのです。
もちろん、胚盤胞移植にも賛否両 論はあります。体外で長く培養することによる問題点も一部で言われていますが、それについての一定の結論は今のところ出ていません。
そのような考えのもと、大切な胚 の選別を誤らないためにも、当院では胚盤胞移植をファーストチョイスにしています。
gats1976さんに主治医の先生が今回、初期胚移植を選択したのは、これまでの治療歴や胚の状態などから判断した結果と思われますが、胚盤胞移植も、一度、先生に相談されてみてはいかがでしょうか。
※フラグメンテーション:受精卵の不規則な細胞分裂によって生じる、細胞の破片のようなもの
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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。