初期胚のほうが良好でも二段階胚移植は有効?

特集1 胚移植の ギモン&不安

初期胚を移植し、次に移植する胚盤胞の着床率を高める二段階胚移植

胚盤胞より初期胚のほうが状態がいい場合にも有効なのでしょうか?

幸の鳥レディスクリニックの ささ山高宏先生にお話を伺いました。

ささ山 高宏 先生 産業医科大学医学部医学科卒業。産業医科大学 病院、和歌山労災病院、九州労災病院、セントマザー 産婦人科医院の勤務を経て、1997年4月、幸の鳥 レディスクリニックを開業。患者さん一人ひとりを大事 にする姿勢で生殖医療に携わる。A型・おひつじ座。 オフで尾道へ出掛けた時に立ち寄った際、レトロな雰 囲気のある洋菓子店「おやつとやまねこ」で見つけた という尾道プリン。取材スタッフもおすそわけをいただ きました。レモンシロップをかけると、風味豊かな味わい に。堅焼きビスケットのビスコッティも先生おすすめ。

ココがポイント

二段階胚移植について

○後に移植した胚盤胞の着床率アップ
○初期胚は胚盤胞の邪魔はしない
○多胎妊娠のリスクが上昇
ぴのこさん( 28 歳) Q. 2分割の初期胚1個、6日目胚盤胞1個を凍結しました。初期胚のほうがいい状態で、胚盤胞は移植しても妊娠する確率は少ないかもしれないが、なかなか妊娠しないので二段階胚移植に挑戦してみては?とのこと。二段階胚移植は、最初に戻す初期胚で子宮に信号を送って環境を整え、その後にいい胚盤胞を移植する方法ですよね。初期胚のほうが状態がいい私の場合、有効なのでしょうか?着床する力のあった初期胚を、後で移植する胚盤胞が邪魔するのではと不安です。

二段階胚移植は 胚盤胞の着床率を アップさせる方法

二段階胚移植法は、良好な形態の胚をくり返し移植しても妊娠に至らないような方に対して試すことがあります。
 そもそも、精子と卵子は、卵管内 で受精して、子宮内へ移動する数日間に、胚由来の因子で母体に働きかけます。
そして、子宮内膜と胚のクロストークが起こり、子宮内膜が胚を受容できる状態に変化したりしながら、免疫学的には半異物である胚に対する免疫的寛容が誘導されて、胚が無事に着床していきます。
一方、体外受精での胚盤胞移植で は、胚を母体から5日以上離して育てるため、子宮内膜の胚受容能が不十分となる可能性があります。
そこで、二段階胚移植では、採卵の2〜3日後に初期胚を移植し、その胚によって子宮内膜の胚受容能を誘導します。
その後、5〜6日目に体外で培養させた胚盤胞を移植し、胚盤胞の着床率が上がるようにするという方法です。
ですから、良好な胚盤胞でもなかなか妊娠できない、胚盤胞移植の反復不成功例にあたる方が適応ということになります。

妊娠率は上がるが 多胎妊娠のリスクも

このように二段階胚移植では、最初に1個、その後にもう1個と、合計2個の胚を移植します。
ただし現在では、日本生殖医学会や日本産科婦人科学会で、移植する個数については年齢や移植回数によりますが、可能な限り少なくするように(1〜2個)決められています。
移植する個数が多ければ、妊娠率 は確かに上がります。
しかし、その反動として、多胎妊娠の可能性のリスクが上昇することも理解しておく必要があります。
二段階胚移植によって移植した胚が2個とも着床し、そのうち1個が一卵性双生児となり、その後の妊娠・分娩管理に苦労した症例を聞いたことがあります。
2個移植すれば、当然妊娠率は上がりますが、双子ならまだしも、三つ子となりうる可能性も高まってしまいますからね。
私はかつて産科を行っていた経験 から、産科への責任、早産などの赤ちゃんへの影響などを考慮し、妊娠率を上げることだけでなく、無事に出産してもらうことまでを第一に治療にあたっています。
ですから、原則、1個1移植を心掛けています。
患者さんの年齢的なこともあり、どうしてもという場合は、その限りではありません。
今回、ぴのこさんの治療歴がよくわかりませんが、良好胚盤胞をくり返し移植しても妊娠していない状態であれば、二段階胚移植の適応だと思います。
しかし、良好胚盤胞が得られないのであれば、卵巣の刺激法を変えたり、培養液を工夫するなどで、良好胚盤胞を獲得することが先決だと思います。
重度の形態不良胚であれば意味は ないかもしれませんが、これまで申し上げてきた通り、単独の移植よりも二段階胚移植のほうが胚盤胞の着床率が高まります。
良好な初期胚がそのまま着床する可能性も十分あり、妊娠率は上がると思います。
ぴのこさんが心配されている「初期胚が2回目に移植した胚盤胞によって邪魔されないか?」という点ですが、胚盤胞の移植は、初期胚を移植した場所より子宮腔の少し下方に移植します。
よっぽど乱暴な移植をしない限り、初期胚の着床を邪魔することはないと思います。

多胎のリスクを回避 卵1個移植するSEET法

ぴのこさんは「、初期胚のほうが状 態がよく、信号を出すためにその初期胚を移植するのはもったいないのでは?」と、現在の凍結胚移植に不安があるようですね。
その場合、良好な初期胚を解凍後 に長期培養し、胚盤胞に達したところで再凍結します。
その際に、培養液を別に凍結しておきます。
凍結融解胚移植周期に、凍結していた培養液を子宮内に移植し、その2〜3日後に凍結胚盤胞を移植します。
先行移植する胚培養液によって、二段階胚胚移植の初期胚と同じ効果を期待するSEET法(子宮内膜刺激胚移植法)という方法です。
SEET法は、二段階胚移植の2 個目の胚盤胞移植と同じタイミングで凍結融解胚盤胞を1個移植するもので、妊娠率は上昇しますが、多胎のリスクを回避しつつ、二段階胚移植と同様の着床の促進を期待するものです。
ただし、凍結初期胚が、凍結後の長期培養で胚盤胞まで育たず、キャンセルになる可能性もあります。
 基本的には私は、凍結受精卵だと あまり二段階胚移植はせず、SEET法を使います。しかし、フレッシュな場合、卵が2個しかなく、今まで胚盤胞まで育っていなければ、キャンセルを防ぐために二段階胚移植を行うことがあります。
いずれにしても、ぴのこさん はまだ若いし、胚盤胞ができるのですから、あまり焦らずに、担当の先生に自分の気持ちや考えをしっかり話して、治療を進めてくださいね。

 

 

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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。