チョコレートのう胞がありこのまま体外受精を進めるか手術を受けるか悩んでいます

子宮内膜症の手術をしたほうがいいか、 それとも不妊治療をこのまま進めたほうがいいか。 幸の鳥レディスクリニックの 山先生にお話を伺いました。

ささ山 高宏 先生 産業医科大学医学部医学科卒業。産業医科大学 病院、和歌山労災病院、九州労災病院、セントマザー 産婦人科医院の勤務を経て、1997年4月、幸の鳥 レディスクリニックを開業。患者さん一人ひとりを大 事にする姿勢で生殖医療に携わる。A型・おひつじ座。いつも取材陣におやつ を用意してくださる優しい先生。今回はたこ焼きかと思いきや、実はシュークリーム! また今回は、サンフレッチェ広島の優勝直後の取材だったため、熱烈なファンで ある先生は、診察衣の下のTシャツも紫、時計も紫と、サンフレッチェカラー一色! なんと靴下まで紫。先生のおちゃめで楽しい一面をたくさん見せていただきました。

ドクターアドバイス

卵子の質は悪くない
体外受精を続けてもいいが将来的には治療が必要
まるさん(29歳)からの投稿 Q.不妊治療期間は2年。人工授精を6回行い、その後体外受精で胚移植をして 2回妊娠しましたが、いずれも稽留流産でした。流産手術後の今年1月、※ ョ コレートのう胞ができてしまいました。今は約3×4.5㎝の大きさです。腹腔鏡 手術を考えていますが、AMHの値が1とかなり卵巣年齢が高く、手術による 卵巣機能低下を恐れています。他の病院では、アルコール固定法をすすめら れています。 このまま体外受精を進めていくべきか、それとも何らかのチョコレートのう胞 の治療をするべきか。今後どうしたらいいでしょうか。

これまでの治療データ

検査・ 治療歴

不妊治療歴2年。
子宮卵管造影検査は正常。
AMH値:1。
不育症検査待ち。

不妊の原因となる病名

卵巣機能低下、子宮内膜症

現在の 治療方針

マイルド法でクロミフェンを生理3日目頃から5日間服用。
そ の後、HMG4回、HCG1回。排卵数は7個、うち1個移植し、 2個胚盤胞を凍結。
2回流産したため、不育症検査待ち。

精子 データ

精液量:2.3mL
精子運動率:55%
正常形態精子:25.6%
精子濃度:129×100万/mL

治療経過から考える

まずは、まるさんの治療経過を踏まえてどう思われますか?
ささ山先生 今までの治療についてですが、まるさんはクロミフェンとHMG製剤を併用したマイルドな刺激で7個採卵できています。
また、ゴナドトロピンへの反応も悪くなく、採卵数も適当だと思います。
受精卵の受精率や分割率はわかりませんが、7個のうち1個、新鮮胚移植をし、2個の胚盤胞凍結ができていることから、卵子の質も悪くないと考えられます。
そして、2回の胚移植で、週数はわかりませんが、2回とも流産していますね。ということは、2回の移植で、着床障害もなく、2回とも妊娠しているということです。
よって、体外受精としては成功例といえるでしょう。

AMHと卵質

まるさんはAMHの値が1で、卵巣年齢が高いことも気にされていますが、いかがでしょうか?
ささ山先生 最近は、マスコミなどで卵子の老化について報じられることが多くなったためか、以前より質問されることが多くなりました。
AMHの値を測ることで、排卵誘発剤による卵巣刺激で、発育を開始できる卵胞が卵巣内にどのくらいあるかを予測することができます。
そのため、卵巣刺激の方法を決定する際にも、参考になると考えられています。
しかし、年齢に比べて卵巣機能が早く低下し、AMHの値が低いからといって、必ずしも卵子の質が低いとは限らないので、安心してください。
確かに、加齢とともにAMH値が低くなり、高齢の方ほど卵子の質が低下している傾向にありますので、一見、関係があるように見えます。
しかし、直接の相関はないと考えられています。
AMHの数値は卵子の質を表しているのではありません。
一つの目安です。
大事なのは、このデータをどう治療に反映させるかということなので、数値だけで一喜一憂するのは精神的にもよくないと思います。
まるさんより若くてAMH値が低い方でも、体外受精で妊娠できるケースが十分にありますからね。
また、子宮内膜症の方の場合、卵子の質が悪いこともめずらしくありません。
しかし、まるさんの場合は、移植できる胚盤胞があり、さらに2個凍結できたことを考えると、AMHが1であったとしても、卵子の質については大丈夫だといえるでしょう。

チョコレート嚢胞の対処法

なるほど。では本題ですが、まるさんのチョコレートのう胞の手術方法についてはいかがですか?
ささ山先生 チョコレートのう胞は「淡明細胞腺がん」という、卵巣がんを発生することがあります。
まるさんは片側卵巣のチョコレートのう胞ですから、手術による卵巣予備能低下も極端ではないと思いますので、腹腔鏡手術をしてもいいと思います。
腹腔鏡手術には、のう胞を核出する方法と、のう胞内容を吸引し、のう胞の内壁をレーザーなどで焼く方法があります。
病変部分を焼く方法であれば、卵巣予備能低下の心配はそれほどありません。
アルコール固定法は、経腟エコーでのう胞の位置を見ながら、腟からのう胞に針を刺し、内容液を吸引後にアルコールを注入して、病巣を変性させる方法です。
腹腔鏡手術より再発率は高いですが、卵巣予備能にも影響せず、即効性が期待できます。

今後の治療法

手術をせずに、不妊治療を進めるというのはいかがでしょうか?
ささ山先生 注意深くエコーやMRIなどでチョコレートのう胞を経過観察しながら、体外受精を続けてもいいと思います。
しかしながら、将来的には、先に話した腹腔鏡かアルコール固定法による治療が必要になります。
手術をしても次の周期には、不妊治療が可能ですよ。
手術後に何カ月も治療ができないというわけではありませんから、担当の先生としっかり話をして方針を決めましょう。
いずれにしても、早い段階で体外受精に再チャレンジすること。
そして、凍結胚を数個ストックしておくこと。
それが、まるさんがお母さんになれる近道だと思います。
また、まるさんの場合、これまでマイルド法で7個採卵できて、いい胚盤胞が育っているようなので、この方法が合っているのかもしれませんね。
卵巣刺激法にも相性があるからね。
あえて言うなら、別の方法としてショート法やアンタゴニスト法などで、もっと強めに刺激を与えてもいいかもしれません。
年齢が 40 代の場合なら、状況にもよりますが、内膜症の手術よりも、より刺激を与えて体外受精を優先させるでしょうね。
ただ、先にも言ったように、卵子の質について今は大丈夫であっても、AMHの数値がもっと下がって早発閉経してしまうこともありうるので、凍結胚をストックしておくことが重要だと思います。
今までの経過から、きっとまるさんがお母さんになれると私は信じていますよ。
※AMH(抗ミュラー管ホルモン):発育卵胞、前胞状卵胞から分泌されるホルモン。血液中のAMHの検査値から卵巣の予備能を知ることができる。ミュラー管抑制因子ともいう
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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。