副作用が少ないはずのクロミフェンでOHSSに。今後の治療は?【医師監修】

【医師監修】奥 裕嗣 先生 1992年愛知医科大学大学院修了。蒲郡市民病院勤務の後、アメリ カに留学。Diamond Institute for Infertility and Menopauseにて体 外受精、顕微授精等、最先端の生殖医療技術を学ぶ。帰国後、 IVF大阪クリニック勤務、IVFなんばクリニック副院長を経て、 2010年レディースクリニック北浜を開院。医学博士、日本産科婦 人科学会専門医、日本生殖医学会生殖医療専門医。医師の家系に 生まれたものの、子どもの頃は獣医が憧れの職業だったという愛犬 家の先生。今も朝晩の愛犬との散歩の時間を大切にしている。最近 は実家で飼い始めたポメラニアンの赤ちゃんにメロメロなのだとか
スノーガールさん(38歳) Q.クロミフェンを使ったタイミング療法で、3回目に卵巣が28㎜まで腫れた ため、低用量ピルで子宮を休ませ、次もクロミフェンを服用して人工授精 をしました。前回、卵巣が腫れたため、人工授精前日の注射はせずに GnRH誘導体製剤(イトレリン点鼻薬 0.15%)を2回使用しました。7 日後に検査したところ、卵巣が53㎜まで腫れました。 現在、経過観察で治療していますが、クロミフェンで腫れる人は少ないと 聞いています。これからの治療はどうしたらいいでしょうか? 3年前に1 年間、クロミッド® でタイミング療法をしていた時は卵巣は腫れず、副作用 は内膜が薄くなるくらいでした。

クロミフェンもデメリットがある

スノーガールさんは、クロミフェンの副作用によってOHSS(卵巣過剰刺激症候群)を発症。これからの治療に不安を感じていらっしゃるようです。
奥先生 クロミフェンに固執する必要はまったくないと思います。
確かにクロミフェンで卵巣が腫れる人は少なく、入院が必要なほど重度のOHSSを発症することは非常に稀ですが、長期で使用すると、子宮内膜が薄くなる、頸管粘液が少なくなるなどのリスクは高くなります。
排卵誘発剤を使用しないか、ほかの排卵誘発剤の使用を考えられたほうがいいですね。
また、年齢が 38 歳ということですので、人工授精は3回くらいを目安に、結果が出ない場合は早めに体外受精へステップアップされたほうがいいでしょう。
月経がきちんと 28 日周期であれば、薬剤を使用しないでの人工授精も可能です。

AMHで誘発法を選択する

また、卵巣年齢を測るAMHの検査を希望したところ、血液検査の結果から必要ないと言われたそうですが、これは調べたほうがいいのでしょうか?
奥先生 そうですね。
特に体外受精の場合、卵巣予備能を把握するAMHの検査は必須だと思います。
なぜなら、AMH値によって卵巣が過剰反応するかどうかもわかりますし、何よりその数値から採卵数を一番正確に予測することができるからです。
FSHLHエストロゲンといった、通常の血液検査の値だけではわからないような異常がわかってくることも結構あります。
また注射の量や種類など、排卵誘発の方法を考えるうえで、大きな判断材料になると思いますね。

ステップアップも視野に

排卵誘発の方法など、今後の治療はどのようにすればいいですか。アドバイスをお願いします。
奥先生 たとえば、クロミフェンを2錠飲んでいるのなら、1錠に減量して刺激をマイルドにするとか、クロミフェンの代わりにレトロゾールやセキソビットⓇを使うのもいいでしょう。
レトロゾールはクロミフェンと比べて内膜が薄くならず、頸管粘液も少なくなりません。
効果も同程度ありますので、もし使うのならレトロゾールですね。
セキソビットⓇはクロミフェンより効き目が弱く、卵胞数は増えないのでメリットは少ないかなと思います。
人工授精は3回くらいを目安にし、結果が出なければ体外受精にステップアップするのが望ましいと思います。
体外受精を実施することにより、OHSSの予防も可能で、多胎妊娠のコントロールも可能となります。
刺激法は、ロング法に比べて、アンタゴニスト法はOHSSのリスクが5分の1くらいになるといわれていますので、アンタゴニスト法がいいと思います。
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