太っていると妊娠しづらい?不妊治療とダイエットを並行しても大丈夫ですか?

太っていると、妊娠にどんなリスクがあるのでしょうか? 不妊治療に与える影響や治療中のダイエットについて 久保みずきレディースクリニックの石原先生に伺いました。

石原 尚徳 先生 高知医科大学卒業。神戸大学医学部大学院修了。兵庫県立成人病センター、 兵庫県立こども病院の勤務を経て、2008 年より久保みずきレディースクリ ニック美賀多台診療所副院長。不妊治療から周産期・小児医療まで、地域 に根ざした総合的なサポート態勢が整う同クリニックで、副院長として精力 的に活動する。A 型・さそり座。昨年発売し、好評の同クリニック編著本『あ んしん! ママごはんと赤ちゃんごはん』(保育社)。妊娠~離乳期の食事(ご はん)や、妊娠を目指す人の体づくりにも役立つ情報が満載。オフでは25 年間、理想体重を維持している先生。秘訣は、毎日体重計にのる、体幹ト レーニング、ちょこちょこ動く、朝のヨーグルト。「自分の体に合ったヨーグ ルトは、お通じだけでなく眠りにもいい気がします」。

ドクターアドバイス

◎ 排卵がきちんとあれば問題なし
◎ 肥満は妊娠前より妊娠後のリスクが大きい
◎ 毎日体重を測り、客観的に自分の体をチェック
妊娠希望さん(34歳)Q. 身長168cm、体重 96kg の体型のため夫婦生活が 億劫でしたが、夫と話し合い、子どもをつくるため、 夫婦生活の再開と同時に不妊治療外来を受診しまし た。基礎体温は2相で、血液検査も問題なしとのこと。 エコーで排卵も確認できました。「太っていると妊娠 しづらいのでは?」と先生に聞くと、「下手に減量する と排卵がなくなったりするので、そのままでいい」と 言われました。治療と並行してダイエットするのはよく ないのでしょうか? また、ダイエットするとしたら1カ 月に何kg 落とすのが適正か知りたいです。

これまでの治療データ

■ 現在の治療方針

血液検査とエコーで排卵をみて、 タイミング療法をしている。
タイミング療法で妊娠しない場合は、 6回目で人工授精に移行するといわれている。

■ 精子データ

異常なし

妊娠と肥満

妊娠希望さんの言うように、やはり太っていると、妊娠しにくいのでしょうか?
石原先生 まず、妊娠希望さんのBMIを計算したところ、 34 でした。
BMIが 25 以上だと肥満のカテゴリーに当てはまります。
当院では、この方のレベルの場合、最初に生活習慣病のスクリーニングを行います。
ご自身が気づいていないだけで、実際には高血圧や糖尿病、心臓病、脂質異常症などが潜んでいることもありますから、ひと通りの検査を行ったうえで不妊治療を始めます。
その他の検査でも問題がなく、排卵がきちんとある場合は、妊娠の可能性はあります。
一方、肥満の方にみられることがある多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)などがあって排卵していない場合は、妊娠しにくいこともあります。
それよりも肥満が問題になるのは、妊娠してからです。
肥満のレベルが高ければ高いほど、妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、難産のリスクが高まります。
高齢になるにつれて、そのリスクはさらに上がります。
また、出産後、赤ちゃんの病気や死亡率も高くなります。

ダイエットと排卵

不妊治療とダイエットの並行は問題ないのでしょうか。
石原先生 ダイエットをしながら妊娠を目指されてもいいでしょう。
特に 30 歳を過ぎたら、ダイエットありきではなく、妊娠ありきで考えてほしいと思います。
ただし、急激なダイエットは控えてください。
基本的には1カ月に1㎏のペースでいいのではないでしょうか。
この方の場合は、肥満のレベルが高いので、仮に1カ月2㎏で計算してみましょう。
BMI 34 なので、25 にするには 70 ㎏。
つまり 28 ㎏の減量が必要になります。
すると、2㎏× 14 カ月はかなりのハイペースになるので、ひょっとすると排卵が止まってしまう可能性もあります。
これはおすすめできません。
ちなみに当院は、不妊治療と産科 を併設していますから、妊娠前のダイエットについては厳しく言いませんが、妊娠後は、このレベルの方であれば、赤ちゃんとご本人のリスクを考えて、体重を増やさず、キープしてもらうようにアドバイスしています。
太っている方の場合は、体内に糖質や脂質といった栄養がたっぷりありますので、体重を増やさなくても赤ちゃんは育ちます。
すると、出産を終えたら、逆に7〜 10 ㎏減っていることになります。
つまり、妊娠中に約 10 ㎏のダイエットをしたのと同じことになるので、目標としてはわかりやすいですよね。
おそらく、何㎏までダイエットするという方法よりも、今の体重を維持するほうが、痩せすぎることがなく、赤ちゃんが小さくなる心配も少ないと思います。
肥満の度合いにもよりますが、むしろ、妊娠前に痩せて、妊娠後に太るほうがリスクは高くなる可能性があります。
運動や食事管理で気をつけることはありますか。アドバイスをお願いします。
石原先生 まず、運動によるダイエットは期待しないでください。
妊娠前でも運動はあくまでも補助です。
食事で得られるカロリーを消費するにはかなりの運動量が必要になります。
運動は、軽い有酸素運動で筋肉をつけて脂肪を燃えやすくする、代謝をよくするという意味でおすすめします。
それよりも、食事の量を抑えるほうが減量しやすいと思います。
摂取カロリーより消費カロリーが多ければ、体重は自然と減りますから、消費よりも摂取するなかでコントロールするほうが簡単です。
ただし、りんごだけ食べるなどの単品ダイエットや薬に頼るダイエットはダメです。
糖質制限ダイエットなどもありますが、学会などでは賛否両論あります。
あくまでもバランスが重要ですね。
詳しいダイエット法については専門外ですが、1日に摂取する食事から脂質、糖質を中心に3分の1ずつ減らしてみるのも一案です。
ただし、たんぱく質やビタミンは意識的に摂取してほしいですね。
それから毎日、できれば朝晩2回、体重計にのってください。
そして、グラフに記録して、ご自分の体の状態を客観的に見つめることをおすすめします。
そして2日間をひとくくりに、食べ過ぎたなと思う時は、翌日の量を減らすなどの調整を心掛けるといいと思います。
とはいえ、毎日ダイエットをするとなると大変です。
週に1回は食べたいものをある程度は食べられる「ご褒美の日」を設けておくといいでしょう。
ストレスを溜めず、気持ちにゆとりを持って、治療とともに続けてください。
※生活習慣病:食事や運動習慣、喫煙、飲酒などの生活習慣が、発症や進行に関与する疾患で、糖尿病、脳卒中、脂質異常症、高血圧、肥満、心疾患などがある。
※妊娠高血圧症候群:妊娠中期から分娩後12週まで 高血圧がみられる場合、または、高血圧に蛋白尿を伴う場合で、かつこれらの症状が単なる妊娠の偶発合併症によるものでないもの。重症化すると母子ともに大変危険な状態に陥る。
※妊娠糖尿病:妊娠中にはじめて 見つかった、あるいは発症した糖尿病には至っていない糖代謝異常。妊娠時に診断された糖尿病は含まれない。
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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。