体外受精に進んでも不妊の原因は不明のまま。何かいい方法はありますか?

不妊の原因が不明なまま、治療を続けて2年、3年……。 体外受精に進んでも結果が出ない場合はどうすればいいのか、 とくおかレディースクリニックの徳岡先生にお話を伺いました。

徳岡 晋 先生 防衛医科大学校卒業。同校産婦人科学講座入局。自衛隊中 央病院産婦人科勤務後、防衛医科大学校医学研究科に入学 し、学位(医学博士)取得。2000年より木場公園クリニッ クに勤務。5年間の勤務を経て2005年に独立し、とくおか レディースクリニックを開設。A型・みずがめ座。統計的、経 験的に見て、不妊治療に対してモチベーションが続くのはだい たい15カ月くらいだとか。同クリニックでは患者さんにもそれ を説明し、治療開始から1年半以内の妊娠を目指している。

ドクターアドバイス

◎ 次の採卵では排卵誘発法に少し変化を
◎ サプリは葉酸をプラスしてみては?
◎ 気持ちを切り替えるため転院も選択の一つ
ぽにんさん(36歳)Q.タイミング療法1年、人工授精6回の後、体外受 精にステップアップしました。クロミフェンによる初め ての採卵で卵子が6 個採れ、そのうち5 個が受精。 ①同一周期で新鮮胚を1個移植→化学流産、②自 然周期で凍結胚盤胞 Aグレードを移植→化学流産、 ③自然周期で凍結胚盤胞 Aグレードを移植→化学 流産、④ホルモン補充周期で凍結胚盤胞Bグレー ドを移植→陰性、という結果でした。時間もお金も かけているのに結果が出ず、やりきれません。ほかに いい方法はあるのでしょうか。

これまでの治療データ

■ 検査・治療歴

結婚7年。2009年に自然妊娠するも9週目に流産。
その後、本格的に不妊治療を開始。
2010年からタ イミング療法1年間、通気・通水検査。
2011年4 月に転院し、子宮卵管造影検査後に人工授精6回。
この頃に ※AMH検査も受けたが、値は8.6pM/Lで、 40歳代の卵巣予備能だといわれる。
2011年の後半 に体外受精へステップアップ。
クロミフェンで採卵 1回、新鮮胚移植1回、凍結胚盤胞移植3回行う。

■ 不妊の原因となる病名

異常は見つからず、原因不明。

■ 精子データ

精子濃度:87.244/67.431/69.517
精子運動率:58.76%/34.66%/33.5%
精子直進速度:27.96/21.74/23.30

AMHと染色体異常

体外受精に進んで、移植を4回。5個の受精卵のうち、3個が胚盤胞まで育ち、子宮内膜もしっかり厚くなるとのこと。うまくいかないのは、どのような原因が考えられますか。
徳岡先生 原因の1つとして考えられるのは、卵巣年齢がやや高いということです。
2011年4月に測ったAMHの値が 8.6pM /Lだったそう ですね。
36 歳なら、通常は 21pM /L程度。 8.6 ということは、やはり 40 代 前半くらいの値に相当すると思います。
AMHは、現在の卵巣の予備能をかなり正確に評価できる指標で、この値が低いということは、卵子の数がそれだけ残り少なくなっているということです。
卵子のなかには、染色体異常になるなどのものが 20 〜 30 %、また年齢が高くなれば、この確率も増加します。
数がたくさんあれば、悪いものが出ても、いいものも多いのでそれほど問題はないのですが、全体の数が減ってくると、そのようなダメージを受けている卵子が出る確率が高くなってしまうんですね。
採れる数が少ないうえ、状態がよくない卵子が多いなかで勝負をしなければならないので、当然妊娠は難しくなって
きます。
ただ、ぽにんさんのAMHの値には少し疑問を感じます。
クロミフェンを使って卵巣を刺激して6個卵子が採れたとのこと。
マイルドな方法でそれだけ採れて、受精卵も5個できたのはそれほど悪い結果ではないと思います。
一般的には、AMHはいつ測っても変わらないといわれていますが、私の経験から考えると多少変動することもあるようです。
できれば、Day3など月経周期の早い時期に再度AHM値を測ってみてはいかがでしょうか。
少しでもいい値が出たほうが、治療へのモチベーションも上がると思います。

体外受精のやり方を変えてみる

体外受精を続けることに意味があるのか不安を感じ、人工授精に戻ることも考えていらっしゃいます。
徳岡先生 これまでひと通りステップアップ治療をされてきましたから、また戻るということはあまりおすすめできません。
ぽにんさんの場合はやはり、体外受精をしなければ難しいと思います。
体外受精を続けるなら、次はまた採卵となりますが、今度は排卵誘発の方法を少し変えてみては?
まったく違う方法とまでいかなくても、同じクロミフェンでもそこに注射をプラスして、量も増やしてみるなど、ちょっとしたところを変えてみるのです。
「卵胞の発育が悪くいい周期ではないな」と判断されたら、焦らずにその周期はお休みすることも大切だと思います。
また、受精卵が胚盤胞まで育ってくれれば胚盤胞で戻すことがベストだと思いますが、ご年齢が 35 歳以上なら胚を2個戻すこともできるので、胚盤胞にこだわらず、Day3の胚を2個移植することも選択肢の1つになると思います。
戻す時期については、ぽにんさんは自然周期で移植することが多かったようですが、ホルモン補充周期を第一に考えたほうがいいと思いますね。
経済的には自然周期よりかかってしまいますが、安定した状態で移植することができると思います。

顕微授精も併用するスプリット

顕微授精にトライするという選択肢はありますか。
徳岡先生 精子に特に問題は見られないので、すべてを顕微授精で臨むという必要はないと思います。
体外受精でいいと思いますが、ほかの方法も試してみたいということであれば、5個採れたら3個を顕微授精にして2個を体外受精にするなど、スプリット法を選択してみてもいいかもしれません。
スプリット法は多くの施設で実施しているので、先生にご相談してみてはいかがでしょう。

治療以外に出来ること

ぽにんさんは治療のほかにも、漢方薬、サプリメント、鍼灸なども試されているようです。
徳岡先生 サプリメントや鍼灸に積極的にトライしているのはいいことだと思います。
しかし、経済的な負担が大きいようでしたら、漢方薬は省いてもいいのでは。
サプリメントは続けられると思うので、今摂っているものはそのままで、できれば葉酸をプラスするといいと思います。
ほかにできることはありますか?
徳岡先生 今、ぽにんさんにとって一番問題なのはメンタルだと思います。
治療を続けることに対して気持ちが落ちてきているのではないでしょうか。
落ちた状態で妊娠することは難しいと思うんですね。
精神状態が卵子や受精・着床に影響することもないとはいえないでしょう。
もしかしたら、先生に疑問を感じていませんか?
「病院を変えたほ うがいいのかな」という思いがよぎることがあるのでは?
もし今の治療に不信感を持っているのなら、思い切って病院を変えてみてもいいのではないかと思います。
変えることで「本当にこれでいいのだろうか?」という今の疑問に何らかの結論が出ますよね。
前の先生のほうがよかったと再確認するかもしれないし、変えてよかったと思うかもしれない。
いずれにせよ、気持ちを一度切り替えることができると思います。
まだ卵子はしっかり採れていますから、ぽにんさんには妊娠の望みは十分あります。
治療の選択に加え、自分を妊娠に向けて鼓舞していくということも大切だと思いますよ。
※AMH(抗ミュラー管ホルモン):発育卵胞、前胞状卵胞から分泌されるホルモン。血液中のAMHの検査値から卵巣の予備能を知ることができる。ミュラー管抑制因子ともいう。
※移植胚の個数について:日本産科婦 人科学会では生殖補助医療における多胎妊娠防止のため、生殖補助医療の胚移植において移植する胚は、原則として1個とされている。しかし、35歳以上の女性、または2回以上続けて妊娠不成立であった女性などでは 2個まで胚移植が許容されている。
※スプリット法:採取した卵子を体外受精と顕微授精とに分けて受精卵をつくること。
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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。