【医師監修】吉田 仁秋 先生 獨協医科大学卒業。東北大学医学部産婦人科学教室入局、 不妊・体外受精チーム研究室へ。米国マイアミ大学留学後、 竹田総合病院産婦人科部長、東北公済病院医長を経て、 吉田レディースクリニック開設。来る10月28日、江陽グ ランドホテルにて、ドクターサーチ宮城セミナー「不妊に関 する公開講座」を開催。今年は仙台放送主催で、ゲストの ダイアモンド☆ユカイさんと、男性不妊についてディスカッ ションする予定だとか。詳しくは同院ホームページへ。
まいまいこさん(32歳)Q.タイミング療法、人工授精では一度も陽性反応を見ることがないまま、治 療3年目の今年4月、体外受精にステップアップ。ショート法で2個受精、 初期胚移植するも陰性。そして先週、4月に凍結した初期胚を移植して結 果待ちですが、4月に陰性という結果が出た時点で「原因は卵子の質と着床障害かも!?」という結論に至りました。卵子の質についてはAMH値: 0.68ng/mLという悲惨な結果もあり、できることを頑張るしかないのです が、着床障害については「何か検査できることは?」と医師に尋ねると「な いですね。そもそも胚盤胞まで育たないので、着床ではなく卵子の質の問 題なのでは」と。本当にそうなのでしょうか?
着床不全マーカー
「結果が出ない原因の1つは着床障害なのでは?」と考えているようです。担当の先生は「それを調べる検査はない」とおっしゃっているようですが、本当にないのですか?
吉田先生 ある程度原因を探ることができる検査はあると思います。
当院では、着床不全マーカーという形でいろいろ調べています。
毛細血管などが詰まりやすい因子があると子宮内膜の血管にも影響し、着床を妨げてしまうことがあるんですね。
そのような因子がないかどうか、採血で血液中の抗リン脂質抗体や抗核抗体、抗血小板抗体、凝固第 12 因子などをチェックします。
また、血液検査以外では、超音波で卵巣をみて、子宮動脈の血流がきちんと流れているかどうかをドップラーで確認するという検査も行っています。
卵子の質の問題
やはり、それらの検査を受けたほうがいいのでしょうか。
吉田先生 着床不全は、胚のグレードがいいのに何回か戻しても着床しない、という場合に初めて疑われると思うんですね。
まいまいこさんはそれには当てはまらないケースだと思うので、担当の先生がおっしゃるように、やはり卵子の質のほうに問題があるのかもしれません。
しかし、疑問を残したまま治療を続けるのもよくないと思うので、ご心配なら着床不全の検査を受けてみてはいかがでしょうか。
染色体の異常による着床不全もあるので、併せて染色体の検査も行って、きちんと調べてみるといいと思います。
コンディションを整えてから
今回の移植がうまくいかなかったら、また採卵を考えているそうですが、次はどのような治療方針を立てていったらいいですか?
吉田先生 排卵誘発の方法を変えたほうがいいのではないかと思います。
AMH値が2以下と極端に低いような場合は、ショート法などの刺激を強めに与える方法より、低刺激法のほうが適しています。
数よりも質を優先するように持っていくのです。
卵巣の予備能が低いので、焦る気持ちがあると思いますが、卵子の質を少しでも改善するために、DHEAやL̶カルニチンなどのサプリメントを2〜3カ月摂っていただく。
そうしてコンディションをよくした状態で採卵に臨んでも遅いということはないと思います。
AMH値が0という方でも妊娠されるケースはあるので、焦らずに、妊娠できるという希望を持って治療を続けてほしいと思います。