成熟卵1個あたりのエストラジオールの値が気になります

 

むくけんさん(39歳)Q.ロング法による採卵で顕微授精を行いました。16個採卵しましたが、結果は未 成熟卵が8個と多くなりました。この結果をふまえ、排卵誘発とHCG注射をもっ と強めにしてもらえば、もう少しいい結果が得られたと思うのですが。 また、二段階胚移植の後に妊娠しましたが、9週目に稽留流産。採卵前の卵胞 サイズは最大18㎜くらいで、ホルモン値はエストラジオールが2828でした。 成熟卵1個あたりに必要なエストラジオール値は300~500と聞いたことがあ りますが、私の場合、1個あたり176で個数の割に値が少なすぎるのではと感 じています。

成熟卵とE2の値

「成熟卵1個あたりのエストラジオール値」とは?
浅田先生 むくけんさんは、なかなか深い読みをしていると思います。
通常、成熟卵を1個採るのに必要なエストラジオールの値は200〜300 pg / mL くらいと昔からいわれています。
ただし、それは年齢が若い人の場合。排卵誘発時の採卵前の値が2828 pg / mL というと、たとえば300で割ると、9個か 10 個の成熟卵が採れていい計算になりますよね。
しかし、むくけんさんのように 40 歳前後であったり、AMH値が低い方の採卵には、エストラジオール値が足りないと思います。

採卵のタイミングが勝負

採卵する時期が早すぎる?
浅田先生 そうです。
当院の治療成績を元にした統計データ(表参照)では、たとえば、AMHが5 pM 以下の方では、成熟卵1個あたりのエストラジオール値はだいたい600 pg/ mL を超えています。
200〜300 pg / mL くらいといわれたのは、多くの人が 30 代前半くらいまでに採卵していた頃の話で、 30 代後半になってきたら、1個あたり600pg / mL とか800 pg / mL とか、時には1000 pg / mL くらいの値が必要になるというのが私の持論です。
 16 個採卵しても成熟卵は8個とありますね。
極体があって見た目に成熟卵でも、細胞質が少し未熟なことがあって、それが卵子の成熟を妨げている要因です。
これは、精子が入ってきても次の反応が起こらない未成熟卵です。
多嚢胞性卵巣症候群を心配して早めに採卵してしまう施設や、「卵子の数が多い時は卵子の質が悪い」という医師も多いですが、卵子の数が多くてもきちんと成熟卵になるまで待っていれば、成熟卵の数だけ妊娠率は上がると思います。

年齢による刺激の変化

排卵誘発の刺激の強さについては。
浅田先生 HMGの筋肉注射も、 30代後半で勝負しているのなら、マニュアル通りではちょっと弱いです。
長年、体内で保存されてきた卵子は、食品にたとえるとしっかり塩漬けされた状態。
遺伝子が動かないようにガッチリとガードされています。
それがまた動き始めて発育できるようになるためには、ある程度の刺激の長さと強さが必要だろうと私は考えています。
ただ、注射で卵子の数が調整できるということはあまりありません。
そして、高齢になったら卵胞の見た目の大きさよりも、エストラジオール値の上昇に注目して待つことが大切。
それが卵子の中身の成熟度を表しているのです。
※極体:卵母細胞から卵子ができる過程(減数分裂時)にできる、3つの小さな細胞。核はあるが細胞質をほとんど持たず、自然に退化・消滅する。
※多嚢胞性卵巣症候群(PCOS):卵 巣内にたくさんの小嚢胞があり、排卵がうまくできない原因不明の疾患。慢性的にアンドロゲンの過剰や血液中の黄体化ホルモンが高値(卵胞刺激ホルモン上昇をともなわない)である。
浅田 義正 先生  名古屋大学医学部卒業。1993 年、米国初の体外受精専門 施設に留学し、主に顕微授精を研究。帰国後、日本初の精 巣精子を用いた顕微授精による妊娠例を報告。2004 年、浅 田レディースクリニック開院。2006年、生殖医療専門医認定。 2010 年、浅田レディース名古屋駅前クリニック開院。今年 2 月、NHKの情報番組『クローズアップ現代』で、浅田先生が 以前から訴えてきた「卵子の老化」の問題が大きく取り上げら れた。先生自身も出演。最近、社会的に女性の卵への関心 が高まり始めたことを嬉しく感じているそう。
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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。