「母親の食習慣」が赤ちゃんにも影響するってホント?【医師監修】

妊娠中は喫煙や飲酒はもちろんタブーですが、 妊娠前から食べているものも赤ちゃんの健康に 影響があることを知っていましたか? 女性に必要な栄養素やその摂り方について、 佐藤病院の佐藤先生にお話を伺いました。

【医師監修】佐藤 雄一先生 産科婦人科 舘出張 佐藤病院副院長、高 崎ARTクリニック理事長を務める。不妊治 療では食事や加圧トレーニングを含めた運 動など、生活習慣の改善も重要であると考 え、さまざまな方法を取り入れている。

女性に足りない栄養素は 鉄やカルシウム

妊娠はゴールではなくスタート。

お腹に赤ちゃんが宿ったら、無事に出産することが最終的なゴールです。

元気な赤ちゃんを産むためにはどんな栄養素が必要なのでしょうか。

「今、女性にもっとも足りない栄養素は鉄分だといわれています。

鉄が足りないと全身の血の巡りが悪くなって、貧血や冷え性を引き起こします。

血流が悪いとお腹の赤ちゃんにも栄養が十分に行き届きません。

不妊で悩んでいる女性はもちろん、妊娠中の女性にも意識して摂ってもらいたい栄養素ですね。

それからカルシウムも足りない栄養素のひとつです。

カルシウムは骨のもとになるのはよく知られていますが、ほかに神経や血管をつくるためにも使われます。

また、内臓や筋肉を収縮・拡張させる時にも必要な栄養素。

心臓のポンプ作用や全身を動かすためにはなくてはならないものなんです」(佐藤先生)

健康な赤ちゃんのもととなるカルシウム。

どのくらい摂取すればよいのでしょうか。

豆製品などでヘルシーに カルシウムを摂取しよう

「妊娠中はカルシウムの吸収率が 上がるため、特に多く摂る必要はないとされていますが、普段の摂取量が基準よりかなり下回っている女性が多いので、やはり意識的に摂ることが必要ですね。

カルシウムの食事摂取基準として示されている目安量は、 20 代女性で700㎎、 30 代女性で600㎎。

食品で600㎎を摂るとしたら、たとえば牛乳だったらコップ3杯分です。

牛乳だとカロリーも高く、乳糖も含まれているので、豆類なども取り入れて上手に摂取を。

カルシウムばかりを摂取していると、エネルギーを代謝するために必要な栄養素であるマグネシウムが排泄されてしまいますが、大豆食品なら両方の栄養素が摂れるのでおすすめの食材といえるでしょう」

腸内環境が悪いと 赤ちゃんの免疫力も低下

日ごろから鉄分やカルシウムなど、赤ちゃんに必要な栄養素をしっかり摂ることが大切ですが、それだけでは足りないと佐藤先生は言います。

「いい栄養分を摂ったとしても、それがきちんと腸で吸収されなければ意味がありません。

腸内環境を整えて、栄養の吸収をサポートしてくれるのが乳酸菌などの腸内細菌です。

乳酸菌は栄養の吸収だけではなく、免疫にも関わっており、免疫物質もつくっています。

免疫細胞のうちIgAという細胞は、胎盤や初乳を通してお母さんから赤ちゃんに移行します。

腸内細菌が少なく、免疫細胞があまりつくられないと赤ちゃんの体質にもそれが影響し、アレルギーや疾病にかかりやすくなるとも言われています。

また、腸は〝第二の脳〞とも言われていて、セロトニンという精神の安定や睡眠を左右するホルモンも多く分泌しています。

腸内の状態が悪ければこのホルモンの分泌も滞り、不眠やうつなどを引き起こすことも。

お母さんの精神状態がよくないことは、赤ちゃんにとっても好ましくない環境なのです。

このように腸は大きな役割を持つとても重要な臓器。

妊娠してからではなく、普段から腸内環境を整えておくことが大切です」

腸内の善玉菌を増やす 植物性の発酵食品

腸内の環境を整え、お母さんと赤ちゃんの健康を維持する乳酸菌を増やすためにはどうすればいいのでしょうか。

「もともと腸の中には菌が存在するのですが、そのバランスが崩れてしまっている人が多いんですね。

菌の中には善玉菌、悪玉菌、そして、どちらにもなりうる日和見菌がいます。

偏った食生活を続けていたり、ストレスなどがあると日和見菌が悪玉菌になってしまい、腸内の環境がどんどん悪く
なってしまいます。

ですから、日和見菌を善玉菌のほうに多くつけるように菌数のバランスを整えていくことが重要になってくるかと思います」

善玉菌を増やすためには、ある食品が注目されているとか。

「それは植物性の発酵食品です。

みそやしょうゆ、漬物など、日本人が昔から食べてきた食事に多く含まれているもの。

これらが日本人の腸の環境に非常に適していると言われています。

日和見菌を善玉菌に変え、菌の栄養にもなってくれる。

また、妊娠中はカルシウムが必要だと言いましたが、発酵した乳酸菌がつくり出す乳酸はカルシウムの吸収も助けてくれます。

つまり、豆腐やみそ汁などの和食メニューは理想的。

昔から食卓に並んでいた食事は、健康を維持するために理に適っていたものだったというわけですね。

妊娠前から授乳中まで、お母さんの食生活は赤ちゃんの健康にも大きく影響します。

1つの栄養素だけではなく、偏らずにまんべんなく摂ることも必要です。

また、乳酸菌に関しても、いい腸内環境を保つためには続けることが大切。

毎日バランスのよい食事を摂るように心がけていただきたいですね」

乳酸菌ってなに?

乳酸菌はヨーグルトなどでよく知られていますが、なかで も植物性乳酸菌はみそやしょうゆ、漬物、ワインなどの 発酵食品に含まれる、人になじみのある微生物。近年、 腸内菌数のバランスを改善することによって、人などの動 物に有益な効果をもたらす「生きた乳酸菌やビフィズス 菌」=「プロバイオティクス」が注目されています。

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