排卵前後~生理前に左卵巣痛があり。体外受精の治療に影響は?【医師監修】

【医師監修】絹谷 正之 先生  愛媛大学医学部卒業。広島大学医学部産科婦人科学教室入局。そ の後、東京の山王病院リプロダクションセンターにて高度生殖補助 医療研修、顕微授精を修得。1999 年にはカナダ、アメリカにて高 度生殖補助医療研修を行う。2000 年、絹谷産婦人科副院長、 2002年より院長に。広島県産婦人科医会常務理事。ISO9001や JISART(日本生殖補助医療標準化機関)の認定を2010 年~ 2011年に取得。いつも忙しい日々を送っている院内スタッフのため に、2011年暮れには2年に一度の院内旅行で韓国へ。スタッフに アンケートをとって行き先を決めたのですが、ほぼ全員が参加してく れたことが何より嬉しかったそう。
momo righettiさん(35歳)Q.1年前に両卵管閉塞のため腹腔鏡手術を受けました。その時、両卵巣にチョコレー ト嚢腫が見つかり、左卵巣の嚢腫のみ、ひどかったので摘出しました。人工授 精を2 回しましたが不成功。左卵巣からの排卵で、右の卵胞の育ちがいまひと つのようです。次回は体外受精にステップアップしてみるつもりですが、現在排 卵 3日前~排卵後3日くらいと生理前の3、4日に左卵巣痛があります。これ は体外受精の際、着床や妊娠に至る過程で何か妨げになりますか? 痛みは薬 を飲むほどではなく、シクシクうずく感じです。現在、海外で不妊治療を受けて いますが、再度手術を受けるのであれば帰国しようと思っています。

体外受精への癒着の影響

左の卵巣痛を気にされていますが、治療への影響はありますか?
絹谷先生 主治医によると、 momo righetti さんの左卵巣痛は癒着がひどいための痛みと診断されているようですね。
着床や妊娠に関しては通常、癒着があるだけであれば体外受精への影響はないと考えられます。
ただ、癒着の状態によっては卵子が採取しにくかったり、卵胞がどこかにくっついてしまったりして、治療に支障が出ることがあります。
無事に卵子が採れて受精もできれば、着床や妊娠にはあまり影響はないと思います。
質問内容には書かれていませんが、もしも卵管が水膨れのような状態になる卵管水腫ならば、着床の妨げになることがあります。
この方の場合は、卵管が閉塞していた状態があるようなので、きちんとチェックを受けたほうがいいと思います。

癒着は痛む??

卵巣痛については、どう思われますか?
絹谷先生 やはりこの痛みは癒着が原因なのではないでしょうか。
排卵の頃はどうしても卵巣が大きくなって、骨盤を刺激しますし、腹膜などに癒着していると腸の動きが妨げられるので、その腸の動きにともなって、シクシクとした痛みがあるのかもしれませんね。
妊娠に直接関係はないと思われます。

手術か?体外受精か?の判断

体外受精へのステップアップを望まれているようですが。また、再度手術を受けたほうがいいでしょうか?
絹谷先生 一般的には人工授精は5〜6回試みるのですが、彼女の場合は人工授精をもう一度行ってみることもありだと思いますが、年齢が若干高めなこと、手術の時に癒着がひどかったことなど、卵管や卵巣の状態などを総合的に判断して、少し早めに体外受精へのステップアップを考えてもいいと思います。
彼女の場合、卵巣を部分的に摘出されているので、卵子の数が少なかったり、質が低かったりと卵巣の反応性がよくないかもしれません。
ただし、体外受精は1個の受精卵でも成功する方はいらっしゃいますので、体外受精に進まれるのもいいと思います。
また、彼女の場合、左卵巣の嚢腫を摘出しているので、右卵巣に期待がかかるところですね。
手術に関しては、通常はまず体外受精を優先させていいと思います。
体外受精を何度か試してみて、卵子が採取できないなど問題があれば、手術も考えられるとよいのではないでしょうか。
癒着の場所や程度など検査や診察で主治医は診断されていると思います。
もちろんご本人の年齢なども考慮して、治療を進めていきますので、まずは不安なことや疑問は主治医の先生にきちんと話して、納得いくまで話し合うことが大切だと思いますよ。
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