PCOSこそ自然排卵を促す

ドクターアドバイス

排卵障害を治療すれば、 ほぼ100%排卵できる。 PCOSこそ自然排卵を 促すことが不可欠

田中 温 先生 順天堂大学医学部卒業。越谷市立病院産科医長 時代、診療後ならという条件付きで不妊治療の研 究を許される。度重なる研究と実験は毎日深夜に まで及び、1985 年、ついに日本初のギフト法に よる男児が誕生。1990 年、セントマザー産婦人 科医院開院。日本受精着床学会副理事長。2009 年~2011年までJISARTの理事長に就任。スポ ーツやマッサージなどで、体のケアを日々怠らない という田中先生。「最近はアカ擦りにハマっていま す。疲れも取れるし、体も頭もすっきりするんですよ」。

PCOSとPCOの違い

先生は多嚢胞性卵巣症候群について、どうお考えですか?

田中先生 まず、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と多嚢胞性卵巣(PCO)は、まったく違うもので、そこを勘違いしている人は多いと思います。

PCOSは、内分泌異常をともなう疾患であり、脳下垂体から分泌される黄体ホルモン(LH)や卵胞刺激ホルモン(FSH)をはじめ、卵巣から出る卵胞ホルモンの歯車がかみ合わない状態。

一方、PCOは、超音波で見ると小さい細胞がたくさん見えて、排卵誘発剤を打つと一気に腫れ上がってしまうというものですが、こういう方のホルモンは正常です。

ただし、排卵誘発剤を打つと卵胞が過敏に反応し、副作用として卵巣過剰刺激症候群(OHSS)を引き起こしやすいという意味では、同じように注意が必要です。

PCOSの見極め方、治療

PCOSとPCOの見極め方は?

田中先生 PCOSの症状の一つは月経不順です。

二つ目に、超音波で見ると通常は数個しかない卵胞が 20個ほどあります。

そして、PCOSなのかPCOなのかを見極めるために最も重要となるのが、FSHとLHの値が逆転している、もしくは男性ホルモンが多いという、ホルモンの異常です。

この三つの症状があれば、ほぼPCOSと考えてよいでしょう。

また、PCOSは、糖尿病に合併しやすいという特徴もあります。

家族に糖尿病患者がいるかを把握し、本人にも検査をします。

仮に異常が見つからなくても、今はPCOSと判断した時点でメトホルミンⓇという糖尿病治療薬を投与するのが一般的です。

そのうえで、まず一番軽いクロミッドⓇを1錠から服用し始めます。

これで排卵し、ご主人の精子にも問題がなく、卵管も通っていればタイミング療法を行います。

1錠で排卵しなければ2錠。

それでも排卵しなければ、今は保険適用で自己注射が可能な、遺伝子組み換えによってつくられたリコンビナントFSHを作用します。

ケアの必要性

注意するべきことはありますか?

田中先生 PCOSの人はとにかく卵巣が腫れやすいので、注射は通常の半分以下の 75 単位を、1日おきから打ち始めます。

反応が悪い場合は毎日、もしくは150単位を1日おきに注射します。

一番大事なことは〝放っておかない〞ことです。

厳重なコントロールのもとでモニタリングをしっかりしてあげれば、OHSSも怖くありません。

逆に言えば、細かくケアをしてくれる病院でないといけないということですね。

しっかり卵巣の反応をみながら、1個、2個と少数の排卵を促します。

この方法でうまくいかなければ、腹腔鏡下で厚く硬くなっている卵胞の表面に穴を開けるドリリングを行います。

これはとても効果的で、ドリリングをした患者さんの6割が自然排卵し、残りの3割強の方が注射なしの飲み薬のみで排卵できます。

体外受精の適応は?

ほぼ100%の確率ですね。

田中先生 PCOSだと体外受精をすることが多いと思いますが、私は、PCOS=即体外受精という方針は違うと思います。

PCOSは、若い女性の排卵障害の原因で一番多い疾患です。

排卵しないというだけですから、きちんと排卵させてあげればいいのです。

どうしても体外受精が必要なケースは、卵管のピックアップ障害と、男性不妊の場合のみ。

そうでないなら、PCOSの方こそ自然妊娠に導いてあげたいですね。

※卵巣過剰刺激症候群(OHSS):排卵誘発法により多数の卵胞が発育・排卵することで、卵巣が腫れる、腹水や胸水がたまる、血液の電解質バランス異常、血液の濃縮などの症状をみせるもの。

※リコンビ ナントFSH:遺伝子組み換え(リコンビナント)技術によってつくられた卵胞刺激ホルモン(FSH)製剤。自己注射できるペン型がある。PCOSの治療、体外受精時の採卵の際に使われる。

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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。