卵巣機能低下?PCOS?卵胞が小さくならず治療が進みません。何か原因があるのでしょうか?【医師監修】

【医師監修】大野 元 先生  岐阜大学医学部卒業。岐阜大学医学部大学院修了。ブリ ティッシュ・コロンビア大学(カナダ)研究員、岐阜大学 助手、IVF大阪クリニックを経て、1999年 8月開業。専 門は周産期と不妊で、体外受精のエキスパート。O型・お うし座。淡いピンクを基調にした優しい雰囲気の院内では、 月1回、体外受精を考えている方のおしゃべり会や不妊カ ウンセリング(予約制、無料)などを開催している。
ナナハチさん(30歳)からの投稿 Q.3度目の体外受精をする予定です。もともと生理不順で、放っておくと3カ月 から半年、生理が来ないのは普通という状態です。前回は体外受精ではなく タイミング療法でクロミフェンを服用しましたが、中途半端に育った卵子が数 個となり排卵しませんでした。その後は、ルナベルⓇやソフィアⓇを服用して生 理にはなるのですが、2カ月たっても卵胞が小さくならず治療が進みません。 前に通っていた病院では多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と言われ、今の病院 ではホルモン異常でPCOSではないとも言われました。卵巣機能自体が低下 しているのでしょうか? それとも何か他に原因が?

ホルモン値から見る卵巣機能

ハチさんは、不妊の原因自体わからなくなっているようです。
大野先生 まず、ナナハチさんの血液検査のデータが知りたいと思いました。
少なくとも月経中の卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)、 エストラジオール(E2)の値がわかれば、卵巣機能が低下しているのか、それとも本当にPCOSなのかを判断することができると思います。
たとえば、月経中のエストラジオール値はどうだったのでしょうか。
上昇していないなら、卵胞が残っているのではなく、卵巣嚢腫の可能性も考えられると思います。

大量の排卵誘発で低下

まずは血液検査のデータを確認することが大切なんですね。
大野先生 そうですね。
多嚢胞性卵巣症候群についても2つのクリニックで違う診断結果が出ていますが、最初の診断がいつ頃のことだったのかということも含め、今現在の検査結果がハッキリしないと、卵巣機能の評価は難しいと思います。
また1〜2回目の体外受精では、どんな排卵誘発をして、何個の卵子が採れたのでしょう。
この時に大量の排卵誘発剤を使用していた場合、それが原因で卵巣機能の低下を起こす場合もあります。
それから、直前の周期にはどんな治療をしていたのでしょうか。
前周期の治療で残った小さめの卵胞がクロミフェンで急激に大きくなることもあります。

LUFはピル服用で・・・

ルナベルⓇやソフィアⓇなどの低用量ピルの服用については?
大野先生 ナナハチさんの主治医は、卵胞が小さくならない、つまり卵胞の増大を黄体化未破裂卵胞(LUF)と判断して、ピルでリセットを試みているのでしょう。
LUFとは、基礎体温で体温が上昇しているにもかかわらず、実際は卵胞が破裂せず、排卵しないでそのまま残ってしまう状態です。
LUFが起こる原因は、子宮内膜症クラミジア感染などによる卵巣周囲の癒着や不十分なLHサージが考えられますが、詳しいことはわかっていません。
LUFは不妊症でない人でも5〜10 %の頻度で発生し、自然に消滅することも多いのですが、ピルを服用することで消失の確率を上げることができるのは確かです。
今後、どうすればいいでしょう?
大野先生 いずれにしても、2カ月間も卵胞が残っているのであれば、採卵と同じように経腟式に穿刺、吸引して消滅させたほうが早くリセットできそうですね。
同時に、これまでの治療法や検査結果を改めて確認することで、月経不順の原因はある程度、見極められると思いますよ。
※ソフィアⓇ:黄体・卵胞ホルモン混合製剤。子宮内膜に対し、プロゲステロンとほぼ同様の分泌腺発育を促進し、受精卵の着床に都合のよい環境を 準備する
※エストラジオール(E2):卵胞ホルモン。
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