卵巣にエコーで白い濁りが。黄体化未破裂卵胞(LUF)なのでしょうか?【医師監修】

人工授精後に、エコーで検査をしたら白く映っていて心配。 きちんと排卵しているの? それとも黄体化未破裂卵胞? 幸の鳥レディスクリニックの ささ山先生に聞きました。

【医師監修】ささやま 高宏 先生 産業医科大学医学部医学科卒業。産業医科大学病院、和歌山労災病 院、九州労災病院、セントマザー産婦人科医院の勤務を経て、1997 年4月、不妊治療から分娩まで手掛ける、幸の鳥レディスクリニックを 開業。2009年12月から、より一人ひとりの患者と向き合えるよう、 生殖医療に専念する態勢を整える。A型・おひつじ座。地元FM局で〝ミッ ク"の愛称で知られ、ロックをこよなく愛する先生。またスポーツも 好きで、サッカーはサンフレッチェ広島、野球は広島カープのファン。 シーズン中は、新幹線定期が欲しいくらいなのだそう。

ドクターアドバイス

正常な場合でも 卵胞の未破裂はある。 排卵しているかどうか、 エコーで診断を

ぱんださん(34歳)からの投稿 Q.2回目の人工授精を行いました。本来なら、排卵すれば卵胞はきれいに破裂するそう ですが、私は完全になくならず、エコーに白く映ったようです。先生からは「白く映る ことは稀にある。体温が上昇しているので、排卵後」と診断されました。心配でインター ネットで調べてみると、黄体化未破裂卵胞なのでしょうか? 先生に直接聞けばよかっ たのですが、質問する余裕と勇気がなく……。

ぱんださん のデータ

★検査・治療歴 2年前より、不妊治療開始。卵管造影検査異常なし。 黄体ホルモンが低く、抗ミュラー管ホルモン(AMH)値:11で、 卵巣機能の低下が判明。 タイミング療法を3回したが妊娠に至らず、その後通院をやめる。 その年の12月に妊娠したが、稽留流産で掻 そう爬 は 手術を行う。 1年前より別病院で不妊治療を再開。 2回のヒューナーテストで陰性(精子が見当たらない)。 抗精子抗体は陰性。
★現在の治療方針  今年2回目の人工授精を行う。 排卵後にデュファストンⓇを処方。
★精子データ 精子数、運動率、運動性ともに異常なし。

黄体化未破裂卵胞って何?

まず、黄体化未破裂卵胞(LUF)とは、どんな状態なのでしょうか?ぱんださんの場合のように、エコーで白く映るのでしょうか。
ささ山先生 LUFは、なんらかの原因で卵胞が破裂せず、排卵ができない状態のことをいうんよ。
通常は、卵子が卵巣の中で育って十分に成熟すると、黄体形成ホルモンLH)の刺激で卵子を包んでいた卵胞が破裂して、卵子が飛び出す。
これが排卵ね。
通常、卵子を包んでいる卵胞はだんだん大きくなって、プスッと破裂して変形して小さくなったり、消えていくもの。
排卵の時に、血胞という血液のたまった袋のようなものができることもあります。
それは、エコーでは白っぽく見えますよ。
LUFの場合、排卵前と同じ丸いきれいな形で、内部は黒いままです。

エコーで排卵確認

では、ぱんださんの場合は排卵しているのでしょうか?
ささ山先生 医師が連続して経過を診ていけば、「排卵せずに卵胞が残っているもの」なのか「排卵した状態」なのか、判断できると思いますよ。
「人工授精で終わりました」ではなく、排卵しているかどうか、エコーで診てもらうのがいい。
卵胞は排卵しなくても、黄体化することによって、黄体ホルモンが分泌されて体温が上昇するから、体温が上昇したから排卵したと結論づけるのは難しいね。
子宮内膜も排卵した時のようにエコーで白く見えます。

LUFだったらどうするの?

もし、LUFだった場合、今後治療の継続はできますか?
ささ山先生 今回がLUFでもええんよ。
こういうことは不妊でない人でも時々起こるんですよ。
骨盤内感染や、子宮内膜症などによる卵巣周囲の癒着が原因の場合は、手術的に癒着はく離などを行います。
それでもLUFをくり返す時は、体外受精を選択するのが現状です。
彼女の場合も、LUFをくり返していないか確認して、LUFが散発的なら、現在の治療を継続するといいです。
くり返す場合は、体外受精を考えたほうがいいと思うよ。
ぱんださんは、遺残卵胞ではないかどうかも心配していますが。
ささ山先生 通常自然周期では、排卵する卵胞は1つで、それ以外の卵胞は閉鎖卵胞といって自然に縮小します。
うまく閉鎖せずに次の周期まで残ってしまうものを遺残卵胞といいます。
次の排卵に影響を及ぼすこともありますが、妊娠した時、その後の胎児の成長には影響ありませんよ。
彼女の場合は、遺残卵胞ではないと思います。

医師との信頼関係!

ぱんださんのように、先生に遠慮して聞けずに自分で調べる方も多いですよね。
ささ山先生 大切な治療だから、本やインターネットなどで不安や疑問を調べることは重要だと思います。
ぱんださんの場合、ぼくは、今回LUFではないと思いますよ。
本やインターネットに書いてあることを鵜呑みにして、一人で不安を募らせてしまっているように感じます。
「先生が忙しそうで、質問する勇気が出ない」なんて思わずに、きちんと医師に聞いてみることが大事じゃと思うよ。
※抗ミュラー管ホルモン(AMH):発育卵胞、前胞状卵胞から分泌されるホルモン。AMHの検査値から卵巣の予備能を知ることができる。ミュラー管抑制因子ともいう。
※デュファストンⓇ:合成黄体ホルモン製剤で、黄体機能不全などの治療に用いられる。子宮内膜に対し、プロゲステロンとほぼ同様の分泌腺発育を促進し、受精 卵の着床に都合のよい環境を準備する。
>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。本サイトの全ての記事は医師監修です。