患者さんの話をよく聞いて 治療方針を決めます。 自然機能を優先したうえでの 胚移植だと考えています
リスクも含めて伝える
まずは先生の体外受精に対する考えをお聞かせください。
絹谷先生 基本的には、なるべくリスクの少ない治療方針をとっているので、初期胚・新鮮胚で移植できる状態の場合はそちらを優先しています。
ただし、子宮内膜やホルモンの状態をみて、卵巣過剰刺激症候群などのおそれがある場合は凍結保存をすすめています。
とはいえ、最終的には患者さんのご意向を聞いて、新鮮胚なのか、凍結保存による移植なのか、リスクも含めてお話ししたうえで、患者さんに納得していただいてから治療を進めています。
凍結胚移植が全てではない
最近は凍結保存が圧倒的に多いと思うのですが、どうでしょう?
絹谷先生 当院でも、凍結保存での妊娠率は高いです。
ただ、どの患者さんにもその治療がよいとは限らないと考えています。
胚培養による多胎妊娠のおそれや凍結保存などにおける安全性において、私自身はまだまだ疑問があるからです。
胚盤胞培養がすべてとは考えていないですね。
ただ、凍結技術において日本はトップレベルだと思いますし、将来的にはきっとその疑問は解消されるだろうと思っています。
最初は、初期胚移植から
具体的にはどのような治療をされていますか?
絹谷先生 最近では患者さんのほうがよく勉強されているので、当初から胚盤胞培養を希望される方もいらっしゃいます。
その時は、あらためてリスクやデメリットなどをお話しして、患者さんの意見を踏まえたうえで治療内容を決めています。
ただ、なるべくシンプルな状態で妊娠できるようにしたいと考えているので、自然機能を頼ってもいい方には、まずは初期胚移植を行っていただくようにしています。
別のクリニックでいつも凍結融解した胚盤胞移植をしていて、妊娠できないと当院に来られた方が、偶然かもしれませんが新鮮胚移植で着床、妊娠されたというケースもあります。
また、年齢や子宮内膜の状態、お仕事が忙しくてあまり通院できない方になど、さまざまな状況に応じて対応していきたいと考えています。
子宮内膜と移植
では、移植するタイミングについてはどうお考えですか?
絹谷先生 基本的には内膜の厚さ 10㎜を目安に、子宮に戻しています。
しかし、過去に5〜6㎜で着床した例もあります。
それほど厚みがなくても1回目ならチャレンジします。
私は内膜が薄くても必ずしも機能が悪いとは限らないと考えています。
技術を要しないといけない方がいらっしゃることも承知していますが、自然機能を信じて総合的に、かつ個別に対応して治療を進めていきたいと思っています。
当院では、診察後に患者さんが「あれ?」と疑問を持たれた時は、看護師が積極的に声掛けをするように努めています。
そうすることで、よりよい治療を心掛け、信頼関係を築くことで満足度を高められると思います。