悪影響を及ぼす因子を除去することで着床率を向上【医師監修】

【医師監修】原 利夫 先生 1983 年、慶應義塾大学大学院医学研究科修了にて医学博士学位 を取得。同大産婦人科助手時代、日本初の凍結受精卵ベビー誕生 の一員として活躍。その後、東京歯科大学市川病院講師、千葉衛生 短大非常勤講師を経て、1993 年はらメディカルクリニックを開院。 着床率、妊娠率を上げるために、常に新しいことができないかと考え ている原先生。「結果が出ても出なくても、患者さんには“これです べてやり尽くした”という満足感を感じてほしいと思っています」

子宮内膜の安定、 着床に悪影響を及ぼす 因子を除去することで 着床率を向上させます

着床率の向上へ向けて

妊娠するためには受精卵が正常に子宮内膜に着床することが前提になると思いますが、着床率を上げるためにはどのような方法がありますか。

原先生 着床不全は卵子の加齢が最も多い原因になると思いますが、その部分は治療では操作できないので、それ以外の環境をなるべくよくしてあげることを考えています。

まず一つは、子宮内膜に対する着床率向上の工夫。

いくつか主な方法を挙げてみましょう。

①患者さんの状態に合わせ、自然周期あるいはホルモン補充周期で、内膜の環境がベストに整った時期を見計らって移植を行う。

②移植の前周期にカウフマン療法を行って子宮内膜の安定をはかる。

内膜を安定させる方法として他に、避妊リングを半年程度挿入する、内膜の一部を吸引して刺激する、ダナゾールなどの薬を2〜3カ月服用する、といったものもあります。

③内膜の血流を促す。

血流改善の薬としてはビタミンEが知られていますが、他に当院ではバイアグラを溶かして作った腟錠を使用することも。

腟内に挿入することで卵巣や子宮内の血の巡りがよくなって、内膜がうまくできやすくなり、副作用もないとされています。

レトロゾールの活用

さまざまな方法があるのですね。他に着床率を向上させるためにされている工夫はありますか?

原先生 卵子がなかなかできにくい、または多嚢胞性卵巣症候群ぎみの方には、着床はもちろん、卵子の質を向上させるために当院ではレトロゾール(アロマターゼ阻害剤)という薬を投与することもあります。

それはどのような薬ですか?

原先生 排卵誘発剤のクロミフェンの代わりに投与するのですが、実はこの薬は乳がんの治療薬なんです。

乳がんは女性ホルモンのエストロゲンで発育してしまうのですが、この薬にはエストロゲンを下げる効果があります。

エストロゲンの分泌が減ることで脳は「卵子をつくれ」と命令を出す。

その作用をうまく利用しているんですね。

卵の質を改善すれば当然、着床率や妊娠率も上がってくるということです。

自分自身で出来ること

治療以外で患者さん自身が努力できることはありますか。

原先生 着床に悪影響を及ぼす因子を除去するために、まずしていただきたいのが禁煙。

喫煙は血流を悪くし内膜の成長を妨げます。

効果が出るまで2〜3年かかるといわれていますから、タバコを吸っている方は、すぐにやめていただきたいです。

下半身の血流増加を促すために、他には半身浴や散歩、ストレッチ、ヨガなどもおすすめです。

花が咲かないから慌てて肥料をあげるのではなく、種を植えた段階からいい土壌に整えておく、つまり妊娠を望んだ時から健康な体づくりをしておくことが大切だと思います。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

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