顕微授精しか方法がない重度の乏精子症です。サプリは効果ありますか?【医師監修】

重度の男性不妊と診断されたらどうすればいいの? サプリメントは効果がある? 大野元先生に 乏精子症の場合の心構えや治療についてお聞きしました。

【医師監修】大野 元 先生 岐阜大学医学部卒業。岐阜大学医 学部大学院修了。ブリティッシュ・ コロンビア大学(カナダ)研究員、 岐阜大学助手、IVF大阪クリニック を経て、1999 年 8月開業。専門 は周産期と不妊で、体外受精のエ キスパート。O型・おうし座。最近 は車に乗らず、移動はもっぱら自転 車や歩きという先生。健康と体力 維持のため、空いた時間はできる だけ体を動かすようにしているとか。

ドクターアドバイス

運動精子がゼロではない現状に、希望を持って。 サプリは頼りすぎず、期待しすぎずが肝心

だんだんさん(会社員・27歳)からの投稿 Q.1カ月前に主人の重度男性不妊が発覚し、再検査をしました。 結果、数は200万/mL、運動率 20%です。奇形、白血球は問題 なしです。顕微授精以外に方法はないと言われ、正直、落ち込み ます。なにかサプリメントなどで効きめのあるものはありませんか? ヤ○ノのトン○ットアリ、リポ○タンDスーパー、ビタミンC・E は1カ月飲みましたが、結果には反映されませんでした。

自然に改善されることもある?

だんだんさんは、顕微授精という治療法しか残されていない検査結果に、大きなショックを受けているようです。
大野先生 2回検査しているのであれば、ご主人の男性不妊は間違いないでしょう。
つらいとは思いますが、まずは現状を受け入れることが重要です。
そして、運動精子が存在している、ゼロではないということは、今後、妊娠の可能性あり、と前向きにとらえましょう。
ただしまれに当院では、精子の数がゼロに近いような人でも、1年に1~2人は自然妊娠しています。
顕微授精で失敗して諦めたけれど、1年後に自然妊娠しました、という嬉しい報告も聞いたことがあります。
精子ができるには3カ月くらいかかるので、1年くらいの間に自然に改善されている場合があるのかもしれません。
そのあたりは本当に不思議で、わからない部分ですが、希望は捨てないことが大切です。

サプリで改善する?

サプリメントの効果にも期待を寄せられています。
大野先生 だんだんさんご夫婦がよいと思ったものを飲み続けることは、悪いことではないと思います。
しかし残念ながら、サプリメントに限らず、精子を増やすための確立された治療法はありません。
しかも、重度の乏精子症の場合、サプリメントや漢方などの治療は期待が薄いばかりか、結果が出ないと「どうして効かないの?」といった焦りを増長し、さらに落ち込んでいく悪循環を生みかねません。
私も、患者さん側からサプリメントや漢方の希望があれば処方しますが、あくまでも治療の併用薬としてとらえ、どんなサプリメントでも頼りすぎず、期待しすぎないことが大切だと思いますね。

顕微授精は有効?

この後は、やはり顕微授精に進むべきでしょうか?
大野先生 精子が少ない場合、少ないなりの対応が必要です。
当院では、数は4000万を正常値の区切りとしていて、1000万以下はやはり顕微授精をすすめています。
だんだんさんのご主人は正常数の 20 分の1ですよね。
やはり主治医の先生にすすめられたように顕微授精に進むべきでしょう。
また、精子の奇形や白血球に異常がなく、乏精子症だけが原因であれば、ここで精子が少ない原因を探るよりも、早めにステップアップすることをおすすめします。
だんだんさんが 27 歳ですから、他に原因がなければ数カ月以内に妊娠する可能性は高いと思いますよ。

精子の凍結保存

運動率の低さについては、なにか対応策はありますか?
大野先生 どちらかというと数のほうが問題ですが、運動精子も今後さらに減少する可能性があります。
もし、2人目、3人目も望んでいるなら、念のため、今とにかく採精しておいて、精子凍結保存することを考慮してもいいでしょうね。
凍結保存した精子は、融解してもほとんどダメージはなく、受精能力も新鮮精子とほぼ変わりません。
運動精子の数があるうちに、主治医に相談してみてはいかがでしょう。

日常生活で出来ること

日常生活でなにか気をつけることや、したほうがいいことなどアドバイスはありますか?
大野先生 煙草はやめることをすすめますが、あとは普段通りの生活をすればいいと思います。
よく精神的なストレスを重要視したりしますが、これもあまり気にしなくていいと思いますよ。
たとえば、現代よりももっと環境が悪く、サプリメントのない戦時中でも、子どもはたくさんいたりしたのですから、私はあまり気にしなくていいと思います。
それよりも、だんだんさんは働いていらっしゃるようですので、治療を続けていくうえでは無理なく通院できるクリニックを探すことも肝心だと思います。
たとえば、採卵のタイミングによっては休日でも対応してくれたり、ご主人も含めて医師と何でも相談できるなど、病院選びもストレスなく治療を続けるうえでは大切です。
妊娠できれば、ご主人も「自分の精子で授かった」と自信が持てて、夫婦関係もうまくいくようになると思います。
少しでも落ち込む期間を短くできるといいですね。
>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

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